ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

工作(紙以外)

土木遺産、終わりとはじまり(千葉学)

『土木遺産、終わりとはじまり 再生デザイン・コレクション』2026/3/24
千葉 学 (編集, 著), 長坂 大 (編集, 著)


(感想)
 日本全国津々浦々で、高度成長期に数多く構築された土木構築物の多くが、寿命を迎えたり役割を終えたり、あるいは近い将来に意味を失うなどの運命を迎えつつあります。この本は、東京大学、京都工芸繊維大学で行われた設計スタジオの成果を紹介しながら、取り残された土木構築物を未来に向けて、どう再生するかについてのアイデアを紹介してくれます。
「土木遺産」には、老朽化したものだけでなく、技術の進化進展に伴って役割を終えたものや、社会情勢の存続とともに存続が困難になったものなどもあるそうです。(例:給水塔や地方空港の古い滑走路など)。そして……
「(前略)土木インフラは、それが機能しているかぎり、人々の生活のなかで背景化しているのだ。
 しかしそれが一旦役割を終えたり、寿命を迎えたりして使われなくなると、その異様なスケールや形態ゆえに突如として都市のなかで、自然のなかで、異物として前景化してくる。この圧倒的な合理性が宙ぶらりんになって、私たちにその存在の意味を問いかけてくるのだ。」
 ……確かに、その通りですね。

 本書の後半では、「再生デザイン・コレクション17」として、次の17カ所の土木遺産の再生のアイデアが紹介されていました。
01 格子状防風林
  酪林緑帯
02 旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群
  時の顕れを待つ轍
03 丸沼ダム
  journey to the end
04 佐久発電所サージタンク
  土木婚
05 野方配水塔
  防災×幼稚園
06 ガスホルダー
  世田谷ガス子ども図書館
07 リニア中央新幹線非常口
  LINEAR CATACOMBE
08 西銀座駐車場
  GINZA倉庫
09 旧神宮前駅
  旧神宮前駅劇場化計画
10 東急東横線廃線高架
  HORIZONSCRAPER
11 市道弥富相生山線
  AIOIYAMA project
12 旧九条山浄水場
  KujoyamaArt Site
13 西宮西部工場人工島
  外来種の動物園
14 旧北山浄水場
  テルメキタヤマ
15 姫路モノレール高架橋跡
  継承する姫路市役所
16 姫路モノレール高架橋跡
  列柱植物園
17 伊江島旧滑走路
  Salt-strip
   *
 どれもなかなか素敵なアイデアでしたが、特に「良いね!」と感じたのは、次の3つ(ここで紹介しているのはそのごく一部で、本書にはもっと詳しい解説があります)。
08 西銀座駐車場:GINZA倉庫(物流の裏側を支える地下空間)
「最終的に駐車スペースが余剰になることを想定し、市場と物流ハブへ転用することを提案する。一般駐車場が余剰である一方、荷捌き機能が不足し路上駐車が問題化する地区において、地下を銀座の「裏側」を支える基盤へ再構成する。」
   *
14 旧北山浄水場:テルメキタヤマ(自然と人間の関係を結ぶ温浴施設)
「(前略)この敷地のある場所は六甲山系と住宅地の結節点の一つで、家族連れやハイカーたちはここに車を停めて山に出かける。ハイキング拠点の浴場として整備すれば、かつての水槽はヒトを癒す浴槽になり、下山した人々は汗を流してから街へ帰ることができる。」
   *
17 伊江島旧滑走路:Salt-strip(勾配を用いた塩田)
「(前略)その長く分厚いコンクリートの構造体には、離陸のため、そして水捌けのために微かな勾配がついているが、それが塩田の水勾配に最適だとの発見がこの提案を牽引した。現役の滑走路に隣接し、物流・交通の観点で大変恵まれた立地であることも、新たな産業拠点としての可能性を後押ししている。」
   *
 この3つは、その場所ならではの特性をうまく生かしたアイデアで、本当にその周辺の人々に活用してもらえる場所として再生できそうな気がします。
 他にも、巻末に「土木遺産コレクション60」があり、日本各地の土木遺産が60か所紹介されていました。
『土木遺産、終わりとはじまり 再生デザイン・コレクション』……土木遺産を通して土木が抱える課題を再考し、人々の生活の中で新たな「はじまり」をもたらすための新しい視点を教えてくれる本で、とても参考になりました。
 ここで紹介した以外にも、「森であることをやめないで数百台の駐車場を作った事例」のクロアチアのプリトビッツェ湖群国立公園の駐車場(最低限度の木を切り、地面は控えめに舗装。それ以外の親切な設備はほとんどない)など、興味深い事例を、写真とともに、たくさん見ることが出来ます。興味がある方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。
   *   *   *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)


『土木遺産、終わりとはじまり』