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第1部 本

生物・進化

鳥の骨格標本図鑑 改訂版(川上和人)

『鳥の骨格標本図鑑 改訂版 (BIRDER SPECIAL)』2026/1/27
川上和人 (著), 中村利和 (写真)


(感想)
 145種の鳥の骨格標本を掲載。体を支える丈夫さと飛ぶための軽量性を兼ね備えた骨の見どころを、飛ぶ、泳ぐ、走る、木に止まる、獲物を捕らえるなど、鳥の生態・行動と関連させて解説。生態写真と合わせて見ることで、鳥の進化の道筋を垣間見ることができる一冊で、『日本鳥類目録改訂第8版』に準拠し、学名や科名、掲載順を大幅に変更した改訂版です。
 この本は本当に「鳥の骨格標本」で溢れています。例えば表紙の鳥の骨格は「フンボルトペンギン」。これは後姿ですが、本文では前姿を見ることが出来ます。

 冒頭には鳥の骨に関する総合的な解説があり、とても勉強になりました。
例えば「飛ぶ」ための骨に関する解説としては、次のようなものがあります(ごく一部の抜粋紹介です)。
・「鳥の胸部は癒合胸椎と肋骨、胸骨がつくる堅牢なカゴ状になっている。腰から下は癒合仙椎を中心とした骨盤が展開される。鳥の体幹は癒合した椎骨で構成されているため脊椎の可動性が小さく柔軟性がないのが特徴だ。飛行時の移動モジュールは翼である。このため、前肢で体を支え胴体を水平に保たなくてはならない。柔軟ではないからこそ、鳥は後方に体をなびかせた空気抵抗の少ない姿勢をとりやすくなる。」
・「鳥を鳥たらしめる自慢の種は翼である。肘から先にあたる尺骨には翼羽乳頭がポツポツと並ぶ。翼の平面部を構成する風切羽が付着していた痕である。しかし、肩から肘にあたる上腕骨にその痕はない。これは、風切羽が上腕には生えないことを示している。上腕に風切羽があると、翼を畳んだときに胴に干渉したり上に飛び出したりして邪魔になるため、このような構成になったのだろう。」
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 続いて科名ごとの骨格標本とその解説。まさに鳥の博物館の展示を、じっくり眺めながら解説を読んでいるような気分になりました。
 例えば「ウミスズメ」には……
「(前略)空中では翼が長く面積が広いほうが揚力と推進力を得やすいが、水中では抗力と浮力が増え潜水しづらくなる。小さな翼は、飛べて泳げるギリギリのバランスの結果だ。」
 ……なるほど。ウミスズメのような空を飛び海を泳ぐ鳥は、それがうまくできるように骨も進化してきたんですね……。
 そして骨を見るだけで、それが海鳥かどうかも区別できるようで、「フルマカモメ」には、次のように書いてありました。
「ミズナギドリ類の頭蓋骨を検分すると、眼窩の上の眉の辺りに、ゼリービーンズをはめたくなるようなくぼみが見つかる。これは塩類腺が収まっていた圧痕である。塩類腺は海水を飲んだときに過剰な塩分を体外に排出する器官だ。」
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 また激しく木をつつくキツツキたちの頭は振動から守られているようで、「アカゲラ」の骨格標本には次の解説がありました。
「(前略)キツツキのくちばしはまっすぐに首まで伸び、下顎骨の根元で蝶番の役割を果たす方形骨が、ほかの種に比べて大きく発達している。この構造のおかげで、くちばしの先端で生まれた衝撃は、そのまま首の後まで逃がされる。その衝撃は悪役レスラー的にマッチョな首の筋肉が受け止め、分散する。頭蓋骨の中のスポンジ状の海綿骨は脳への衝撃を吸収し、頭蓋骨を取りまく舌骨は頭部の構造を強化する。」
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 鳥は飛ぶために骨はかなり薄いのですが、頭蓋骨は、なんと幼鳥のときは脳が透けてみえるほどなのだとか! 「シロガシラ」の骨格標本に添えられていた解説によると……
「(前略)鳥の頭蓋骨は幼鳥のときは一重構造で、脳が透けて見える。そのままでは流石に無防備なので、成長につれて二重構造になる。皮膚に接する外壁と脳に接する内壁の間は細い柱が支え、腐海の深層のような空間を生む。軽量化と頑丈さを合わせ持つ構造だ。」
 ……鳥の頭蓋骨は二重構造なんですね……。
 また「古代の骨からDNAが検出された」という話題を聞くので、古い骨からもDNAは取れるのかと思っていたのですが……
「(前略)DNAは分解されやすいため保存状態がよくないと抽出できない。DNAは521年で半減期を迎えるため、ある程度以上古いと残らないのだ。
 一方、骨中にはコラーゲンが含まれる。コラーゲンはDNAより安定しており、時には1億年以上も保存される。これを構成するアミノ酸の配列は系統を反映すると考えられており、その配列の違いから骨が何の仲間かが推定できる。」
 ……そうだったんだ。DNAが抽出できなくても、コラーゲンから何かが分かることがあるんですね。その他にも……
「骨からは、窒素や炭素などの安定同位体比を計測することもできる。これらを調べればその生物が生態系のピラミッドのなかで、どの地位にいたかを知ることができ、古代の動物がどのような食物を利用してきたかがわかるのだ。また、硫黄の同位体比を使用すれば、食物が海由来のものか、陸由来のものかを推定できる。
 酸素の同位体比は体温によって変化することがわかっている。このため、古生物の骨中の酸素同位体比から、生きていたときの体温を推定する研究も進められている。水中に含まれる酸素の同位体比は標高によって異なるため、生息場所の推定に使われることもある。
 骨は頑丈なストレージである。そこには太古の記録が刻まれているのだ。」
 ……骨は体の構造だけでなく、いろんなことを教えてくれるんですね!
『鳥の骨格標本図鑑 改訂版 (BIRDER SPECIAL)』……145種の鳥の骨格標本(鳥の写真と解説つき)をじっくり見ることが出来る本で、自分専用の鳥の博物館のようでした。面白くて勉強にもなる本なので、みなさんもぜひ読んで(眺めて)みてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『鳥の骨格標本図鑑 改訂版』