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第1部 本

歴史

世界を変えた医療器具の歴史(クーパー)

『世界を変えた医療器具の歴史: 頭蓋骨穿孔、聴診器から人工心肺まで』2026/1/21
キャロル・クーパー (著), 野口 正雄 (翻訳)


(感想)
 古代から現代にいたるまで、医学の歴史を大きく転換させた画期的な医療器具の数々。聴診器やX線装置など、誰もが知る発明の背景にある、開発者の情熱や倫理的な葛藤などを通して、医療技術の進歩を紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 冠状のこぎり 頭に開いた孔
第2章 骨鋸 最先端の手術
第3章 マスクと個人的防護策
第4章 顕微鏡と細菌の隠された世界
第5章 聴診器 患者の体の音を聴く
第6章 エーテル吸入器と痛みの克服
第7章 皮下針と注射器 治療の最前線で
第8章 産科鉗子 出産のための近代的方法
第9章 X線装置 体を透明化する
第10章 ECT装置と精神疾患に対する衝撃的アプローチ
第11章 人工股関節 整形外科学の勝利
第12章 人工心肺 いかにして不可能は可能になったか
 年表
 謝辞
 画像出典
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「第1章 冠状のこぎり 頭に開いた孔」では、次のような驚きの歴史を知りました。
「穿頭術――穿孔術とも開頭術とも言う――の歴史は中石器時代まで遡る。人類は有史以前、つまり金属製の道具を用いる以前から頭蓋骨に孔を開けていたのだ。考古学上の証拠は紀元前1万年以上前まで遡り、穿頭術は人類最古の外科手術とされることもあるが、割礼や手足の切断はさらに時代を遡ることから、これらの方が古い。それでも穿孔術は人間に対して行われた最初の脳神経外科手術だったと言って間違いはないだろう。
 この手術は驚くほど広く行われていた。穿孔された痕のある頭蓋骨は中央アメリカ、南アメリカ、アフリカ、アジア、ヨーロッパで見つかっている。」
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 ……そんなにも古代から世界各地で行われていたんですね! そして現在では……
「脳神経外科は紀元前1万年前の穿孔術以来、長い道のりをたどってきた。今日ではこの分野は顕微鏡、内視鏡、CT・MRIスキャン、血管内手技(頸動脈内膜切除術など)、レーザー機器、ロボット工学を利用するものとなっている。」
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 医療(?)に通じるものは、これ以外にも驚くほど古い時代からあるようで、ボルネオ島で発見された紀元前3万1000年ごろの子どもの骨格は、その下腿が切断されていた(しかも切断後も数年は生きていた)そうです。
 また防御用の顔当て(マスク)の歴史も、約2000年前の時代までさかのぼれるのですが、それは、鉱物を砕く際の有害な粉塵を吸い込まないようにするために使われていたのだとか。
 さらに……
「局部麻酔の手法は18世紀末期まで遡るとされることが多い。しかし、手足を麻痺させる器具を描いた絵が古代エジプトのサッカラの墓地の中で見つかっており、これは少なくとも4000年前のものだ。1000年ごろには、アングロサクソンの修道士が簡単な外科的処置に先立ち、体の一部の感覚をなくすために冷水や氷をあてがっている。」
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 さて、医師の象徴ともいえる聴診器の誕生には、面白いエピソードがありました。1816年、若い医師ラエネックさんは、心疾患の疑いのある患者さんを診察していましたが、その若い女性の胸の大きな胸に耳を当てるのに気が進まなかったので、丸めて筒状にしたノートを患者の胸に当てて聞くことにしたら、意外にもより明瞭に音が聞こえたそうです。その後、彼は改良を続け、木製の聴診器を作って『間接聴診法』という論文を発表したことで、多くの医師たちが使うようになったのだとか。
 聴診器は安全な医療器具ですが、医療器具の中にはかなり危険なものが多くて、中でも「第10章 ECT装置と精神疾患に対する衝撃的アプローチ」では、現在では使われなくなっている電気ショック装置や、ロボトミーなど、非人道的とも思われる治療が紹介されていて衝撃的でした……。
 そして最後の「第12章 人工心肺 いかにして不可能は可能になったか」では、瀕死の患者さんへの心臓手術の失敗で多くの患者さんが亡くなってしまいましたが、それでも不屈の意思で改良を続けた医療関係者の努力の結果、心臓バイパスなどの心臓手術の技術や器具が向上してきた歴史を知ることが出来ました。心臓手術には、器具の改良だけでなく、低体温療法の研究(体温を約30℃にすると血液循環を10分間止められることが見出された)なども必要で、医療技術には、多くの専門家・技術者の知恵が注ぎ込まれていたことを痛感させられました。
 ただ……現在も使われているような医療技術の歴史は意外に浅く、かつての手術や医療行為は、しない方が良かったのかも……と思ってしまうほど危険で野蛮なものも多数あったことも知ってしまいましたが……。
『世界を変えた医療器具の歴史: 頭蓋骨穿孔、聴診器から人工心肺まで』……人類を救った12の「道具」が語る、驚愕と感動の歴史とエピソードを通して、医療器具や技術の進展を辿ることが出来る本で、興味津々でした(かなり怖いエピソードもありましたが……)。医療に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『世界を変えた医療器具の歴史』