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第1部 本
工作(紙以外)
名建築の見かた図鑑(後藤真吾)
『名建築の見かた図鑑: 様式・思想・パーツでひもとく』2026/1/5
後藤 真吾 (著)

(感想)
「様式」「思想」「パーツ」という3つの視点から、西洋建築を解説してくれる建築鑑賞の入門書。写真やイラストが豊富なので分かりやすく、フルカラーで世界の名建築118か所を解説つきで眺めることが出来ます。主な内容は次の通りです。
【序章 建築をひもとくための基礎知識】
【第1章 [Style]様式でひもとく名建築】
(ギリシア様式/ローマ様式/ビザンチン様式/ロマネスク様式/ゴシック様式/初期ルネサンス様式/盛期ルネサンス様式/マニエリスム/バロック様式/新古典主義)
【第2章 [Philosophy]思想でひもとく名建築】
(アーツ・アンド・クラフツ/アール・ヌーヴォー/アール・デコ/レス・イズ・モア/近代建築5原則/有機的建築/ポスト・モダン/脱構築主義)
【第3章 [Parts]パーツでひもとく名建築】
(ファサード/柱/構造/窓/天井/床/屋根)
【Column】
東西で異なる空間を持つ「初期キリスト教建築」/ヴェルサイユ宮殿に見る、フランス由来の3つの様式/演出された風景と「ピクチャレスク」/モダン・デザインの源流となった学校「バウハウス」/「世界のタンゲ」が表現した日本のモダニズム建築/ひとつに決めない建築「折衷様式」

【序章 建築をひもとくための基礎知識】では、3つの視点について、次のように書いてありました。
・「様式」:建築には時代ごとに特有の「スタイル」がある
・「思想」:「建築とは何か」「人はどう暮らすべきか」への建築家たちの答え
・「部品」:パーツひとつひとつに、時代ごとの技術や美意識、人びとの暮らしが刻まれている
*
【第1章 [Style]様式でひもとく名建築】によると、古典系建築と中世系建築の主な違いは、「古典系建築は「秩序ある理性的な美しさ」を、中世系建築は「神のための神聖さ」を追求した」ことだそうです。
最初に登場するのは、「ギリシア様式」。そのキーワードは、「オーダー」×「石」で、ギリシア様式では、「オーダー」と「石」の組み合わせで調和と力強さが生み出されるそうです。代表的な建物として「パルテノン神殿」が取り上げられ、その外観の写真や、特徴的な柱のイラストとともに解説がありました。
またこの様式の建物として、他に「エレクテイオン」と「オリンピエイオン(ゼウス神殿)」の写真と解説もありました。
第1章と第2章はこのような形式で、さまざまな建築様式が紹介されていきます。どれもとても美しくて、眺めるだけで気持ちが豊かになれそう。しかも世界的に有名な建築物ばかりなので、ちょっぴり世界旅行気分も味わえます。
ちょっと意外だったのが、「バロック様式(キーワードは「楕円」×「うねり」×「彫刻」)」がなぜ始まったかについての解説。16世紀初頭、カトリック教会が売っていた免罪符に反発した神学者ルターが「救いは教会からではなく、信仰そのものから生まれる」と訴え、プロテスタント革命が起こったのですが……
「こうして生まれたのが「プロテスタント(抗議する者たち)」。彼らは「神と人間は直接つながるべきだ」と考え、教会の装飾や儀式を排除し、内面的な信仰を重視するようになります。
それに対して、カトリック教会はまったく異なる道を選びました。信仰を「視覚で揺さぶる」ことで取り戻そうとしたのです。目に見える形で神の存在を示すために、美術や建築を積極的に取り入れ、民衆の心を強く惹きつける手段としました。この新たな表現の流れは、のちに「バロック様式」と呼ばれるようになります。」
……へー、あの素敵な「バロック様式」は、カトリック教会の危機意識から生まれたんですね……。
