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第1部 本
ビジネス・問題解決&トラブル対応
インセンティブが人を動かす(ニーズィー)
『インセンティブが人を動かす: 今日から使える行動経済学入門』2026/1/27
ウリ・ニーズィー (著), 児島 修 (翻訳)

(感想)
「インセンティブ=その気にさせる仕組み」が、「人々の購買意欲を高める」「社員のやる気や満足度を上げる」「よい行動を習慣化する」などの行動変容を促す仕組みを、科学的知見に基づき解説してくれて、ビジネスにも普段の生活にも役立つ「インセンティブのつくりかた」を豊富なエピソードとともに教えてくれる行動経済学の入門書です。
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「混乱を招くような混合シグナルを送ったことで、意図したのとは違う結果を生じさせてしまうインセンティブの例はたくさんある。(中略)
たとえば、「チームとして働くことの重要性」を従業員に説いているCEOが、評価や査定のインセンティブを個人の業績に基づいて設計しているとしよう。当然ながら、従業員はCEOの言うことを無視し、個人の業績を上げることを最優先しようとする。なぜなら、インセンティブがそのようなシグナルを発しているからだ。このような混合シグナルを回避するためには、CEOはインセンティブをまったく使うべきではないと考える人がいるかもしれない。しかし本書では、「インセンティブを使うか、使わないか」という二者択一の発想ではなく、意図したメッセージに沿ってインセンティブを最適に設計することで、混合シグナルを回避するための落としどころを探っていく。」
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そしてインセンティブには、次の2つのアプローチがあるそうです。
1)直接的経済効果に焦点:何かをすればお金がもらえる
2)間接的な効果に焦点
2-1)社会的シグナル:他人にどう思われるかを気にする
2-2)自己シグナル:特定の自己イメージを保ちたい
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「(前略)インセンティブを設計するうえで何より大切なのは、インセンティブが発するシグナルを機能させることであり、同時に、自己シグナルと社会的シグナルを望ましい方向に向けることなのである。」
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そして「第2章 トヨタはいかにしてハイブリッドカー市場を制したか」では、あまり「カッコよくない」デザインのプリウスは、むしろ、あの独特の外観だからこそ成功したそうです。
「プリウスは、今では誰もが知るようになった、独特の外観を持つ車に再設計されたのだ。それは、ハイブリッドカーであることを示す小さなプレートを背面に取り付けただけのセダンのような外観ではなかった。この新型のプリウスを運転して職場の駐車場に入れば、あなたがハイブリッドカーを所有していることは一目瞭然になる。車の購入者が自分は環境に配慮しているというシグナルを周囲に送るためには、この外観の特徴は極めて重要だった。」
……なるほど。そうだったんだ。なんか納得してしまいました(苦笑)。
この後も、良いインセンティブの例や、良くない結果を招いてしまったインセンティブの例がどんどん紹介されていきます。
例えば、「第3章 私が誰かを示すもの」では、献血の場合は、少額の現金よりも、ささやかなプレゼントの方がインセンティブを高める(お金=金銭目当てと思われる)(ささやかな感謝の印のプレゼント=献血者であることを周囲にさりげなく伝えられる)ことが書いてありました。
また「第4章 「多ければいい」が当てはまらないとき」は、良くない例として……
「(前略)チリの研究によれば、バスの運転手が、素早くバス停を回ること、乗客数を増やすことに対してインセンティブを与えられると、事故が増え、乗客の乗り心地が悪くなる。
ドライバーへの報酬基準を設定するときには、バス会社は効率性、安全性、快適性のどれが重要かをよく考えなければならない。」
……「量を奨励するときは、質が損なわれないように気を付けること」が大事なんですね。
さらに「第5章 イノベーションを奨励しながら、失敗を罰する」では、失敗がつきもののイノベーションで失敗に罰を与えると、イノベーション自体をなくしてしまうことが書いてありました。
また第21章~第23章では、マサイ人の男性の「ライオン殺し」の伝統が、ケニアの観光産業の要のライオンを減らしているという現実を変えるために始められた「シンバ・プロジェクト」が、長老や戦士へのインセンティブを使った働きかけで、それまでライオンを殺すことで自らの能力をアピールしてきた戦士たちを、ライオンを守る「シンバ・スカウト」へと変えることに成功した事例というが紹介されています。まさに「インセンティブを使って、新しい伝統を築くことは可能である。」なんですね……。
そしてとても参考になったのが、第25~28章の不動産関連の交渉の事例。ここでは……
「交渉の場面での最初のオファーのシグナル価値を考えよう。それは、交渉に基準(アンカー)を設定し、コントラスト効果を生み出し、対象物の価値が高いを感じさせ、返報性を促すのに役立つものになる。」
……最初に「妥当な金額のなかで一番高い」価格を提示すると、その後の交渉を有利に進められることが、さまざまな事例を通して紹介されています。
なお不動産の物件見学では、最初に悪い物件を紹介すると、良い結果につながりやすいそうで……
「(前略)1件目の悪い物件は、期待値を設定する。ここで2件目にそれなりの物件を紹介すると、1件目と比べてはるかに良いように見えるので、買い手は簡単に満足する。」
……うーん、確かにそうですね(苦笑)。
『インセンティブが人を動かす: 今日から使える行動経済学入門』……多数の事例を通して「人を動かすインセンティブのつくりかた」を教えてくれる本でした。とても参考になるので、みなさんもぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『インセンティブが人を動かす』