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第1部 本
生物・進化
マングース・ヒストリー(亘悠哉)
『マングース・ヒストリー: ひとつの島を守るということ』2026/2/25
亘 悠哉 (著)

(感想)
奄美大島にハブ対策のため導入されたマングースは、どのように根絶に成功したのか? 導入から根絶までの過程を丹念にたどりながら、ひとつの島を守ること、そして生態系を守るとはどういうことかを描いた動物・島・人間の物語で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 「ハブとマングース」の代償
第2章 マングースが引き起こす甚大なインパクト
第3章 マングース対策前夜
第4章 マングース対策実現
第5章 衰退から回復へ
第6章 なぜマングース対策は成功したのか?
第7章 マングース根絶の意義
第8章 ひとつの島を守るということ
おわりに/引用文献
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「はじめに」には、次のように書いてありました。
「二〇二四年九月三日、奄美大島で開かれた環境省の記者会見において、奄美大島からの外来種マングースの根絶が宣言された。これは前例のない規模の外来種対策の成功事例であり、世界的快挙というべき成果であった。」
そして「第4章 マングース対策実現」によると、その経緯の概要は……
「(前略)行政による対策が実施されるまでの一九九二年までは、農家の自衛的なマングース捕獲と奄美哺乳類研究会(あほ研)による調査捕獲が行われてきた。そして、一九九三年から自治体による有害鳥獣捕獲が始まり、二〇〇〇年からは本格的な外来種対策として開始された環境省によるマングース防除事業が、根絶が達成された二〇二四年まで実施された。
この間のマングース個体数は一九九〇年ごろから急増し始め、二〇〇〇年をピークにそれ以降減少し、二〇一八年四月に最後のマングースが捕獲されてから、六年四カ月間の捕獲ゼロの確認期間を経て、二〇二四年九月三日に根絶が宣言された。」
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また「第5章 衰退から回復へ」によると、調査開始時点では……
「(前略)私は二〇〇三年に、奄美中央林道を利用したアマミノクロウサギをはじめ、在来の生物の生息状況の調査を開始した。調査開始時には、アマミノクロウサギだけでなく、希少カエル類なども含め、ほとんどの在来種がマングースの長期定着地域で、まったくといってよいほど観察されないという衝撃的な現状が明らかになった。」
……という状態だったのですが、マングース対策の進捗にともなって在来種が回復してきたことが明らかになったそうです。
ところがその後、回復が鈍化してきて(回復傾向の高止まり)心配されたのですが、もしかしたらこれは「生物の正常な密度である環境収容力」を示していて、むしろ「回復度の評価基準」に使える可能性があるのだとか……。
ところで、そもそもなぜ奄美大島にマングースがいたのかというと……
「(前略)一九五〇年代から一九六〇年代に、ハブとマングースのショーの興行を行う民間人によってマングースが沖縄から持ち込まれ、すでに奄美大島に飼育下ながら存在し、ハブとマングースの決闘ショーに使われていた。一九七九年前後に行為者や意思決定者は明確ではないものの、名瀬市赤崎に約三〇頭のマングースが放獣され繁殖し始めた、ということになる。」
……沖縄には、サトウキビ栽培に被害を引き起こすネズミ類の駆除のためにマングースが導入されたようです……最初は人間によって導入されたんですね。
そして「第6章 なぜマングース対策は成功したのか?」によると、成功の原動力は、行政、研究者・市民団体、住民の三つのサイクルが、関係者の連携のもと連動して機能したことで……
「このなかでも、とくに奄美大島のマングース対策における特徴は、調査・研究が充実し、科学的根拠をもとに対策の方向性を決定していくEBPM(Evidence Based Policy Making)を可能とした点があげられる。(中略)マングース事業が中止に追い込まれる二度の危機(天然記念物の混獲の発生と事業仕分け)においても、在来種の回復という対策の正当性を毅然と示すことができ、事業の存続につながった。(中略)行政の施策に、捕獲従事者や研究者、市民団体、住民が、それぞれ共通の目標のもと主体的に参画することで、三つのサイクルが促進された。このかたちができたことが、奄美大島のマングース対策が根絶までに至った原動力となったのだ。