さらに新しい建築様式として、「新古典主義(キーワードは「古典の復興」×「左右対称」×「シンプルな装飾」)」も生まれてきます。18世紀の啓蒙思想の高まりの中で、神学ではなく「理論的・科学的に正しいと考えられることに従おう」という思想が広がり、古代ギリシア・ローマの価値観が見直されていったのだとか……建築は、その時代の文化や思想と深く関わっているんですね……。
【第2章 [Philosophy]思想でひもとく名建築】では、近代建築を「思想」から読み解いています。
ここでは、伝統からの脱却と機能性の追求を理念としている「モダニズム建築」が主に紹介されているのですが……
「モダニズム建築が生まれた背景には、社会全体の変化が深くかかわっています。産業革命や市民革命を経て、社会の主役は王侯・貴族から市民、そして大衆へと移り変わりました。そうした中で、近代化した都市型社会にふさわしい機能性が求められるようになります。一部の特権階級の「権威の象徴」に注力され続けた建築が、「誰もが使う」視点をもった空間設計へと役割が変化していったのです。」
……そしてこの章で最初に紹介されるのは、「アーツ・アンド・クラフツ(「手仕事」×「自然素材」×「美と実用の融合」)」。これは産業革命による大量生産の影響で、職人の手仕事や美しいデザインが失われつつあったことへの反発から生まれた建築様式だそうです。
その代表作として「レッドハウス(ウィリアム・モリスの自邸)」が取り上げられていたのですが、とても緑も豊かな美しい煉瓦造りの邸宅で、眺めているだけで心が癒されそう……こんな建物に住んでみたいものです。
続く「アール・ヌーヴォー(キーワードは「流れる曲線」×「自然モチーフ」×「鉄・ガラス」)」は、日本人も大好きな様式だと思いますが、これ、実は「日本の美術や工芸」から強い影響を受けているそうです……そうだったんだ……。
そして、この章の最後は「脱構築主義(キーワードは「ズレや歪み」×「緻密な構造」×「大胆なフォルム」)」。それまでの「レス・イズ・モア」や「近代建築5原則」という建築運動で、シンプルで機能的な建築が普及してきたせいか、それを打破する動きとして「建築のルールや常識を崩し、ズレたり歪んだりといった不安定な形によって新たな空間表現を追求」する動きが始まったそうです。それを可能にしたのがコンピュータによる3D設計技術なのだとか。脱構築主義の「ダンシング・ハウス」や「レイ・アンド・マリア・ステイタ・センター」の写真を見ると……この建築、一体どうなってんの?と、本当に驚かされます。だけど……使いやすそうには全く見えない……(苦笑)。
さて、この本は西洋建築の『名建築の見かた図鑑』ですが、「日本で見る世界の建築様式と思想」もあり、次の建築物の写真も紹介されていました。
日本銀行本店本館(古典主義様式)、ニコライ堂(ビザンチン様式)、立教大学本館(ゴシック様式)、大阪市中央公会堂(ルネサンス様式)、東京国立博物館・表慶館(バロック様式)、京都府庁旧本館(新古典主義)、旧松本邸(アール・ヌーヴォー)、東京都庭園美術館(アール・デコ)、国立西洋美術館(近代建築5原則)、つくばセンタービル(ポストモダン)
……これなら実際に見に行くことも出来そうです。
そして最後の【第3章 [Parts]パーツでひもとく名建築】では、ファサード(建物の正面)、柱、構造、窓、天井、床、屋根に注目して、見方のポイントなどが解説されています。ここでも、バラ窓やステンドグラス、ドーム天井など、とても美しい建築物のパーツ写真を解説とともに見ることができました。素晴らしい建築物は、パーツも見事なものですね……。
『名建築の見かた図鑑: 様式・思想・パーツでひもとく』……世界の名建築118か所の写真やイラストを活用して、「様式」「思想」「パーツ」という3つの視点から、建築について解説してくれる本で、とても見応えがありました。フルカラー写真やイラストが美しいので、眺めるだけでもワクワクしてしまいます(しかも勉強になります)。
みなさんも、ぜひ読んで(眺めて)みてください。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『名建築の見かた図鑑』