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第1部 本
社会
プラネタリーヘルス入門(國井修)
『プラネタリーヘルス入門――地球と人類の健康のためにできること』2026/2/18
國井修 (著)

(感想)
地球と人をともに健康にし、地球の生物圏全体のウェルビーイングを達成する「プラネタリーヘルス」という概念は、学際的な研究成果とイノベーションを結集し、100年、200年先を見すえる全人類規模の運動です。この本はそんな「プラネタリーヘルス」の入門書で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 プラネタリーヘルスとは何か?
第2章 地球の限界と現状
第3章 プラネタリーヘルスが人間に及ぼす影響
第4章 プラネタリーヘルスの課題の実例
第5章 解決策――私たちにできること、すべきこと
おわりに
図版一覧
注
索引
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「第2章 地球の限界と現状」では、現状について……
「とくに18世紀後半から始まった産業革命以後の約200年間の社会経済発展はめざましく、人類の生活をより豊かなものにしていった。一方で、世界中の自然破壊が進み、都会は無数の建造物で覆い尽くされ、大量のゴミ、とくに原子力発電の課程などで発生する核廃棄物のような危険な汚染物質があちこちで投棄されるようになった。」
……として、ここ最近、急激に増えてきたもの(グレート・アクセラレーション)が24項目書いてありましたが、そのうち最初の「世界人口」については……
「地球上の人口は、人類誕生以来、感染症や気候変動によって一時的な減少はあったものの、今日まで増え続けている。とくに18世紀の産業革命以降、その増加率は上昇し20世紀には「人口爆発」と呼ばれるほどになった。1940年に20億人程度だった人口は、第二次世界大戦後に加速化して1955年には35億人に達し、2022年には80億人を超え、10億人増に要する時間は次第に短くなっている。」
……グラフで見ても、凄まじい増加っぷりに驚かされます……。
そして「グローバルリスク報告書」(世界経済フォーラムWEF)によると……
「(前略)2025年版報告書では、短期リスク(2年以内)のトップ3は、誤情報・偽情報・極端な気象現象、国家間の武力紛争、長期リスク(10年以内)トップ3は、極端な気象現象、生物多様性の喪失・生態系崩壊、地球システムの重大な変化(気候臨界点など)であった。」
続く「第3章 プラネタリーヘルスが人間に及ぼす影響」では、「気候変動」に関して、異常気象による健康影響/災害による健康影響/食糧問題による健康影響/水不足による健康影響/感染症流行などが挙げられていて、世界保健機関(WHO)の報告でも……
「(前略)世界全体で年間1200万~1300万人が汚染・気候変動・資源劣化など地球環境に関連して死亡している計算となった。」
「現在、世界では36億人が気候変動の影響を受けやすい地域で暮らし、その人口は今後さらに増大すると推測されているが、WHOは気候変動の影響による栄養不足、マラリア、下痢症、熱ストレスの4つの健康リスクだけでも、2030-50年に毎年25万人の死亡増加があると推計している。」
……気候変動は、地球と人間の両方の健康に大きな影響を及ぼしているんですね。
そして「第4章 プラネタリーヘルスの課題の実例」の「ミャンマーのサイクロン・ナルギス(2008年発生。死者・行方不明14万人超えの大災害)」では……
「今回の被害が甚大になったのには、軍事政権に対する経済制裁などにより経済発展が進まないミャンマーにおいて通信を含む社会インフラ、堤防やサイクロン・シェルターなどの防災インフラが未整備であったこと、住民への警報や避難指示がなかったこと、海岸線や川沿いのマングローブ林が破壊されていたために、高潮の被害を軽減できなかったことなどの要因もある。
しかし、サイクロンの巨大化や異常な進路の背景には、地球温暖化によるベンガル湾の海面水温上昇がある。湾周辺では、サイクロンや洪水などによる大規模災害が過去50年で10倍に増加しており、今後もサイクロンの「強度増大」「被害の拡大」「高潮リスクの増大」「社会経済的損失の増加」が予測され、甚大な健康被害を及ぼす危険性がある。」
……日本でも台風の激甚化など地球温暖化による影響をひしひしと感じていますが、さらに南のミャンマーでは、こんなことが起きていたんですね……。
こんな状況のなか「第5章 解決策――私たちにできること、すべきこと」では、「基本的な考え方」として……
