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第1部 本

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フェイクニュースの免疫学(リンデン)

『フェイクニュースの免疫学――信じたくなる心理と虚偽の構造』2026/3/18
サンダー・ヴァン・ダー・リンデン (原著), 笹原和俊 (監修, 翻訳), 松井信彦 (翻訳)


(感想)
「5G電波のせいで新型コロナウイルスの被害が拡大している」「あのピザ店は巨大な児童売買組織の拠点だ」「400人以上もの人さらいが村にやってきたらしい」……これらはすべて実在したフェイクニュースで、実際に死傷者が出た事件と関係しています。このような誤情報が次々に伝染して社会にダメージを与える様子は、感染症のパンデミックの情景によく似ていますが、本書によれば、その対策方法もよく似ているようで、「ワクチンを打てばいい!」そうです。
 人間の認知のしくみと誤情報の性質に基づく「心理的接種理論」の詳細と、それを社会実装する方法を教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
プロローグ
第I部 精神のウイルス
1 真実の錯覚――脳はいかにして事実と作り話を区別するのか
2 動機付けられた脳――あなたが信じたいこと
3 陰謀論効果――真実はそこにある
4 なぜウイルスは頭から離れようとしないのか――誤情報持続効果
第II部 インフォデミック――誤情報ウイルスが拡散する仕組み
5 誤情報という病原体――古代ローマからソーシャルメディアまで
6 マシンに向かう怒り――エコーチェンバーとフィルターバブル
7 大衆説得兵器
第III部 誤情報に対する心理的ワクチン
8 新たな科学――プリバンキング
9 『バッドニュース』――操作の6次元
10 心理的な集団免疫
11 友人や家族に接種を施す方法
エピローグ――真実の未来
誤情報の拡散阻止に役立つ11の抗原
謝辞
監訳者あとがき
索引/原注/参考文献/図版クレジット/補足資料
   *
「プロローグ」には、次のように書いてありました。
「(前略)本書で紹介するのは、ほかにいくらもある効果的な説得法ではなく、説得に対する応戦方法だ。フェイクニュースや誤情報でこちらをだまそうとする者たちの戦略に対し、精神にいわば耐性加工を施して説得への抵抗力を高める方法である。脳が事実と作り話を区別する方法から、2016年の米国大統領選、ブレグジット、国際紛争、新型コロナウイルスのパンデミックなどにおいて誤情報の爆発的な拡散とそれが果たしたとされる役割、さらには社会における真実の未来まで、フェイクニュースや誤情報に欺かれないための方法について私が明らかにしてきた知見をすべて共有するつもりだ。」
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 また「監訳者あとがき」に、本書の分かりやすい簡潔なまとめがあったので、その中から一部を紹介します。まず私たちがフェイクニュースに影響される理由については……
「(前略)人間の脳は、真偽を見極める「ファクトチェッカー」として進化したのではなく、むしろ限られた時間と情報の中で素早く判断するための「推論装置」として進化してきた。私たちは外界の情報をそのまま写し取るのではなく、過去の経験や自分の信念を手がかりに、常に「最もありそうな解釈」を構成して世界を理解している。この仕組みそのものが、情報環境の中で悪用可能になっている。」
 そして次のようなものに、惑わされやすい傾向があるようです。
・「真実錯覚効果」(正しいかどうかとは無関係に、繰り返し接触するだけで「もっともらしい」と感じやすくなる。)
・「誤情報持続効果」(後から訂正が出ても、最初に受け取った情報の印象が記憶に残り続ける)
・「確証バイアス」(自分の世界観やアイデンティティに合う情報を好んで受け入れる一方で、不都合な事実を無視する。)
・「エコーチェンバー」(同じ考えの人が互いに共鳴し合う)
・「陰謀論」(複雑で偶発的な出来事の理由を、「背後に黒幕がいる」などの、単純で分かりやすい物語へと変換し、怒りや不安の行き場を与えて、仲間を作る。)
