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第1部 本
科学
とんでもないサバイバルの科学(キャシディー)
『とんでもないサバイバルの科学:恐竜絶滅から、ポンペイ、黒死病、タイタニックまで、史上最悪レベルの大事件をどう生きのびる?』2025/8/27
コーディー・キャシディー (著), 梶山 あゆみ (翻訳)

(感想)
恐竜を絶滅させた小惑星が落ちてきたら? ポンペイにいるときに火山が噴火したら? 黒死病が流行するロンドンにいたら? あのタイタニック号の乗客だったら?……恐竜時代から20世紀まで歴史上の大事件を完全シミュレーションし、最新科学で「大ピンチ」を脱出する方法を教えてくれるユーモア満載のガイドブックで、主な内容(大事件)は次の通りです。
はじめに
1 恐竜時代をどう生きのびる?
2 チクシュルーブ小惑星の落下をどう生きのびる?
3 氷河時代をどう生きのびる?
4 古代エジプトのピラミッド建造をどう生きのびる?
5 ウェスウィウス山の噴火をどう生きのびる?
6 ローマ略奪をどう生きのびる?
7 暗黒時代の最も暗黒の年をどう生きのびる?
8 黒死病をどう生きのびる?
9 コンスタンティノポリス陥落をどう生きのびる?
10 史上初の世界周航をどう生きのびる?
11 海賊黒ひげとの航海をどう生きのびる?
12 ドナー隊の越冬をどう生きのびる?
13 一九〇六年サンフランシスコ地震をどう生きのびる?
14 タイタニック号の沈没をどう生きのびる?
15 アメリカ史上最悪の竜巻をどう生きのびる?
謝辞
参考文献
*
「はじめに」によると、この本は、過去の記録から調べられる範囲においては史実を外れないようにしているそうです。そして……
「要は後知恵と最新科学を十分に活用しながら、地球を襲った恐ろしい大震災と危機一髪の出来事へ旅人を案内する大真面目なガイドブックだと思えばいい。時を越えて過去へ旅し、歴史に大きな爪痕を残した破壊とドラマと危険を目の当たりにして……なおかつ生還したい。そんな現代の読者のために書かれたのが本書である。
幸運を祈る!」
……と書いてありました(笑)。
最初の「1 恐竜時代をどう生きのびる?」では……
Q もしもティラノサウルスが追いかけてきたら?
A 大丈夫、走って逃げられます。
……ええっ! そうなんですか! 実は、恐竜の腰の高さと歩幅さえわかれば走る速度を推定できる(振り子の長さと振れ角がわかれば振れ幅を予想できるのと同じ)そうで、ティラノサウルスは、体が大きすぎて速く走れなかったそうです。そして追って来る恐竜から逃げるコツは「スピードを落とさずに頻繁に方向転換する」……これ、ライオンに追われる草食動物をTV画面で見ていると、まさに実行している行動ですよね(そして逃げ切ることもある)……絶対に「全速力でジグザグに」逃げたいと思います!
この本には科学に基づいた推定、歴史的事実などが盛り込まれているので、まるでタイムマシンに乗って、その時代の世界にいるかのような臨場感を味あわせてくれます。
本書で一番絶望を感じたのは、恐竜を絶滅させたのかもしれない「2 チクシュルーブ小惑星の落下をどう生きのびる?」。
巨大なチクシュルーブ小惑星は……
「(前略)地面に衝突するまで高速を保つので、厚さ一〇〇キロほどの大気圏を突きすすむのに六秒前後しかかからない。現在でいう中央アメリカの上空に猛スピードで現れたとき、小惑星は地球全体にとどろくソニックビームを放った。
あまりに短時間で落ちてきたので空気自体の逃げ場がなくなった。結果として空気は極度に圧縮され、ほぼ瞬時に何千度もの高温に熱せられた。このため、いまのユカタン半島を覆っていた白亜紀後期の浅い海は、小惑星が地面に触れもしないうちから広範囲にわたって蒸発した。その数ミリ秒後に巨大な岩石はわずかに残った水を貫き、秒速およそ二〇キロで岩盤にたたきつけられてめりこんだ。」
……この衝突のあまりに大きな圧力のせいで、土壌と岩石が液体のように流れたそうです。また岩石の運動エネルギーは、瞬時に熱に変換されました。そして……
「この熱で原子のまわりの電子がはぎ取られて空気は電離し、蒸発した岩石のまじったプラズマの火の玉となった。火の玉はふくれあがり、音速を超える爆発的なスピードで衝突クレーターから広がった。熱せられて急速に膨張する空気と、ほぼ瞬時に気化した土が、小惑星の衝突による衝撃波と組み合わされる。その結果、すさまじい圧力波が爆風となって時速一六〇〇キロを超える速度で外へ外へと突きすすんでいった。」
……うわー! と叫び出したくなりましたが、絶望はこんな程度ではないのでした……。
「小惑星の衝突によって高層ビル並みの高さの津波が複数発生する。第一波は一時間とたたないうちにメキシコ湾岸を襲った。(中略)
小惑星は地殻に穴をあけたとき、ユカタン半島の岩石二五兆トン分を打ち出して弾道軌道に乗せた。岩石の一部はすさまじいスピードで飛んでいき、地球の脱出速度(訳注:秒速約一一キロ)」をも超えて地球の重力場を抜け出た。」
……地球から飛び出した岩石は、太陽を公転したり、火星にたたきつけられたり、木星に衝突したものもあったようです。そして……
「だが大半は地球に舞い戻った。この岩石はガラス質でテクタイトと呼ばれる。大きいものはスクールバス程度。でも大部分はおはじきくらいのサイズであり、それが時速二〇〇~三〇〇キロほどの速度で大地に激突した。
あなたが地球のどこにいるにしても、雨あられと降りそそぐこの灼熱の岩石から身を守る方法を見つけないとまずいことになる。チャールズ・バーディーンが勧めるのは洞窟だ。」
……しかも小惑星が衝突した場所にはたまたま石油と硫黄が豊富に埋蔵されていたので、酸性雨や積雪が続いたそうです。気体の石油は煤となって上空に残り続け、地表に到達する日光量は、少なくとも三年のあいだ九〇パーセント低下し、地球の気温は最大で二八度近く低下したということで……寒さを避けたいならマダガスカルかインド(当時はまだ独立した大陸)か、インドネシアの島々しかないそうで、そこの洞窟にいたら生き延びられたかもしれないようですが……無理……。
『とんでもないサバイバルの科学』は、こんな感じで、タイムマシンに乗って「史上最悪レベルの大事件」の現場を訪れ、そこでどう生きのびるのかを教えてくれるサバイバル・ガイドブックなのでした。
大事件の科学的・歴史的説明も興味津々ですが、なんといっても本書の特徴は「ユーモア」。「とんでもないサバイバル」なので強烈に厳しい内容の科学的説明とともに、知的なユーモアがたくさん散りばめられていて、絶望の中にも笑いがあるのです……まさに面白くて勉強になる(役に立つかどうかは分かりませんが……笑)素晴らしい本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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『とんでもないサバイバルの科学』