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第1部 本

医学&薬学

細胞を間近で見たらすごかった(小倉加奈子)

『細胞を間近で見たらすごかった ――奇跡のようなからだの仕組み (ちくま新書 1886)』2025/11/8
小倉 加奈子 (著)


(感想)
 人体の中では何が起こっているのか? 病理医の小倉さんが、食べ物や空気やバイキンとともにからだの内側を巡って、私たちが「生きている」仕組みを支えている「すごすぎる細胞たち」をガイドしてくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに──食べもの・空気・バイキンとともに巡るからだ一周旅行
序章 からだツアーの旅じたく
コラム1: 細胞からはじまる医学部カリキュラム
第1章 ごっくんからうんちまで「ジェット 消化器ツアー」
オプショナルツアー1:自由に動ける「胸腔・腹腔フロアガイド」
第2章 吸って吐いて「風かおる 呼吸器ツアー」
オプショナルツアー2:自由に動かせる「骨格筋ワイルドツアー」
コラム2: 病気のことわりを知る学問「病理学」
第3章 溜まったら出す「水の都 泌尿器ツアー」
オプショナルツアー3:産毛の生える平原「皮膚ガイド」
コラム3: もうひとりの主治医「病理医」
第4章 ドライブしませんか?「からだ交通網、循環器ツアー」
オプショナルツアー4:ふたこぶの美しい丘「ときめき乳腺ガイド」
第5章 これぞサバイバルツアー「免疫サファリパーク」
オプショナルツアー5:これぞ秘境!「脳と脊髄、からだ遺産ツアー」
コラム4: かたちとストーリー、見立てと病理診断
オプショナルツアー6:精鋭部隊で構成される「内分泌株式会社ガイド」
第6章 どちらがお好き?「ハネムーン 生殖器ツアー」
オプショナルツアー7:骨の髄までわかる、からだ通のための「造血器ツアー」
コラム5: リベラルアーツとしての医学?
おわりに
主要参考文献
索引
   *
『細胞を間近で見たらすごかった』というタイトルだったので、技術革新が進んでいる最新の顕微鏡を利用して、今まで見えなかったほどの解像度で細胞を間近で見た……という内容なのかと勘違いしてしまったのですが、体内の細胞を間近で見る「仮想の体内ツアー」をさせてくれる本でした。細胞の写真はありませんでしたが、小倉さんが自ら描いてくれた細胞のイラストがあり、細胞の構造を、分かりやすく詳しく見ることができます。
 さて「序章 からだツアーの旅じたく」には次のように書いてありました。
「(前略)ふだん、細胞の生死のリズムは一定に調整され、つねに細胞の数が保たれるようになっています。自分の身体が昨日と今日とでほとんど変化していないように思えても、1カ月前と今この本を読んでいるみなさんの身体では、ほとんどの細胞が入れ替わっているのです!」
 ……えっ、たった一カ月でそんなことが!
 そして本書のところどころにあるコラムでも、医学や細胞に関する豆知識を学べます。例えば「コラム1: 細胞からはじまる医学部カリキュラム」の一部を紹介すると……
「解剖学と組織学の違いは、視点の違い、身体の分け方の違いにあります。両者の科目は重なっている部分も多いのですが、解剖学は肉眼からアプローチし、組織学は顕微鏡のミクロの世界から人体の仕組みに迫ります。解剖学は「器官」や「臓器」単位で、組織学は「組織」の単位で、身体の構造を学びます。
 一方、生理学と生化学は、細胞の機能にフォーカスした学問分野で、生理学は人体物理を含む身体のメカニカルな仕組みをみていき、生化学は生“化学”ですから、身体の中の分子の流れを化学的に分析することを得意とする分野です。」
 ……医学部では、細胞をいろんな側面から学んでいるんですね。
 そして本書のメインは、体内ツアー。最初のツアーは「消化器ツアー」。ごっくんと口にのみ込まれて体内に入っていきます。例えば「肝臓」周辺では……
「胆汁は、肝臓でつくられ、胆嚢で濃縮されて胆管を通りVater乳頭から十二指腸へと分泌されます。(中略)
 胆汁の主成分は胆汁酸で、これは、石鹸のような界面活性作用を持っています。この作用によって食べ物の中の脂肪の粒子の表面張力が低下し、粒子がばらばらとなります。これを「乳化」といいますが、この作用によって脾臓から分泌される消化酵素のリパーゼが作用しやすくなるのです。また、胆汁酸はコレステロールや脂肪分解によって生じた脂肪酸、モノグリセリド、リン脂質とともにミセル(疎水性のコアと親水性の殻でできた粒子)を形成し、これを小腸粘膜表面に運びます。脂質が小腸に吸収される時に、胆汁酸はミセルから外れ、別の粘膜で吸収され、再利用されます。」
 そして「肝細胞の役割の一部」は……
1)三大栄養素である糖質、脂質、タンパク質のすべての代謝に関係
2)胆汁の産生と分泌
3)摂取した薬の代謝、解毒
4)ビタミンや鉄を貯蔵する
   *
 さらに「肝臓の機能の一部」は……
1)循環血液量の調節
2)血液の浄化
3)胎児の時代の造血機能
 ……肝臓はいろんな機能を果たしているんですね!
 そして「第2章 吸って吐いて「風かおる 呼吸器ツアー」」では、気管支の細胞について……
「気管支の粘膜を間近で観察すると、ふさふさとした細かな毛がいっぱい生えた細胞がたくさんひしめき合っています。この細胞たちは「多列繊毛上皮」とよばれています。(中略)この繊毛、単にそよいでいるわけではなく、速い速度で咽頭の方に向かって波打ち、口から侵入してきた細菌やウイルスの混じった異物を粘液とともに外へ排出する機能があります。感染予防の最前線として活躍しているのがこの多列繊毛上皮なのです。」
   *
 また肺胞については……
「いよいよ、肺胞のひとつに入っていきましょう。肺胞は、伸縮自在のごく薄製法で作られた壁に囲まれた小さな空間です。ほら! 薄い壁越しに網目状に張り巡らされた毛細血管がみえます。メロンの表面の網目模様やみかんを入れるオレンジ色の網状の袋みたいですよね。」
 ……こんな感じで、体内の臓器や細胞について詳しく解説してくれるのです。
 そして「第5章 これぞサバイバルツアー「免疫サファリパーク」」は、白血球などの免疫細胞をめぐるツアー。まさに人気漫画の『はたらく細胞』と同じような世界が、本物の細胞のイラストとともに展開していくのです。『はたらく細胞』も面白いけど、本物の細胞の形は、こんなだったんだーと興味津々でした(笑)。
『細胞を間近で見たらすごかった ――奇跡のようなからだの仕組み』……仮想の体内ツアーを通して、人体(とその細胞)について楽しく学ぶことができる本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
 なお「おわりに」には、本書の種本ともいうべき本として『カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 改訂第5版』も紹介されていたので、もっと詳しく知りたい方は、こちらも読んでみると良いと思います(以下の商品リンクで紹介しています)。
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『細胞を間近で見たらすごかった』

『カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 改訂第5版』