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第1部 本
生物・進化
生きものは遊んで進化する(トゥーミー)
『生きものは遊んで進化する』2026/2/26
デイヴィッド・トゥーミー (著), 梅田 智世 (翻訳)

(感想)
スノーボードをするカラス、漂うボトルを操るタコ、ボールを転がすマルハナバチ、種をまたいで遊ぶイヌとウマ……自然界には、生きるのに直接役立ちそうもない「遊び」が満ちています……いったいなぜ? 私たちの心と進化の秘密に迫っている本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
いくつもの謎/遊びの特徴は自然選択の特徴である
第1章 ボールを弾ませるタコ――遊びとは何か?
第2章 カラハリ・ミーアキャット・プロジェクト――遊びをめぐる仮説
第3章 でんぐり返しをする子ブタと宙返りをするサル――不測の事態に備えたトレーニング
第4章 「ちょっとラットをくすぐってみよう」――遊びの神経科学
第5章 礼儀正しいイヌ――協力のための競争、競争のための協力
第6章 モリツグミの歌、セグロカモメのお手玉、ニワシドリのアート――遊びは文化の芽
第7章 ミームとドリーム――夢は体のない遊び
第8章 遊びの進化
第9章 独創的なゴリラ――自然選択における遊びの驚くべき役割
第10章 遊ぶ動物――動物であるとはどのような感じか
エピローグ 遊び、生命、森羅万象
謝辞
文献表
註
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私たち人間とだけでなく仲間たちとも遊ぶイヌをよく見るように、動物界にも「遊び」がたくさんあります。でも動物の「遊び」はこれまであまり研究されてきませんでした。その理由は、動物の「遊び」の定義が難しく、他の行動との区別もしにくいだけでなく、観察するのも難しい(遊びをするたいていの動物は、一日に数分しか遊ばない)から……確かに、そうですね……。
それでも、科学的に「遊んでいる」と断定はできなくても、どう見ても「遊んでいる」ように見える動物の行動はたくさんあるようで、本書ではその具体例を紹介してくれるとともに、それをなんとか科学的に明らかにできないか奮闘してきた科学者たちの研究についても紹介してくれます。
これまで「遊び」をめぐる仮説はたくさん出されてきましたが、その一部を紹介すると……
1)トレーニング仮説(練習仮説):生存や生殖に必要とされるスキルの練習
2)社会的絆仮説:仲間と仲良くなる
3)運動トレーニング仮説:動物の結合組織、神経系、心血管系を鍛える
4)感受期仮説:神経系と筋肉組織が遊びによって恒久的に変化する
……など色々ありますが……
「動物の遊びをめぐる三〇あまりの仮説のいくつかは、ほとんど意見の域を出ていない。その手の仮説では、科学者が動物のどんな行動を探せばいいのか、その予測が立てられていない。」
……うーん、そうなんですか。
それでも「第4章 「ちょっとラットをくすぐってみよう」――遊びの神経科学」によると……
「(前略)ラットの場合、遊びには少なくとも五つの適応上の利点がある。具体的にいうなら、おおいに必要な交尾の練習、ストレスの緩和、軋轢の緩和、不測の事態に備えたトレーニング、そして社会的能力の発達と強化だ。」
……この章では、新生児ラットの脳の一部を除去することで、その部分の担っている機能を調べる研究も紹介されていて、次のようなことが分かってきているようです。
・「(前略)眼窩前頭前皮質と内側前頭前皮質に損傷を加えると、幼若期に遊びを許されなかったラットと同じように社会的能力が損なわれることだ。このラットたちから、遊びと大脳皮質領域の発達のあいだに原因と結果が存在する証拠が得られた。」
・「(前略)闘争遊びが眼窩前頭前皮質と内側前頭前皮質のニューロンを変化させ、それによってラットは遊び相手候補の社会的地位を認識し、闘争遊びに適した戦術と本気の闘争に適した戦術を区別できるようになる。さらに、このふたつの皮質領域はどちらも偏桃体の働きを抑制する。この二領域の介入がないと、偏桃体のはたらきにより、怖がりすぎてまったく遊ばないラットか、でなければ攻撃的すぎて相手が遊ぶのを怖がるラットになってしまう可能性がある。」
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また「第9章 独創的なゴリラ――自然選択における遊びの驚くべき役割」では、学習能力の高い遺伝形質を受け継いだ個体は、生存と生殖の可能性が高くなることや、遊び行動をしている時の方が、実益行動(狩りや採集など)をしている時よりも、邪魔者や障害物を受け入れやすいので、特異で独創的な行動を起こす可能性がはるかに高いことが書いてありました。
「遊びはほかのどの行動にもまして独創的なイノベーションを誘発する。そして数世代を経るうちに、そうしたイノベーションをより速く、より容易に学習することを可能にする遺伝形質が選択されていく。(中略)進化は遊びを生む。そして一部のケースでは遊びが、というよりも遊びを通じて最初のイノベーションを生んだ動物が、その動物みずからの進化の道筋を決めるのである。」
……自分自身の経験からも、「遊び」のほうが、「仕事や学習」よりも自由度が高いことは明らかだと思います。しかもリラックスしている(時間やエネルギーに余裕がある)状態だから、より「独創性」「創造性」と結びつきやすいかも。
そして「エピローグ 遊び、生命、森羅万象」には……
「(前略)遊びとは、自然選択のようなものである。遊びと自然選択はどちらも目的がなく、継続的で際限がなく、どの時点をとっても暫定的だ。短期的にはどちらもコストがかさみ、浪費と言ってもいいほどむだが多い。どちらも実験的であり、無益だったり有害だったりする結果を多く生むが、時が経つうちに有益で必要だと証明される結果もわずかながら生み出す。(中略)
自然選択と遊びに共通する特徴がこれほど多いことからすれば、生命はごく本質的な意味において遊びに満ちたものであるという主張も、それなりに正当化できるのではないだろうか。」
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『生きものは遊んで進化する』……動物の「遊び」研究はとても難しい側面がありますが、私たち人間も含め、「進化」に大きく関わっているのかもしれないことを深く考えさせてくれる本でした。とても興味深い事例をたくさん読むことが出来ますので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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『生きものは遊んで進化する』