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第1部 本

生物・進化

道路をわたる動物たち(ゴールドファーブ)

『道路をわたる動物たち: 道路生態学からみる生き物たちの未来』2026/4/7
ベン・ゴールドファーブ (著), 木高 恵子 (翻訳)


(感想)
 道路は、人間の発展に多大な恩恵をもたらすとともに、ロードキル、生物の生息地の分断、化学物質汚染、外来種の侵入など、自然に対して破滅的な影響を与えています。
 その一方で、自然のために立ち上がった人々は、動物のための道路建設や道路を「自然に戻す」活動、「動物孤児のケア」などを展開し始めてもいます……交通インフラが自然環境、野生動物、そして生態系全体にどのような影響を与えるかを浮き彫りにして、その解決の道を模索している本です。
 ロードキルの被害は大きくて……
「(前略)私たちにとって道路は、つながりと逃避を意味するが、他の生物にとっては死と境界線を意味する。20世紀のある時点で、道路上での事故死は狩猟を上回り「陸上における脊椎動物の死の直接的な原因の第1位」になったと科学者たちは書いている。」
 ……ロードキルは動物だけでなく人間にも被害をもたらしていて……
「(前略)1995年に研究者らは、シカが毎年100万件以上の事故を引き起こし、2万9000人のドライバーを負傷させ、200人以上を死亡させていると推定した(最近の推定では、この数字はほぼ2倍の5万9000人の負傷者と440人の死亡者となっている)。」
 ……しかもロードキルは自然淘汰を歪めて、健康な次世代が育つのを阻んでもいます。
「ロードキルの最も残酷な側面の一つは、殺される数ではなく、群れの中のどれが殺されるかである。野生の生態系は、病んでいるものや老いているものを淘汰する。(中略)対照的に、ロードキルは機会均等の捕食者であり、強いものも弱いものも同じように殺す傾向がある。」
 ……国中に張り巡らされた道路網は、生物や自然環境に、さまざまな悪影響を与えているようでした。例えば……
・シカなどの「渡り」を行う生物のルートを分断する(しかも渡りは移動中の植物の繁茂時に合わせる必要があるのに、道路やその他の障害物が時期を合わせにくくする)
・ピューマなど孤立した土地に追い込まれた生物の遺伝子を歪める(近親交配した小規模なピューマの個体群をもたらして遺伝子を歪めた)
・道路で最も被害を受けているのは爬虫類と両生類(爬虫類と両生類は動きが遅く、冷血動物なので、石灰岩であれアスファルトであれ、温かい表面へと引き寄せられる)
・昆虫は哺乳類、爬虫類、鳥類よりも8倍速く絶滅している。
・道路は魚をじわじわ殺している(道路が川と交差してアマゾンの支流を切り刻んでいる。欠陥のある暗渠がサケの上流への生息地への到達を妨げる)
・森林局が作った古い道路が、自然環境を悪化させ、土砂崩れを起こし始める
   *
 さらに次のような影響も……
・「道路生態学の本質的な理解は次の通りである。道路はあらゆる方法とあらゆる規模でこの地球を歪めている。路肩が並ぶ土壌を汚染し、スモッグを舞い上げて空を汚す。道路は川を汚染し、密猟者を招き入れ、遺伝子を改変する。道路は、受粉、死肉食、性、死といった生命の基本的なプロセスを操作する。
 しかし、道路の生態学的災害の中で最も厄介なのは騒音公害、タイヤの摩擦音、エンジンのうなり、エアブレーキの息切れするような音、クラクションの響く音である。」
・「(前略)聴覚のおかげで生き延びている動物にとって、交通の「マスキング効果」は致命的となる可能性がある。周囲の道路騒音は小鳥の警戒音をかき消し、フクロウがげっ歯類を感知するのを妨げている。」
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 道路網の発達とともに多くの生物が道路上で命を落としていますが、その被害を訴える人々の努力もあって、動物のための横断路などが設置されるようになりました。
