ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
歴史
ヒストリー・オブ・インフォメーション(ホートン)
『ヒストリー・オブ・インフォメーション』2025/12/15
クリス ホートン (著), 樺山 紘一 (監修, 翻訳), 行武 温 (翻訳)

(感想)
我々はどのように情報を保存し、伝達してきたのか。そして、いかに世界を変えたのか……言語の始まりから洞窟壁画、神話、儀式、書物、印刷、写真、テレビ、インターネット、そしてAI……人類の「情報の歴史」を、鮮やかなグラフィックや豊富なイラストとともに分かりやすく解説してくれる大型の『大人の絵本図鑑(世界の文明史を俯瞰する「イラスト年表ポスター」付き)』で、主な内容は次の通りです。
人類に何が起こったのか?
言語 Language 言語と脳/言語はいつ生まれたのか/儀式/記憶の技術
描画 Drawing 最初の印/最初の絵/最初の都市/最初の文字体系/絵から音へ
文書 Writing 文書の始まり/聖なる書物/古代中国/イスラーム帝国/中世ヨーロッパ/アメリカ大陸
印刷 printing 印刷の発明/15世紀後半のヨーロッパ/宗教改革/ヨーロッパの識字率の向上/ルネサンス
科学 Science 科学革命/データ/知識の分類/科学:世紀を超えた共同作業
ニュースと新聞 News and newspapers ニュース/公共圏の台頭/革命の時代/マスメディア/近代的な報道/写真/知的財産
通信網 Networks 郵便/電信/電 話
放送 Broadcast 無線の始まり/ラジオの時代/テレビ/画面の向こう側へ
偽情報 Disinformation プロパガンダ/第 一次世界大戦/ナチズム/広告/広報活動/現代のプロパガンダ
コンピューター Computers コンピューターの仕組み/理論計算/軍事用コンピューター/業務用コンピューター/パーソナルコンピューター/インターネット/モバイル端末/バイラル化/ビッグデータ/ビッグテック/制御不能/社会の変化/人工知能/意識
索引
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「言語 Language」の章には「音が言葉になるまで」について次のように書いてありました。
「私たちは生まれた瞬間から、口の形に応じて生じるさまざまな音に耳を傾けている。そして生後18カ月までには、母語に含まれるすべての音を聞き分けられるようになる。こうして、音が組み合わさることで言葉が形成され、それが最小単位の意味をもつことを学ぶ。」
……そしてまだ文字が存在しなかった時代には、重大な出来事を伝えるために、人々は大勢を集めて祝宴を開き(儀式を行い)、神話などが口承分化で伝えられました。
紀元前3000年(推定世界人口:1400万人)の三大都市は、ウルク(4万人)、ナガル、エリドクゥで、この世界最大の都市ウルクほどの大規模な人口を管理するためには、会計制度が必要で、そのためには、まず文字がなければなりませんでした。
最初の文字体系はシュメールで生まれた楔型文字(紀元前3500年)で、それまでにすでに最初の計算用具(紀元前7000年頃、シュメール人は小さな粘土製の計算用具「カリクリ」を会計のために使い始める)があったことや、紀元前2100年頃の『ギルガメッシュ叙事詩』は、口承で伝えられていた物語が文字として記録されたもの(現存する最古の文学作品)などのことが紹介されていました。
そして、なるほどなーと思わされたのが、「宗教改革」から「ヨーロッパの識字率の向上」、さらに「ルネサンス」、「科学革命」へと続く一連の流れ。
その発端となる「宗教改革」については……
「教会の腐敗を受け、市民の間には不満が広がっていた。1517年、ドイツの修道士で司祭のマルティン・ルターは教皇への手紙に教会への不満を列挙し、これがヨーロッパ全土に政治的な大混乱を巻き起こした。」
……これが「95か条の議題」という文書で……
「わずか2週間で、この文書はドイツ全土に広まり、2か月後にはヨーロッパ全域に行き渡った。」
……そして宗教改革の後にプロテスタント教会が設立され、人々は自国語で聖書を読むことを推奨されて、ヨーロッパの識字率が向上していったのだとか。
「この頃、技術や工芸に関する知識を教える書物の重要性が高まっていた。ヨーロッパでは技術的な知識が急速に発展し、造船技術は世界最高水準に達した。商人や職人たちは直接指導に頼らなくとも、書物を通じて最新かつ最良の技術を学ぶことができるようになった。多くの分野でこうした学習活動が爆発的に広がると、まもなく、アムステルダム、パリ、ロンドンといった識字率の高い北ヨーロッパの都市が、ローマや地中海沿岸の都市に代わって経済の中心となっていった。」
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さらに「資本主義の起源」ともなったようで……
「家具、道具、織物といった製品のほとんどは地元で生産され、地元で売買されていた。当時の輸送環境は劣悪で、遠距離での物品取引はあまり合理的ではなかった。しかし、本は例外だった。ある書物が人気を博せば、どの都市でも需要が生まれる。書物はヨーロッパ全土で各地の商人同士をつないだ。交易ルートが拡大すると、支払のための金融ネットワークが必要となる。多くの歴史家は、出版業こそが資本主義の台頭のための道を開いたと考えている。」
