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セルロースの百科事典(セルロース学会)
『セルロースの百科事典』2026/6/4
セルロース学会 (編集), 近藤 哲男 (編集), 五十嵐 圭日子 (編集), 磯貝 明 (編集), 小野 博文 (編集)
(感想)
専門家103名により食物繊維「セルロース」の研究・技術・利用を集大成した『セルロースの百科事典』で、セルロース学会30周年記念企画。主な内容は、次の通りです。
第I編 セルロースを知る(セルロースとは/発見と歴史/資源の起源/利用形態)
第II編 セルロースを作る/変える(生合成から繊維形成まで/溶解と化学反応/生分解から生物変換まで/セルラーゼの利用)
第III編 セルロースを調べる(手法/構造/物性/セルロース分子の集合・集合化と機能/計算科学・データサイエンス)
第IV編 セルロースを使う(原料/加工製品/繊維の加工および改質技術/誘導体/機能性セルロース材料)
第V編 セルロースを展開する(セルロース産業の次世代への展望/セルロースナノファイバー/衣料・住・紙分野/食品・医療分野/先端科学と機能展開/極限環境への展開/環境保全分野への展開)
索引
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「第I編 セルロースを知る」には、次のように書いてありました。
・「植物の3主成分は、多糖のセルロースとヘミセルロース、そしてベンゼン環を有する疎水性のリグニンであり、いずれも大気中のCO2と水から生合成される。そのうちセルロースは植物主成分重量の約50%を占めるので、最大年間増加量の天然高分子である。(中略)
木材中のセルロース含有量が約50%であるのに対し、綿のセルロース含有量は80%以上であり、木材よりも軽微な単離-精製処理で高純度のセルロース繊維が得られる。」
・「(前略)人類は古代より木材、繊維、紙としてこれを利用してきたが、その応用範囲は現在ではフィルム、ナノ材料、複合材料へと広がり、依然として重要な産業基盤を成している。」
・「セルロースは単なる自然素材ではなく、β結合による分子構造の規則性、分子内外の水素結合ネットワーク、結晶多形、自己組織化的階層性、異方的な水・光応答といった多面的な物質特性を併せ持つ天然高分子である。」
・「(前略)今日、セルロースは従来の紙・繊維用途にとどまらず、セルロースナノファイバーとしても注目され、プラスチック代替材料、医療用素材、エレクトロニクス分野などでの応用が期待されている。」
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驚いたことに、なんと「ホヤ」はセルロースを合成できるそうです。
「ホヤは、動物であるにもかかわらずセルロースを合成する珍しい海産動物である。セルロースはホヤの体を覆っている被嚢という膜に存在している。(中略)
2000年代に入り、ホヤの全ゲノムが解析されるとホヤゲノム中に細菌のセルロース合成酵素と類似した遺伝子が発見され、それがホヤのセルロース合成に関与することが明らかにされた。(中略)したがって、ホヤの祖先のゲノムに細菌のセルロース合成酵素遺伝子が飛び込んで機能するようになった(水平転移した)とする説が提案され現在も支持されている。」
そしてセルロースを合成できる細菌もいるようです。
「(前略)今日までに種々の細菌類によって、セルロースが合成されることが報告されている。このゲルに含まれる多糖類は、ほぼセルロースであり、植物などと異なり、他の成分とのコンポジットでない点や、生産される繊維の径の細さからくる様々な特性が、産業利用上のメリットとして注目されている。」
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さて、セルロースというと「紙」や「衣料」が思い浮かびますが、現在、セルロースの用途はどんどん広がっているようです。
例えば「食品」としては、なんと「ナタ・デ・ココ」がセルロースなのだとか!
「酢酸菌から得られるセルロースは、ナタ・デ・ココ(nata de coco)と呼ばれ、1992~1994年にかけて、デザートとして日本で大ブームとなった。バイオセルロースナノファイバーともいわれるこの繊維は三次元的に絡み合い、見た目は寒天のようなゲルを形成した構造をしている。」
……そうだったんだ。ちなみにナタ・デ・ココは、「ココナッツ水に酢酸菌を含むいくつかの微生物を入れて培養することによって作られる」ようです。
そして「未来感」があったのが、「セルロースナノファイバー(Cellulose Nanofiber,CNF)」。
「2000年代初頭頃より、セルロース由来の新たな材料として、セルロースナノファイバー(Cellulose Nanofiber,CNF)が注目されている。」
……CNFは、透明でありながらフレキシブルで折り曲げられ、熱に対する寸法安定性が高いなどの特徴から、電子デバイス材料の基盤としても検討されているそうです。
え? セルロースが透明? ちょっと意外に感じましたが、……
「紙を構成するパルプ繊維は、元来無色であるセルロースを主成分とするため、可視光領域の光を吸収する性質がほとんどない。多くの紙が白色に見えるのは、パルプ繊維の集合体である紙に空隙があり、光を反射・散乱させるからである。このため、パルプ繊維の間の空隙を減らしたり、表面を平らにしたりすることで紙は透明になっていく。本項で取り扱う、セルロースナノファイバー(CNF)のフィルムが透明性を発現するのはこのようなメカニズムによるものである。」
……セルロースは本来無色なんですか。そして……
「セルロースナノファイバー(CNF)は、セルロースの特徴である軽量・高強度、熱寸法安定性、生分解性を有し、ナノファイバーの特徴である高アスペクト比、酸素バリア性、特徴的なレオロジーの両方の特徴を有している。」
……CNFは「透明断熱材」として、住環境やモビリティにおける最大の熱エネルギー損失部となる窓にも適用できるそうです。
またこの他にも驚きの使用法があって……
・「CNFを用いた植物葉面保護とは、植物の葉や茎、枝表面に植物由来の微細繊維を散布し膜を形成することにより、葉表面を物理的に保護し、糸状菌・細菌の植物内部への侵入を防ぐ方法である。葉表面へ散布するのはセルロースと水のみである。」
・「紙の表層にCNFを塗工し、細密な薄膜層を形成することにより、ボールペンで書いた文字を所定の時間内は消しゴムで消すことが可能なインキ消去機能を発現できる。」
・「セルロースナノファイバー(CNF)から作られる緻密な紙(ナノペーパー)は、優れた平滑性と光透過性(可視光領域における全光線透過率約90%)を有する。そのため、プラスチックに変わる透明フレキシブル基板として期待できる。」
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『セルロースの百科事典』……地球上で最も豊富に存在する生物由来のポリマー「セルロース」について総合的に解説してくれる本で、とても勉強になりました。私たちにとって、とても身近なセルロースは、驚くほどいろんな機能や用途があったんですね! 興味津々な記事が満載です。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『セルロースの百科事典』