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第1部 本

音楽

歴史と学ぶ 教養としてのオペラ(島田優理子)

『歴史と学ぶ 教養としてのオペラ』2024/9/19
島田 優理子 (著)


(感想)
 あらすじと史実の解説で、オペラが「わかる・楽しめる」ようになる入門書で、主な内容は次の通りです。
第Ⅰ部 オペラの基礎知識
オペラとは?/オペラの楽しみ方/鑑賞にあたって/オペラ用語集/オペラの歴史
第Ⅱ部 教養としてのオペラ20選
1.モーツァルト『フィガロの結婚』(1786年初演)
2.モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』(1787年初演)
3.モーツァルト『魔笛』(1791年初演)
4.ロッシーニ『セビリアの理髪師』(1816年初演)
5.ロッシーニ『ウィリアム・テル』(1829年初演)
6.ベッリーニ『清教徒』(1835年初演)
7.ドニゼッティ『連隊の娘』(1840年初演)
8.ヴェルディ『リゴレット』(1851年初演)
9.ヴェルディ『椿姫』(1853年初演)
10.ヴェルディ『ドン・カルロ』(1867年初演)
11.ワーグナー『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(1868年初演)
12.ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』(1874年初演)
13.ビゼー『カルメン』(1875年初演)
14.マスネ『マノン』(1884年初演)
15.ボロディン『イーゴリ公』(1890年初演)
16.プッチーニ『トスカ』(1900年初演)
17.プッチーニ『蝶々夫人』(1904年初演)
18.R・シュトラウス『サロメ』(1905年初演)
19.プッチーニ『ジャンニ・スキッキ』(1918年初演)
20.プッチーニ『トゥーランドット』(1926年初演)
   *
 第Ⅰ部ではオペラで使われる用語や鑑賞の仕方などの基礎知識を、第Ⅱ部では有名なオペラ20作品のあらすじや見どころ・聴きどころなどとともに、作品にまつわる実際の歴史(おもにヨーロッパ史)も解説してくれます。
 例えば「第Ⅰ部 オペラの基礎知識」では、オペラで歌われる歌の種類として、次のような解説がありました。
1)アリア:器楽伴奏による独唱。感情が大きく動く場面で歌い上げられます。
2)カヴァティーナ:オペラにおいては、アリアより単純な形式の独唱を指します。
3)レチタティーヴォ:劇の展開の説明や、対話のシーンで語るように歌われる部分です。
4)アンサンブル:2人以上の重唱。ヒロインと相手役による愛の二重唱や、多くの登場人物が同時に思いをぶつけあう重唱など、それぞれに見応えがあります。
   *
 またオペラの歴史の始まりは……
「「オペラ」とされる作品が生まれたのは、16世紀末のイタリア・フィレンツェです。
 当時の知識人たちの間で古代のギリシア悲劇を復活させる動きがあり、貴族のサロンで音楽劇が作られたことが始まりだと考えられています。現存する最古のオペラは、1600年のマリア・ディ・メディチとフランス王アンリ4世の結婚式で上演された、ペーリ作曲の『エウリディーチェ』です。(中略)
 この時代のオペラは主に王侯の邸内で上演され、鑑賞できるのは招待客のみでした。しかし、共和制が敷かれていたイタリア北東部のヴェネツィアでは、1637年に公衆劇場が造られます。一般市民が入場料を払ってオペラを鑑賞できるようになったことで、オペラの人気はさらに広まっていきました。」
 ……そしてこの後は、グルックのオペラ改革、大衆向けの喜劇(オペラ・ブッファ)の発展、さらに「グランド・オペラ」、ドニゼッティとベッリーニ、楽劇王ワーグナー、オペラ王ヴェルディ、プッチーニ、さらに20世紀からのオペラの多様化(アメリカのミュージカルなど)が解説されていました。
