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第1部 本
社会
EU 統治の論理と思想(庄司克宏)
『EU 統治の論理と思想 (岩波新書 新赤版 2089)』2025/11/25
庄司 克宏 (著)

(感想)
イギリスの離脱、極右勢力の台頭、移民や難民の増大……様々な問題に直面し岐路に立つEUはどこへ向かうのか。激動する世界の中で、どんな意味をもつのか。超国家的統合の実態や意義を明快に説いた前著の『欧州連合』を大幅に改訂した本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第Ⅰ部 EUの実像――超国家的統治体の仕組み
第1章 統治機構としてのEU
第2章 EUと国家の役割分担
第3章 EUはどこまで拡大するか
第Ⅱ部 EUを動かす論理――国家主権を超えて
第4章 域内市場の論理
第5章 自由移動と各国文化
第6章 EU市民権の論理
第7章 単一通貨の論理――ユーロの仕組み
第Ⅲ部 EUのトランスナショナル・ガバナンスにおける対外的側面
第8章 トランスナショナル・パワーとしてのEU
第9章 シェンゲン領域と難民問題
第10章 アジア太平洋とEU
あとがき
参考文献
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「第1章 統治機構としてのEU」によると、EUは石油鉄鋼共同体から始まったそうです。
「(前略)パリ条約(一九五一年署名、五二年発効)に基づいて、軍需産業の要でもあった石炭と鉄鋼を超国家的機関により共同管理する欧州石油鉄鋼共同体(ECSC)の創設から始まり、その後のローマ条約で今日のEUの基本的な制度設計が整った。」
……そしてEUに関する概説の一部を紹介すると、次のような感じ。
・「EUの主な仕事は、物・人・サービス・資本の自由移動と競争政策による域内市場(単一市場、共同市場とも呼ばれる)の確立と発展である。(中略)一方、教育・福祉や治安・国防は、EUレベルで政策調整されることがあるとしても、もっぱら国家の仕事であり、国家予算による。このように、EUは国家を補完するものであるとしても、それにとって代わる存在ではない。」
・「(前略)発足当初は市場統合が主な仕事であったが、現在では金融政策や気候変動対策を含み、また、共通外交・安全保障政策(CFSP)や警察・刑事司法協力(PJCC)にまで及んでいる。このようにEUには汎用性がある。」
・「(前略)域内市場においてEUレベルでは規制撤廃型の政策が中心で、社会政策など財政や税制が絡む分野は主として加盟国が担当する。経済通貨同盟では、単一通貨ユーロとECBによる単一の金融政策が導入される一方で、経済・財政政策は基本的に加盟国の権限にとどまっている。域内国境管理を撤廃するシェンゲン領域では、域外国境管理は基本的に加盟国の権限として行使されている。」
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EUの具体的な仕事としては、主に次のものがあるそうです。
1)共同市場(域内市場)と単一通貨ユーロを武器にグローバルな競争を勝ち抜き、経済的成功と社会的責任を果たす
2)テロリズム、組織犯罪や不法移民との闘い
3)世界における紛争の解決や自由の促進
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そしてEUは「スプラナショナル」な統治体ですが……
「スプラナショナルな統治体とは、複数の国家が共通機関の設立により主権の一部をプールして共同行使する統治の枠組みをいう。(中略)また、スプラナショナルな統治体の民意は、直接選挙される欧州議会に反映されるものとみなされる。コミッション、理事会、欧州議会の三機関が制定する法令は、国内レベルの法令に優越する。それを確保するのは、EU司法裁判所の任務である。」
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そしてEUの共同体方式は……
「その方式は、公権力を立法・行政・司法に分割することにより個人の自由を確保することを目的とする権力分立制ではなく、「機関間バランス」(institutional balance)に基づいている。すなわち、EU内で理事会が加盟国の国益を、コミッションがEUのスプラナショナルな利益を、そして欧州議会がEU市民のトランスナショナルな利益を、それぞれ代表する形で公権力が配分されている。EU司法裁判所は、そのような権力バランスを維持する任務を付与されている。」
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驚いたことに「EU諸機関に共通の所在地は存在しない」そうです。
「EU諸機関に共通の所在地は存在しない。しかし、EUの本部はブリュッセル(ベルギー)にあるとするのが普通である。」
……EU諸機関は各国に分散しているのですが、その理由は、地位向上・情報収集面で有利・雇用拡大などのために、各国が誘致したがるからなのだとか……分かるような気がします。そして……
「(前略)EUはそれ自体で国家を構成しないが、加盟国の領域、国民、および主権に機能的にまたがる存在であり、一定の範囲で立法権、行政権、および司法権を行使する。そのような意味でEUと加盟国は共同統治を行っている。そこでは、EUの権限行使は加盟国から一定の制約を受ける。」
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また「第3章 EUはどこまで拡大するか」によると、EUの加盟国は、次のことを求められるそうです。
「EUは、民主主義、法の支配、人権という政治的コンディショナリティを含むコペンハーゲン基準に基づいて相手国に国内改革を迫り、その国にグッド・ガバナンスを確立することを求める。数年にわたる加盟交渉において加盟希望国は、統治制度に加えて、すべての分野にわたる膨大な数の政策・法制度が「既存EU法体系」に照らして一つ一つチェックされ、必要に応じて修正を迫られる。(中略)その意味で国内改革の見返りに加盟を認めるEUの拡大は、ソフト・セキュリティ、すなわち軍事的手段によらない安全保障政策の側面を併せ持つ。このようにして、EU拡大は「最も実効的なEUの外交政策手段であり、かつ、EUの最も成功している政策の一つである」とみなされてきた。」
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そして「第8章 トランスナショナル・パワーとしてのEU」には、EUが、日本を始めとする域外の国にも大きな影響を与えていることが書いてありました。
「(前略)EUが競争政策、環境保護、食品安全、プライバシー保護などで域内共通の基準を設定すると、域外に向けて高度の波及力を伴うトランスナショナル・パワーが発生して、グローバルな市場を一方的に変えてしまうことがある。この「グローバルな市場を規制するEUの一方的なパワー」が「ブリュッセル効果」と呼ばれる現象である。」
……このブリュッセル効果の例としては、EU競争法(独占禁止法)、一般データ保護規則(GDPR)、食品安全規制(遺伝子組換え作物に関する一連の規則・指令)、化学物質規制などが挙げられているようです。
そのうちの一般データ保護規則(GDPR)を見てみると、「EUが域外国の個人情報保護をGDPRと「同等」であると認定する「十分性」決定をしないならば、その域外国の企業はEU内で入手した個人情報を原則として越境移転することができない」ために、日本も「個人情報保護法」を改正したそうです。
「(前略)日本国民にとっては、ブリュッセル効果によって個人情報保護の水準がEU並みに向上したことを意味した。」
……なるほど。この場合は、良い影響を与えられたような気がします。
『EU 統治の論理と思想』……EUについて総合的に解説してくれる本で、とても勉強になりました。この他にも難民問題など、さまざまな視点で詳しい解説があります。
ちなみに難民問題に関しては、ベラルーシやロシアが、ウクライナ侵攻以降、EU加盟国に混乱を引き起こす政治目的の道具として不正規移民を手段化している(ハイブリッド戦争行為とみなされる)などという情報まで書いてありました……こんな戦争行為があったんですね……。
とても参考(勉強)になる情報が満載なので、みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『EU 統治の論理と思想』