・「地球の健康を考える際にも、(1)さまざまな問題やその影響をいかに予防するか、(2)問題が生じた場合、いかに解決するか、(3)解決困難な問題や長期的に影響が続く場合、いかなる対応や措置をとるか、が重要である。たたえば、プラネタリーヘルスの課題のひとつ、自然界からのスピルオーバーによるパンデミックに対しても、予防(prevention)、備え(preparedness)、対応(response)の3つの包括的な検討が必要で、実際にそれが進められている。」
・「対策を検討する上で、現状がどうなっているのか(現状分析)、このままでいくとどうなるのか(将来予測)、解決に向けてどこを目指すのか(目標設定)などを明確にする必要がある。」
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そしてプラネタリーヘルスに関連する取り組みとして、SDGsやESGについても解説されていました。
「プラネタリーヘルスに関連する取り組みとして、SDGsやESGがある。
2015年に策定された「持続可能な開発目標(SDGs)」は広く知られているので詳細な説明は割愛するが、要約すると持続可能な世界を目指す国際的な開発目標として17の目標と169のターゲットを掲げ、5つのP(People、Prosperity、Planet、Peace、Partnership)に関して、以下のような世界を目指している。(中略)
これに対してESGとは、(環境)、(社会)、(ガバナンス/企業統治)の頭文字を組み合わせた略語で、企業の長期的な成長と持続可能性を評価するための重要な要素として、SDGsに関連して検討されることが多い。具体的には、環境としては、気候変動対策、二酸化炭素排出量削減、再生可能エネルギーの利用、生物多様性の保護、廃棄物管理など、社会としては、人権問題への取り組み、労働条件の改善、ダイバーシティの促進、ワークライフバランスの実現、地域社会への貢献など、ガバナンスとしては、適切な情報開示、コンプライアンスの徹底、リスク管理、取締役会の多様性、株主権利の保護などが重要視されている。」
……そして、この後は、国際、政府、地方自治体・地域、都市、研究・教育機関、企業・事業者、民間慈善財団、NGO・NPO・市民社会、私たちひとりひとり、若者の各レベルが、それぞれ何ができるかが示されていました。
私たちは、考え方を大きく変える必要があるようです。
・「とくに重要なパラダイムシフトとして、人間中心主義(anthropocentrism)から地球中心主義(geocentrism)・生態系中心主義(ecocentrism)、または共生中心主義(symbiocentrism)へのシフトがある。」
・「(前略)それだけでは気候変動を含む地球規模の問題を食い止めることはできないという議論と実践として始まったのが、「排除する(Eliminate)、循環させる(Circulate)、再生する(Regenerate)」の基本原則をもつサーキュラーエコノミー(循環型経済)である。」
・「また、GDPを指標として経済成長を追い続ける「経済価値」一辺倒の考え方から、「経済・社会・環境価値の統合的向上」へと価値観を転換するパラダイムシフトも必要とされている。」
・「GDPに代わる新たな指標として注目を浴びているのが、幸福度やウェルビーイングである。」
……そして「私たちひとりひとりにできること、すべきこと」は……
「まず我々にできることは、地球が直面している問題、そしてその要因や解決方法について知ること、そして意識することである。そして、それぞれの立場でできることを実行していくことである。」
……現実に何をすべきかについては、「ゼロカーボンアクション(環境省)」などが参考になるそうです。
最後の「おわりに」には……
「これからのプラネタリーヘルスには、日本の「自然と人の調和を重んじる心」と、データ・エビデンス・イノベーションを統合する姿勢が、ますます重要となる。(中略)
日本初のプラネタリーヘルスは、単に技術を輸出することではない。「身土不二」や里山の知恵、八百万の神に象徴される自然観と、科学・産業・政策の最前線とを結び直す営みであるといえる。そのとき、地球環境の保全と人間の経済社会活動との調和は、「何かをあきらめるゼロサム」ではなく、健康・安全・豊かさを再定義するプロセスとなる。」
……確かに。私たち日本人はもともと「自然を愛する心」が強い人が多いので、プラネタリーヘルスに向けた意識変革もしやすいような気がします。
『プラネタリーヘルス入門――地球と人類の健康のためにできること』……地球環境の健全性を守ることは人間の健康を守ることでもある……そのために何ができるかを教えてくれ、考えさせてもくれる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『プラネタリーヘルス入門』