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そして「ルネサンス」へ……
「1453年、オスマン帝国がコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を征服し、支配下に置いた。このとき、多くの学者が古代の写本とともにコンスタンティノープルを離れた。さらに、印刷の発展による新しい書物への渇望と相まって、ヨーロッパでは「ルネサンス」と呼ばれる一大文化運動が起こった。」
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さらに「科学革命」へと……
「出版は科学の台頭と密接に関係している。16世紀、印刷技術が普及するにつれ、専門家たちは最新かつ最良の知識を求めて書籍を探し始めた。一方、出版社は本として発行するに値する独自の研究や新しい知見を求めていた。こうして「科学」という新たな学問分野が生まれた。」
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ちなみに1600年(推定世界人口:5億6500万人)の三大都市は、北京(70万6000人)、コンスタンティノープル、アーグラとなっています。
そしてこの後は、「ニュースと新聞」や、「写真」、「知的財産」などが普及していき、「通信網」も整備されていきます。
1890~1910年代の「海軍の無線」では……
「当時、米国と英国は世界最大の海軍を擁しており、両国ともマルコーニのシステムに投資した。しかし、最初にこれを実戦で活用したのは日本だった。1905年の日本海海戦で、日本軍は無線通信を駆使してロシア軍を出し抜き、勝利したといわれている。これを受け、主要な海軍国はすぐに無線通信を採用した。ただし、商業無線が普及したのは、もう少しあとのことだった。」
……そうだったんですか。
この後の「コンピューター」も、電信と同じような経過をたどり……
・「初期のコンピューターの多くは軍事目的で開発された。ミサイルの誘導、核兵器の開発、暗号解読のためのテクノロジーに膨大な資金が投じられた。」
・「初期のコンピューターは政府によって開発されたが、やがて産業界もその可能性に気づき始めた。銀行をはじめとする企業は、日々膨大な数の取引を正確に記録する必要がある。そこで、コンピューターと読み取り技術を使うことで、取引やデータをより高速かつ正確に処理できると考えたのだ。」
……そしてパーソナルコンピューター、インターネット、モバイル端末と、どんどん社会に浸透していきます。
2000年(推定世界人口:61億人)の三大都市は、なんと東京都市圏(3000万人)、大阪、メキシコシティとなっています(日本の大都市が世界の二大都市に!)。そして2024年(推定世界人口:81億人)の三大都市は、東京都市圏(3700万人)、デリー、上海だそうです。
ちょっと驚いたのが「好感度の低い大統領」の方が選挙戦で有利になるようになったということで……
「テレビの時代には、好感度が選挙戦において重要な要素であった。しかしSNSの時代では、むしろ嫌われるほうが有利になる場合がある。物議をかもす人物のほうが穏健な人物よりはるかに多くの注目を集めるからだ。2016年の大統領選挙期間中、実業家でリアリティ番組のスターでもあったドナルド・トランプはこの傾向をいち早く見抜いた。トランプはSNS上で対立候補のヒラリー・クリントンを圧倒し、彼の挑発的で怒りに満ちたツイートは、クリントンの4倍のリツイートを記録した。多くのエリート層はトランプを嘲笑したが、それによって彼はますます攻撃的になり、さらに人気を集めた。」
……うーん……この傾向が続くと、社会は悪い方向へ向かってしまうのでしょうか?
それでも本書は「世界はつくり変えられる」とも言っています。
「物事は変えられる。法律も、著作権も、プライバシー保護も、すべて変えることができる。あらゆる法律は、かつて誰かが想像したものであり、想像し直すこともできるのだ。(中略)議論を深めることで、社会は変わってきた。」
……この「情報の歴史」の変遷を見る限り、世界は良い方向へ変わっているようにも感じます。実際に、本書には次のように書いてありました。
「いくつかの挫折はあったものの、世界全体では民主化が進んでいる。」
……ポリティ指標は、全体的に見れば、かなり良い方向に進んでいるそうで、今後も良い方向へ進めていければいいな……。
『ヒストリー・オブ・インフォメーション』……我々はどのように情報を保存し、伝達し、そして、いかに世界を変えたのかについての歴史を紹介してくれる本でした。イラスト多数のフルカラー大型「大人向け絵本」なので、とても読みやすく、隙間時間にパラパラ眺めるだけで、人間の「情報の歴史」の概要がつかめるようになると思います。みなさんも、ぜひ読んで(眺めて)みてください。
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『ヒストリー・オブ・インフォメーション』