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第1部 本

生物・進化

鳥は飛びながら眠る(渡辺佑基)

『鳥は飛びながら眠る-超小型センサーで覗く野生動物の私生活 (中公新書 2906)』2026/4/23
渡辺 佑基 (著)


(感想)
 生き物に超小型センサーやカメラを装着するバイオロギングという手法で、厳しい環境を生き抜いている野生動物の進化のメカニズムに迫っている本で、主な内容は次の通りです。
はじめに――バイオロギングが明かす野生動物の非凡な日常
第一章 サメは横に傾いて泳ぐ――怠ける
第二章 アザラシは一晩に4000回狩りをする――食べる
第三章 鳥は飛びながらまどろむ――眠る
第四章 閉経というミステリー――産む、育てる
第五章 ヒヒのあっぱれな民主政治――群れる
おわりに――生物進化という永遠の謎
   *
「第一章 サメは横に傾いて泳ぐ――怠ける」では、生き物たちが、いかに賢くエネルギーを節約しているのかに迫っています。
「(前略)諸々の野生動物が日々の生活の中で、あの手この手の方途を尽くし、エネルギーの節約に努めていることがわかってきた。
 大事なことに、エネルギーの節約に繋がる行動様式や体の構造・機能は、紛れもなく進化の産物である。(中略)ある世代の始めた些細なエネルギー節約の工夫は、自然選択の作用で世代を重ねるうちに強化され、遥か後の子孫において、あっと驚くような奇抜な省エネ術への変貌する可能性を秘める。」
 ……例えばヒラシュモクザメに取り付けたバイオロギング調査機器に記録された加速度情報を分析すると、彼らはなぜか、体を横に60度ほど倒して泳ぎ、時折左右反転していたのですが、その後の模型実験で、体を60度ほど傾けると、前進を妨げる抗力に対して体を上方に浮かせる揚力が最も大きくなったことが判明し、要するに彼らは、体の構造上、最も楽になる遊泳姿勢で泳いでいたのだとか……やっぱりサメも賢く怠けているんですね(笑)。
 そして個人的に最も興味津々だったのが、「第三章 鳥は飛びながらまどろむ――眠る」。最近のバイオロギング装置には、なんと「睡眠を記録する脳波センサー」もあるそうで、これを使うことで、いろいろな生物の不思議な生態が分かってきたようです。
 例えば、横並びで眠っているカモでは、列の両端のカモは、それぞれ外側の目を開けて外敵を警戒しながら内側の目を閉じて脳の半分を眠らせていたのですが、両側を仲間に囲まれた中ほどのカモは、安心して両目を閉じて脳の全体で眠っていた……なんてことが明らかになったそうです。
 こんな半球睡眠があるなんて驚きですが、グンカンドリの研究では、次のようにも書いてありました。
「(前略)グンカンドリは進行方向の目を開いて安全を確保しつつ、反対側の目を閉じて脳の半分を眠らせていたのだ。近くを飛ぶ他の鳥やそそり立つ崖に衝突する危険を避けながら、それでも空中で細切れの睡眠をとる。(中略)
 飛行中の断片的な睡眠時間を足し合わせると、一日あたり合計四〇分程に過ぎなかった。これで十分とは考えにくい。実際、鳥は海から帰って樹上に降り立つや否や、睡眠の借金を返済するように一日に十二時間以上も眠った。
 つまり飛行中の半球睡眠は、寝るに寝られぬ環境に置かれた鳥が、必要最低限の睡眠をぎりぎり確保するための緊急手段のようなものらしい。」
 ……半球睡眠は、本人(本鳥?)にとってあまり望ましい睡眠ではないようです。
 この半球睡眠はイルカやオットセイなども出来るようですが、半球睡眠ができない生物のアザラシの場合は、なんと「潜りながら眠る」技を身につけているようです。
「アザラシでは、脚ひれの動きを止めて体が沈下を始めるとノンレム睡眠が見られ、数分後にレム睡眠に切り替わって五分間程度続き、最後に少しだけノンレム睡眠に戻ってから覚醒する(そして海面に向かって泳ぎ始める)というパターンであった。(中略)
 なぜ、こんな珍妙な眠り方をするのか。アザラシはオットセイと違って半球睡眠の能力を欠き、海面でシャチやサメなどの外敵を警戒しながら眠ることができない。そこであえて海に潜り、外敵のいる危険な深度帯を通過した後、一層深く沈み込みながら眠る妙技を身に付けたのだと考えられる。」
 ……回遊中は何カ月間にもわたり、アザラシは一日平均二時間しか眠っていなかったのですが、回遊を終えて浜辺に上陸した後は、一日に十一時間もぐうぐう眠っていたのだとか! でもアザラシは一年のほとんどを回遊で過ごすそうなので、思う存分眠れることは贅沢なことなのかもしれませんね……安全な「家」の中でぐっすり眠れる人間に生まれて、本当に良かった……。
 それにしても進化の中で、「半球睡眠」まで編み出してしまう生物がいるほど、「睡眠」はとても大事なんですね。
「鳥や哺乳類だけでなく、爬虫類も、両生類も、魚も、昆虫も、線虫も、クラゲすらも眠る。体中に神経が張り巡らされた動物の中で、生涯にわたってまんじりともせぬ例は今まで報告がないし、これからも発見されることはおそらくない。
 ただし、カイメンのように神経ネットワークを欠く極めて原始的な動物は、その限りではない。」
 ……「脳」や「神経ネットワーク」にとって、「睡眠」は、やはり必要不可欠なものなのでしょう。
 そして驚きだったのが「孤立した池に魚がいるのはなぜ?」。
 その理由は、なんと「鳥の糞からの復活劇」。実は、生存率はわずかではあるものの、糞のなかの魚卵から、魚が生まれて成長することがあるそうです! 卵……凄いですね。
『鳥は飛びながら眠る-超小型センサーで覗く野生動物の私生活』……生き物に超小型センサーやカメラを装着するバイオロギングという手法で見えてきた、生き物たちの興味深い生存戦略をたくさん紹介してくれる本でした。面白いので、みなさんもぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『鳥は飛びながら眠る』