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第1部 本
社会
プラットフォームに正義を託せるか(小向太郎)
『プラットフォームに正義を託せるか 「コンテンツ・モデレーション」の最前線』2026/1/25
小向太郎 (著)

(感想)
SNS・動画プラットフォームを舞台にした「コンテンツ・モデレーション」(情報の監視・選別)。EU・アメリカ・日本という三つの地域でそれぞれ大きく異なる「コンテンツ・モデレーション」の考え方や制度の知られざる現状を、法規制や「言論の自由」に対する考え方の違いも含めて解説。さらに、これからの日本がとるべき法制度についても展望している本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 プラットフォームが言論を左右する
第2章 EUの選択──「自由」か「秩序」か
第3章 アメリカの選択──言論の自由は譲れない
第4章 模索する日本──自主規制は機能するのか
第5章 日本に必要な制度とは
第6章 規制は正義を実現できるか
おわりに
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「はじめに」によると「コンテンツ・モデレーション」とは、「プラットフォームが自社のサービス上のコンテンツに不適切な情報がないかどうかを自主的にチェックし、必要に応じて削除や制限を行うこと」を指します。」なのだとか。
そして「第1章 プラットフォームが言論を左右する」によると「プラットフォーム」とは……
「Google、Apple、Facebook(2021年に会社名を「Meta」と改称)、Amazon、Microsoftのような巨大IT企業(いわゆるGAFAM)は、典型的なプラットフォームです。(中略)
これらの企業に共通しているのは、先端的な情報技術の開発をその生命線として、インターネット上で事業者がビジネスを行ったり、人々が互いにコミュニケーションをとったりするときに、その基盤となるような場所を提供していることです。それぞれが得意とするサービスで圧倒的なシェアを持っていることも見逃せません。」
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これらのインターネット・プロバイダは、当初は電話会社のようなイメージで、通信の内容に関与しないかわりに、それによって起こる問題にも責任を問われないと考えられていたのですが、インターネットに好ましくない情報が増えてくると、放送(テレビやラジオ)には一定の内容規制があるのに、子どもも見られるインターネットに規制がないのはなぜかという疑問の声が増えてきました。そして……
「(前略)こうした事情もあり、情報発信の場を提供しているISPに対し、情報の削除や開示を求める声が強まっていきました。その一方で、情報を広く削除するようになると、言論が萎縮してネットがつまらないものになってしまうという問題もあります。」
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EU・アメリカ・日本は、コンテンツ・モデレーションに対して、それぞれ違った対応を行っているようです。まずEUについては……
・「EUでは、個人データを取り扱うことは原則として禁止されており、利用するには法律で定められた「適法化根拠」が必要です。ここでいう「適法化根拠」とは、「本人の同意」「契約の締結・履行のための必要性」「法的義務」「公共の利益・公的権限の行使」「適正な利益」のいずれかがあることをいいます。(中略)
プラットフォーム上に個人情報が掲載されている場合、そのプラットフォームが「データ管理者」と見なされるのが一般的です。つまり、情報を収集・整理し、処理方法を決めている主体として、利用停止や削除に応じる責任があるのです。」
・「選挙に関連する情報については、欧州委員会が2024年に特別なガイドラインを定めています。(中略)
まず、基本的な対応として、適切なリソースを投入してリスク緩和のための内部プロセスを強化することや、インシデント対応の強化が求められています。また、選挙特有のリスクとしては、公式情報の促進やおすすめ機能の適正化、政治広告の明示などの透明性向上のための施策に加え、外国からの情報操作や偽情報、サイバー攻撃などへの対策などが挙げられています。」
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これに対してアメリカは……
・「(前略)極端にいえば、アメリカでは、他人の名誉を棄損するような表現についても、表現の自由の一部として保障される側面があるのです。名誉棄損によって他人の権利を侵害した場合も、それを止めるのではなく、損害賠償として経済的に償えばよいというのが、アメリカ流の考え方です。」
