ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

絵本づくり

シュルヴィッツの絵本論

『シュルヴィッツの絵本論: 絵本づくりの実践ノウハウ』2025/9/17
ユリ シュルヴィッツ (著), さくま ゆみこ (翻訳)


(感想)
 コールデコット賞受賞作家のシュルヴィッツさんが、優れたイラストレーションの考え方、絵本のプラニング方法、よい本を生みだすために知っておくべき本の仕組みや機能、テクニックの磨き方など、絵本づくりのすべてを惜しみなく伝授してくれる本で、絵本作家を志す人に40年読み継がれる実践的な指南書が、初邦訳されたものです。
「訳者あとがき」によると、原書は1985年に出されたのですが、画像の許諾を取るなどの困難さから、なかなか邦訳が出されなかったようです(本書には、絵コンテ、ダミー、原画など約500点の図版が掲載されています)。そういう意味では少し古い本ですが、内容はとても総合的・具体的で、参考になる部分が本当にたくさんありました。
 個人的に最も参考になったのは、「第3章 物語――アクションの完結」。そのうちのごく一部を抜粋紹介すると、次のような感じです。
・「一般的にいえば、どのアクションにもそれなりの目標が内包されています。アクションが完結するためには、この目標が達成される必要があります。」
・「終わりのないアクションは、どこかへ行きつくことがなく、完結しません。(中略)
子どもの本には、はっきりした結末が必要です。」
・「大人のための物語では、アクションの完了を暗示すれば十分かもしれませんが、子どものための物語ではアクションを明確に完了させなければなりません。大人は、物語が終わったあとでアクションの完結を頭の中で想像することもできますが、小さな子どもにはそれができません。小さな子どもは、たいてい物語を全身全霊で受け入れて、それに疑問をもったり勝手に変えたりはしません。だからこそ作家がアクションを完了させておかなければならないのです。
 アクションが完了しないのは、まるで世界のバランスが崩れたままのような不安な状態です。アクションが完了してバランスが回復されないかぎり、子どもは日々の暮らしをおだやかに再開することができません。」
・「(前略)大事なのは、結末を成功させるためには、いったん登場した人物や事物を途中で忘れないという点です。(中略)
 最後まであらゆるものを考慮し、糸のほつれや迷子が出ないようにしておかないと、よい結末は得られません。」
   *
 ……絵本は子ども向けのことが多いので、「アクションを完了」させることが大事なんですね。
 また「よい物語には、ユニークでリアルな内容を伝えるディテールが不可欠」だそうで……
・「(前略)ファンタジーが説得力をもつためには、因果関係についての緻密な論理が必要になります。それがないと、ゆきあたりばったりの、ありそうもない物語になってしまい、読者は興味をもちません。」
 ……さらに……
・「(前略)ファンタジーであろうと非現実的な話であろうと、物語の本質やそこに潜む哲学は、適切なものでなければなりません。読者は、ディテールの語られ方に魅力を感じるいっぽうで、しばしばこうした哲学や、物語がもつ意味からも満足を得ます。読者は物語の哲学を完全には意識しないかもしれませんが、そうした哲学は意識下のレベルで生きていた、物語が終わっても読者のもとにとどまります。」
・「(前略)子どものためのすぐれた物語は、人生や世界の真実と同様に読者をも思いやり、子どもの成長を助けるためになんらかのポジティヴなものを提供しています。人生や世界がどのようなものであるかを示したり、どのように問題が解決されたかを示したり、教えたり、なぐさめたり、強化したり、元気づけたり、楽しませたりします。(中略)
 物語はアクションの完結をもって終わったとしても、すべてのアクションがそこで終わるわけではありません。物語が終わったあとも、登場人物がうまくやっていくだろうと子どもの読者が信じることができれば、それはよい物語といえるでしょう。」
   *
 ……よい絵本を作るために、作り手はこんなことを考えているんですね……。
 またイラストの描き方や、本の構成などについても、実際の事例やイラストを使ってとても具体的で実践的な解説がありました。ここでは「物語」について詳しく紹介しましたが、本書の内容としては「絵を描く」ことの方に主眼があります。次のようにも書いてありました。
・「(前略)真の絵本の場合、物語はおもに、あるいは全面的に絵を通して語られます。言葉が用いられているにしても、補助的な役割を果たすにすぎません。絵本では、絵が示せないものだけを言葉が語るのです。」
 ……絵コンテや原画は、その解説とともに、ぜひ「本」で読んでください。
『シュルヴィッツの絵本論: 絵本づくりの実践ノウハウ』……絵本作家を志す人に40年読み継がれてきた、まさに実践的な指南書です(著作一覧、参考図書リスト、タイトル索引、人名索引、事項索引付き)。とても参考になりますので、絵本作りに関係している方はもちろん、物語を作っている方や、本がとても好きな方にも、ぜひ読んで欲しいと思います☆

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。


『シュルヴィッツの絵本論』