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 そして本書の「エピローグ」に、フェイクニュースへの対応策がまとめてありました。
「(前略)今ある最善の対応策は虚偽のコンテンツに対するプレバンキングだが、「感染」のどの段階であっても介入できるような備えが必要だ。誤情報に対抗するうえで効果の高い多層的な社会防御システムは、予防的な接種を防御の最前線とし、そのすぐ背後に治療的な接種を配して第2の防衛線とするものだろう。これが突破されたら、リアルタイムのファクトチェックを展開して、情報が拡散しだしたらすぐさま虚偽とタグ付けして注意喚起する必要がある。人々がファクトチェックを見逃した場合は(相当数が見逃すかもしれない)、拡散後に最も効果が見込める対策としてデバンキングを行う必要がある。」
 ……なお「プレバンキング」とは、心に効くワクチンを事前に接種する(あらかじめ弱毒化した誤情報とその操作手法を提示し、反駁の筋道を経験させることで、実際に遭遇したときに引っかかりにくくすること)で、「デバンキング」は、誤情報・偽情報のうそを暴く・反証することです。
 著者のサンダー・ヴァン・ダー・リンデンさんたちは、実際にワクチンとして役に立った、次の二つのゲームや動画を作成しています。
1)『バッドニュース』:ソーシャルメディア環境を模した対話ゲームで、自らフェイクニュースを作ることで、フェイクニュースを見抜ける能力を向上させるゲーム
2)『ゴー・バイラル!』ダイレクトメッセージのやりとりを模しているもので、『バッドニュース』の短時間版のようなゲーム。
3)ワクチン動画(「あなたは狙われているかも(感情を揺さぶる警告)」→「意図的な誤情報」→「これを見抜いて反駁させるようにする」)
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 また高度化するフェイクニュースに対し、現実の場面で役立つデバンキングの工夫としては……
「(前略)「真実のサンドイッチ(Truth sandwitch)」と呼ばれる手法は、訂正を行う際に、かえって誤情報だけが印象に残ってしまう事態を避けるための考え方である。まず事実を示し、次に誤情報のどこに問題があるのかを簡潔に伝え、最後にもう一度事実に立ち返る。その流れが、受け手の理解を助け、誤解が定着するのを防ぐ。」
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 さらに本書では、「誤情報の拡散阻止に役立つ11の抗原」(ワクチン)も教えてくれます。これらは各章の最後に詳しく書いてある他、巻末に全項目が簡潔にまとめて書いてありました。参考として、そのうち最初の5項目だけを以下に紹介します。
1)真実の流動性を高める
(主張へのなじみが深まるほど、それを脳が処理しやすくなる。)
2)正確さへのインセンティブを与える
 (人々が政治にではなく正確さにこだわりたくなる環境を作る。)
3)陰謀論を見極めるための手がかりとなる兆候(CONSPIRE)を知る
 (陰謀論には典型的な構造があり、それを知っていれば見抜けるようになる。)
4)誤情報持続効果を最小限に抑える
 (誤情報が脳にとどまる時間が長くなるほど、その影響力が強まる。)
5)ソーシャルメディアにおける誤情報の爆発的な拡散を抑える
 (誤情報が「いいね!」されたり共有されたりする頻度を抑えられれば、その影響力を削ぐことができる。)
※なお、「CONSPIRE」とは、論理の矛盾(C)、疑念が最優先(O)、邪悪な意図(N)、何かがおかしいに違いない(S)、迫害の犠牲者(P)、証拠に対する免疫(I)、偶発的な出来事を結び付けてひとつのストーリーにまとめ上げる再解釈(Re)です。
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『フェイクニュースの免疫学――信じたくなる心理と虚偽の構造』……フェイクニュースがますます巧妙化している現在、対処法だけでなく、それへの免疫をつける方法を教えてくれる本でとても勉強になりました。
 このような心理的ワクチンを利用して、フェイクニュースへの対処法を知る(免疫をつける)ことは、振り込め詐欺などに騙されない能力の向上にもつながると思うので、みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『フェイクニュースの免疫学』