ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
脳&心理&人工知能
満足できない脳(イースター)
『満足できない脳: 私たちが「もっと」を求める本当の理由』2025/7/9
マイケル・イースター (著), 森内 薫 (翻訳)

(感想)
いらないのに買ってしまう、ついスマホを見てしまう……人類は「もっと」を求めるように進化し、文明化された便利な社会で私たちは人生に退屈しています。そしてその退屈につけこむ商品やサービスが、私たちを浪費や依存に駆り立てているのです……脳に組み込まれた「欠乏ループ」のメカニズムとその対策について深く考察している本で、主な内容は次の通りです。
はじめに――われらの欠乏脳
第1章 欠乏ループ
第2章 予測不可能な報酬とドーパミンの放出
第3章 いたるところに組み込まれた欠乏ループ
第4章 脳は「多い」のが大好き
第5章 薬物依存と環境
第6章 ゲーム化や数値化の害悪
第7章 影響力と地位、承認欲求
第8章 加工食品とダイエット
第9章 衝動買いとモノを買いたいという強迫観念
第10章 冒険心と情報への渇望
第11章 仕事と幸福
エピローグ――いま私たちは何をするのか?
謝辞
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「はじめに――われらの欠乏脳」では、「その昔、食べ物、情報、影響力、所有物など、人間の生存にとって重要なものは希少で、見つけるのが難しく、消えやすかった」ために、私たちは「生き残りのため、何かが不足していると考え、行動するようにプログラムされている」として、次のように書いてありました。
「私たちはいまでも、体が必要とする以上の食べ物を摂取するように仕向けられている。より多い情報を衝動的に検索するように仕向けられており、不必要なものまで買うように仕向けられている。他人への影響力を高めるために策を弄するように仕向けられており、つかの間の喜びをふたたび得るために、できることは何でもするよう仕向けられている。手中にあるものを使って楽しむよりも、自分が持っていないものに精を出すように仕向けられている。それは、私たちに欠乏脳が備わっているからだ。
ものにあふれた現代の世界では欠乏脳が必ずしも有効に働かないことは、科学によって示されている。いまではむしろ不利に働く場合が多く、さらには外部の力がその働きにつけこんで、私たちの決定に影響を与えようとする。一見断ち切りがたい非生産的な行動の根源には、欠乏脳の作用がある。」
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そして本書はこの「欠乏脳を理解し解決策を見つけるための旅」について書かれています。この旅で出会った人々との交流のなかで、イースターさんは有益な答えを見つけたようで……
「(前略)足るの発見のなかにこそ、永続的な変化と長期的な満足が存在することだ。多すぎてもいけなく、少なすぎでもいけない。欠乏ループを「豊かさのループ」に切り替え、そのループを使って私たちに役立つことをより多く行う人々もいる。」
……実は、これがまさに本書の主題でもありました。
この本は、さまざまな状況で、私たちが「欠乏ループ」に陥っている理由を探っています。例えば最初の「第1章 欠乏ループ」では、スロットマシンの設計に取り入れられた「機会→予測不可能な報酬→迅速な再現性」という、ドーパミン系を刺激する「欠乏ループ」が、私たちを取り巻くあらゆることに組み込まれ、私たちを浪費や依存に駆り立てることが明らかにされています。
この「欠乏ループ」には、次の3つの段階があるそうです。
1)機会:何かの出来事が明確な報酬・損失につながる可能性が高いほど、人々は一種のトランス状態に陥り、そこで動けなくなる
2)予測不可能な報酬:予測不可能な報酬に心を奪われる
3)迅速な再現性:期待した何かが起こらないと、私たちはすぐに行動を起こす。
……スロットマシンの設計者は、人に続けさせるために、「もうちょっとで勝つ」状態を絶えず生じさせているのです。
そして「第2章 予測不可能な報酬とドーパミンの放出」では、人間だけでなくラットやハトなどの実験動物も、同じようなギャンブルにハマることが紹介されていました。
しかも脳内化学物質ドーパミンが、欠乏脳の後押しをする(報酬を受け取れるかもしれないという期待は、ドーパミンのシステムをはるかに強く刺激する)のです。それでもこれは悪いだけのものではなく……
「欠乏ループは私たち人間を生かし続けるために開発された古代のゲームだ。それは人間に、不確実性に直面してもへこたれず、何度もそれを繰り返すことを強いた。それをやめた者は、死ぬ。」
……「欠乏脳」は、かつては生存にとても役に立っていたし、恐らく現在でも、我々を「向上」させるための原動力になっているのではないかと思います。
さらに「第7章 影響力と地位、承認欲求」では……
・「欠乏脳は影響力を求めるように進化したことがわかっている。人間は社会的な動物であり、地位を求めて激しく争ったり、他人が自分をどう思っているかを気にしたり、他者への反応として何かを行ったり思考したりすることがしばしばある。」
・「欠乏脳は影響力を欲しがる。なぜなら、他人に対する影響力が大きければそれだけ、生き残って自分の遺伝子を広める可能性は高まるからだ。」
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そして「第10章 冒険心と情報への渇望」では……
「研究者たちによれば、情報には収穫逓減がある。何も知らないうちは、情報を増やすことで、より良い意思決定ができる。けれども、情報をどんどん増やし続けると、「情報過多」に陥る。この転換点を越えると、情報が増えるほど、悪い決断に至るようになる。扱う情報が複雑であればあるほど、早く転換点に達する。
だが、情報消費者である私たちには、いつこの転換点に達したのかがまるでわからない。情報が乏しく「多いほど良い」という世界で進化してきた欠乏脳は、いまだに多くの情報を渇望しているのだ。
心理学者は、情報の海で決断を下すためのすぐれた経験則を示した。それは、ものを捨てるか残すかを判断するときに役立つ経験則に似ている。日常の決断は60秒以内に下すこと。それ以上かけても、情報をどんどん分析して時間を浪費するばかりで、格段に良い結果につながるわけではない。」
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……モノや情報が豊富にある現代では、かつてとても役に立っていた「欠乏脳」が、むしろ問題を起こしているのかもしれません。
そして「第11章 仕事と幸福」では、「十分なものを見出し、それでやっていくという養生法」、すなわち「足るを知る」生活をしているベネディクト会修道院の生活の体験を通して、イースターさんは次のように語っています。
「つまり、幸福とは、行き先の見えない長く厳しい道のりを歩いていくドラマチックな努力なのかもしれない。地形は険しく、天気はいつも完璧とは限らない。それは、深淵に向かう散歩だ。けれども、途中のどこかで私たちは、目先の欲望の優先順位を下げて一歩一歩進むようにすることで、たとえ旅がまだ終わっていなくても、自分が幸せであることに気づくのだ。」
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『満足できない脳: 私たちが「もっと」を求める本当の理由』……「もっと」を求めるように進化してきた私たちの「欠乏脳」の問題を明らかにすることで、私たち自身の生活に変化を起こすためのヒントを与えてくれる本でした。日本人が美徳としてきた「足るを知る」は、現代人にとって、とても大切な心構えなのかもしれません。いろいろなことを考えさせてくれる本なので、みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『満足できない脳』