また、そもそも奄美大島には、対策をするのに有利となる条件がそろっていたこともふまえておくべきであろう。マングースの罠を島中に設置することが可能となったのは、島の八五パーセントを占める森林域において、さまざまな土地所有形態があるなかで地元住民の理解と協力があったからこそである。(中略)
そして、これはもっとも重要なことかもしれない。関係者、関係機関全員が最後は「根絶は可能」と信じて、同じ目標をみなが目指していったことである。」
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……このようにして最終的には根絶にまで至ったのですが、対策はずっと同じではありませんでした。
最初は「生け捕り罠」を使い、その後「捕殺罠(マングース以外が入らないよう工夫したもの)」に変えて効率を上げ、マングースの捕獲個体数は順調に減少していったのですが、しだいに捕獲効率が低下していったことで、今度は「予算打ち切り」との戦いも始まってしまったのです。
そこで対策の主軸を物量作戦から情報戦へ変えて、自動撮影カメラや糞の目撃情報をもとに「残存個体情報のあったエリアで集中捕獲&マングース探索犬の導入」を行いました。
するとさらに捕獲数が低下して、人や犬が入り込めないほどの厳しい地形エリアに残存する状態に。今度は「毒餌の使用」へ再び対策方法を変更して、ついに捕獲&目撃がなくなったのです(二〇一八年に一頭、二〇一九年にはゼロに)。
……対策は一筋縄ではいかないものですね……。しかも著者の亘さんも、調査などの途中で、ブユやマダニ、さらにはアシナガバチ、ハブに刺されたり咬まれたりもしています(涙)。
そして「第7章 マングース根絶の意義」には……
「(前略)奄美大島においてマングースが引き起こした甚大なインパクトにより、私たち人間の行為がこのかけがえのない生物多様性を一瞬で破壊させうる力をもっていることを認識させられることになった。
一方で、奄美大島のマングース対策は、アマミノクロウサギなど島の生きものたちの絶滅を回避し、さらにその分布域や個体数を大幅に回復させた。衰退期から回復へとまさに生態系の激動を私たちは目の当たりにしているのだ。私たちは生態系を壊すだけでなく、生態系を守り、回復させることができる力も同時に持ち合わせているのである。自身の持つ力を自覚し、どのように行使していけばよいのか、それをしっかり考える責任が私たちにはある。」
……確かにその通りだと思います。
その一方で、マングースなどの外来種を根絶させなければならないのかについては、ちょっと疑問も感じてしまいました。私自身、かつては「在来種を守るために、外来種はできればいなくなるべき」と単純に考えていたのですが、『外来種は本当に有害化か?』(フレッド・ピアス)という本を読んだことで、「長い時間軸でとらえると在来種などいない」こと、「自然はたえず流動しており、不変の生態系などほとんど存在しない」ことに気づきました。そう考えると、外来種からの被害を抑えることは必要だとは思いますが、やはり「費用対効果」を考慮して、ある程度で対策を打ち切る方が現実的なのではないかとも考えさせられました。
それでもこの奄美大島のマングース対策は、奄美大島という大きな島(なんと琵琶湖や東京二十三区よりも面積が大きいそうです)で、ひとつの外来種を根絶させたという事例として、その経緯が今後の自然保護などに、とても参考になる貴重な実験(成果)になったと思います。
またAMB(奄美マングースバスターズ)のみなさんが、マングース対策の完了で職がなくなる未来を分かっていながら、最後まで手を緩めることなく作業を進め、根絶宣言終了後には、山に残された約三万個の罠の撤去作業まで丁寧に行ってくれたことに、感謝の気持ちを抱かずにはいられません。
『マングース・ヒストリー: ひとつの島を守るということ』……生態系を守るための貴重な事例について詳しく学べるとともに、いろいろなことを考えさせてくれる本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『マングース・ヒストリー』