 第Ⅰ部でオペラの基礎知識の概要を学んだところで、第Ⅱ部からは、日本でもよく上演される有名オペラの解説が始まります。
例えば最初の作品は、モーツァルトの『フィガロの結婚』。伯爵の浮気を懲らしめるドタバタ恋愛模様を描いたもので、原作は、ボーマルシェの戯曲『狂乱の一日 またはフィガロの結婚』、台本は、ロレンツォ・ダ・ポンテ、そして歴史ポイントとしては、フランス革命前夜に作られたオペラだということが概要紹介されていました。
 さらにこのオペラにまつわる歴史の一部を紹介すると……
「オペラの原作であるボーマルシェの戯曲は、1784年にパリで初演されました。当時のフランスは、17世紀末から断続的に繰り返されてきたイギリスとの戦争によって軍事支出がかさみ、経済危機に直面していました。1775年からのアメリカ独立戦争への参戦で、財政難は決定的なものになります。さらに、この戦争に勝利したアメリカがイギリスから独立したことに触発され、フランスの民衆の間にも自由と平等を求める思想が広まっていきます。
 そのような時期に、戯曲が上演にこぎつけるのは容易なことではありませんでした。「平民が貴族をやりこめる」という内容を国王ルイ16世が危険視したからです。」
 ……こんな感じで、オペラにまつわる歴史的な経緯も学ぶことができます。
 またCDやDVDの紹介もあるので、このオペラを見たいと思ったときの参考にもなります。
 続いてモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』。スペインの伝説の色男の末路を描いたものですが、こては『フィガロの結婚』のヒットを受けて、モーツアルトがダ・ポンテと再びコンビを組んで作ったものだそうです。
 さらにロッシーニの『セビリアの理髪師』は、なんとモーツアルトの『フィガロの結婚』前日譚! 『フィガロの結婚』では、伯爵にないがしろにされた伯爵夫人でしたが、ここでは若き伯爵からの熱烈なプロポーズを受けています(笑)。
 こんな素敵なオペラを作曲したロッシーニですが、この「オペラにまつわる歴史」によると、なんと彼は大人気オペラ作曲家から美食家へと転身したそうです。実は、フランス革命の影響で宮廷の料理人が失業し、市街にレストランを開いたことで、グルメが庶民にも広まったようで、ロッシーニは数多くのレシピを考案し、晩年にはパリで自らレストランも経営したのだとか……多才な人だったんですね……。
 そして驚いたのが、魔性の女カルメンをめぐる愛憎劇を描いた『カルメン』を作曲したビゼーは、なんと『カルメン』を発表のわずか3カ月後、36歳の若さで心臓発作のため没したということ。
『カルメン』の「第4幕 セビリアの闘牛場」では、カルメンの恋人が牛を追い詰めている闘牛場から沸き上がる歓声が響きわたる広場で、自分があげた指輪をカルメンに投げ返されて絶望したホセが彼女を刺殺してしまうという、音楽の力をまざまざと感じさせてくれる圧倒的なエンディングが紹介されていました。ビゼーが長生きしたら、この後、どんな作品が生まれたのでしょうか……とても残念です……。
 さて、この本を読むまでは、オーケストラと劇団だけでなく大がかりな舞台装置まで必要になるオペラは、まさに圧倒的な総合芸術で、現在でもチケット代がとても高価なことから、「貴族の愉しみ」だったのだろうと思っていましたが、歴史的に見ると、オペラが広く発展していった時代は、むしろ王侯貴族が没落し始め、市民層が力をつけ始めていった時代だったようです……とても意外でした。
『歴史と学ぶ 教養としてのオペラ』……まさにタイトル通り、教養として知っておきたいオペラの知識と魅力が詰まった本でした。作品ごとに分かれているので、隙間時間に読みたい作品だけをパラパラ読むことも出来ます。面白くて勉強にもなる本なので、音楽が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆

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『歴史と学ぶ 教養としてのオペラ』