……さらにアメリカの「通信品位法230条」では、インターネット上の媒介者が、媒介するコンテンツについては原則として責任を負わないことを定めていて……
・「(前略)この規定では、事業者が不適切なコンテンツの削除やアクセス制限、フィルタリング機能の提供などを行っても責任を問われないとしています。(中略)
通信品位法230条の目的は、自主的な規制を奨励しつつ、言論の自由を損なわずに健全なインターネットの発展を支えることにあります。これはおそらく多くの日本人が想像するよりはるかに強力な規定で、例えば、「プラットフォーム上に名誉を棄損する情報があるから削除してほしい」と裁判所に申し立てをしても、その訴えが認められることはほとんどありません。」
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そして日本は……
・「(前略)アメリカでは、虚偽の事実を公表したのでなければ、原則として名誉棄損にならず、真実性さえ証明できれば、公益目的などを主張する必要はありません。これに対し日本では、公表した事実が真実であっても、公的目的だと認められなければ名誉棄損になります。」
・「(前略)プラットフォームに対して投稿や検索結果の削除を求めた場合、その請求が認められるかどうかは、対象者や対象となる情報によって判断は異なり、明確な基準が示されているとはいい難い状況です。」
・「EUの制度が事業者に積極的な対応を求めていることや、アメリカの制度が基本的にプラットフォームには対応義務がないと考えていることに比べると、日本はよくいえば、状況に応じた判断がなされているともいえます。しかし、法的な削除義務の有無に関しては、判断があいまいなケースが多いのは明らかです。」
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そして第5章以降では、日本が今後とるべき対応などについてアドバイスもしてくれています。そのごく一部を紹介すると次のような感じ。
・「私たちにできる現実的な対応は、まずは公職選挙法の規制内容を明確化し、悪質な行為の取り締まりを強化することでしょう。」
・「(前略)青少年が悪影響を受けたり危険な目にあわないようにするための規制については、厳格な本人確認や年齢確認にこだわるよりも、実効的な規制のあり方を模索していくほうが現実的です。」
・「(前略)プラットフォームが強大すぎるからといって、その事業活動を制限したり企業を分割したりすれば、イノベーションを起こす力が失われてしまいます。(中略)
ビジネスの活力を損なうことなく望ましい規制を実現するには、デジタル・プラットフォームに期待されるさまざまな役割を考慮し、バランスのとれた制度を目指す必要があります。」
・「規制強化による副作用を考えると、悪質な行為に対しては、個々の加害者を現行法に基づいて処罰することで対応するのが現実的でしょう。」
・「プラットフォームの違法情報への対応については、まず、必要な対応について、ルールを明確化することが求められます。それには法律上、どのような情報に対して削除が求められるのかを、できるだけ具体的に示す必要があります。これによって、プラットフォームが説明責任を果たさなければならない内容も明確になり、透明性も確保できます。こうした取り組みはやがて、利用者がプラットフォームを安心して利用するための環境づくりにつながり、表現の自由やイノベーションを阻害するリスクも抑えられるはずです。」
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『プラットフォームに正義を託せるか「コンテンツ・モデレーション」の最前線』……「コンテンツ・モデレーション」には、政府による規制とイノベーション、企業の利益と公共性、言論の自由と社会的秩序など、複雑な価値の対立が存在していることを教えてくれる本で、とても参考になりました。
「現代の言論統制」ともいえる「コンテンツ・モデレーション」を、誰がどのようにコントロールするのかについては、どの国もまだ試行錯誤の状態だそうです。各国の制度の特徴とその背景を比較して、これからの日本にはどのような制度が必要なのかを、考えさせてもくれます。
プラットフォームを通じて届けられる情報は、今後ますます重要になってくるでしょう。誰がどのようなルールを定めるかによって、社会のあり方も大きく変わるかもしれません。未来の社会によりよく対応していくために、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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『プラットフォームに正義を託せるか』