「セイリッシュ・クートナイ部族は法的および道徳的な力を発揮し、最終的に米国国道93号線が拡張されたとき、技術者たちは40本の野生動物横断路を組み込んだ。これは、動物が何にも妨げられることなく高速道路の下をこっそりと通り抜けることができる地下道、トンネル、暗渠(地下に設けた水路)のネットワークである。」
 ……この横断路のおかげで、動物との衝突事故は4分の3ほどに減少したようです。
 この他にも膨大な数のカエルを毎年バケツで運んで移動させるボランティアの人々や、交通事故死した母親から救い出された孤児のタスマニアデビルの赤ちゃんを育てる人々などの地道な活動も紹介されていました。
 また「がけ崩れ」が発生して荒廃していたクリアウォーターでは……
「(前略)クリアウォーターでは、道路を自然に戻すことによって、森はまだ復元できることが判明した。林道は治療可能な病気で、衰弱するが必ずしも致命的ではない。」
 ……さらにアラスカのデナリ公園では、道路を主に砂利道と土の道のままにして、未舗装部分は自家用車を通行禁止とし、時速40キロのバスだけが運行することで、騒音のない状態で自然を満喫できる環境が実現されているようでした。
 ブラジルでは大規模な横断道路などが建設されているようで……
「(前略)ブラジルの生物多様性と道路はどちらも最高の賛辞に値する。ブラジルには、世界で最も多くの両生類、最も多くの淡水魚、3番目に多い爬虫類が生息し、4番目に長い道路網が存在している(ブラジルより長い道路網があるのは米国、中国、インド)。(中略)
 幸いなことに、ブラジルの拡張主義は道路生態学の成長と一致している。熱帯の国でこれほど多くの道路生態学者がいる国は他になく、ピューマやバクのための地下横断路、ゴールデンライオンタマリンと呼ばれる毛並みの美しいサルのための新しい橋など、プロジェクトが絶えず生まれている。そしてブラジルの道路生態学運動は、北半球の成功を単に模倣したのではなく、その成功を基にして、この分野を国の法的枠組みに組み込んだ。ブラジルの法律では、道路の管理者に、管轄区域内で発生したロードキルに関する情報を収集し、負傷した動物を獣医クリニックに搬送し、衝突で生じた損害をドライバーに補償することを義務付けている。」
 ……そしてアメリカも動物に優しいインフラ投資をしています。
・「(前略)2021年11月、議会は1兆2000億ドルのインフラ法案を可決した。(中略)この法案は、橋の修理や高速道路の再舗装といった、お決まりのコンクリート工事に数十億ドルを当てている。しかし、こうした地元利益誘導策の中には、より抜本的な条項が含まれていた。野生動物のための横断路、フェンス、その他の道路生態系の介入に3億5000万ドルを割り当てるプログラムで、これはアメリカ史上、動物に優しいインフラへの投資としては間違いなく最大規模となる。」
・「スノクォルミー峠の生物多様性にふさわしく、横断路は多種多様だった。クマやピューマのための広々とした地下道、マスやサンショウウオのための改良された暗渠、ヒキガエルやネズミのためのトンネルがあった。それはワシントン州の大いなる業となった。20年にわたる道路生態学の蓄積が、たった1つの高速道路に注ぎこまれたのだ。」
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 今後は、「道で遭遇する動物に関するリアルタイムデータを絶えずアップロード可能」な自動運転車が、道路生態学の救世主となる可能性もあるようです。自動運転車にはセンサーも充実していますし……大型動物のロードキルを大幅に削減できるかもしれませんね!
『道路をわたる動物たち: 道路生態学からみる生き物たちの未来』……「生物絶滅の最大の皮肉は、人間がその原因であると同時に解決策でもあるということだ。」……交通インフラが自然環境、野生動物、そして生態系全体に影響を与えている現状把握と、その解決の道を模索している「道路生態学」の世界を詳しく紹介してくれる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『道路をわたる動物たち』