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第1部 本
脳&心理&人工知能
意識はどこからやってくるのか(信原幸弘)
『意識はどこからやってくるのか (ハヤカワ新書)』2025/2/19
信原 幸弘 (著), 渡辺 正峰 (著)

(感想)
細胞の塊にすぎない脳に、なぜ「私」という意識が生じるのか?……人類が古来、魅入られてきたこの問いが、ブレインテックの急速な進展によって新たなフェーズを迎えています。意識を機械に移す「マインドアップローディング」はどのように実現可能なのか? アップロードの前後で、同じ自分といえるのか? 避死の技術を手に入れたとき、それでも幸福に「生き切る」ことができるのか? ……「心の哲学」の信原さんと、マインドアップローディングを目指す神経科学者の渡辺さんが、意識という「究極問題」に挑んでいる対話録です。
さて「マインドアップローディング」は次の方法で行われるそうです。
1)死後の脳を解析してニューロンの配線をコンピュータで再構築
2)生成モデルに基づき学習をかける
3)脳梁を切断して分離脳を作り、脳梁部分にBMI(脳を外部デバイスに電気的に接続する装置)を埋め込む
4)BMIを介して生体の脳半球と機械の脳半球をそれぞれつなぐ
5)二つの独立した意識が生まれる
6)一体化した意識を利用して記憶を転送する
7)生体脳が機能停止したら、機械同士を接続
8)マインドアップローディング完了(アバターを使って物理空間で暮らす、またはデジタル空間で暮らす)
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実は、脳梁を分離した脳は、二つの意識を持つことが分かっています。この左右の脳は緊密に連携をとっていますが、視覚に関しては左右の情報処理が途中まで独立しているために、片方の脳だけに視覚情報を送り込むことが可能になるのです。だから、生体脳半球と機械脳半球を接続して、生体脳半球の持ち主が機械脳の視野も含めて見えてしまったら、その時には機械脳にも意識が宿り、それが生体脳の持ち主の意識と一体したと結論せざるを得ないのだとか……なるほど。
そしてこの「マインドアップローディング」について、渡辺さんは次のようにも言っています。
渡辺「脳が生成モデルによって意識を生み出しているということは、機械脳も生成モデルに沿って学習をかければいいわけです。まずは視覚に限定して考えると、死後脳の読み取りによってコンピュータ内に再現された未熟な機械脳に視覚刺激を与え、低次から高次へ情報を統合させ、その統合した情報を高次から低次へと書き出していきます。CGであれば様々な情報を計算した結果を画像や動画に書き出しますが、機械脳の計算処理結果も書き出してみることで、その出力結果がもともとの視覚情報とどのくらいかけ離れているのかを知ることができます。
そして次に、この視覚情報と出力結果とが一致するように、情報経路の重みづけを調整します。これが、ここでいう学習にあたります。コンピュータが自ら調節していけば、人間のやることはさまざまな視覚刺激を与え続けることだけです。
学習を繰り返し、入力と出力が一致するようになれば、機械脳の中のシナプスの強度にあたる重みづけはヒトの脳の働きにかなり近くなっているはずです。」
信原「そうなれば、意識もそこに湧いているだろうといことですね。」
渡辺「はい、そう考えています。(後略)」
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このBMI技術は、能力増強にも使えるようで……
渡辺「BMI技術の安全性が担保され、健常者の能力増強などに応用されるようになると、一部の天才的な人に見られる先天的な能力を誰でも使えるようになるかもしれません。(後略)」
信原「(前略)BMI技術はスマホどころではなく、はるかに過激な高速コミュニケーションや記憶・想起を可能にします。それによって人間のコミュニケーションや記憶の能力は飛躍的に高まるでしょう。もはや一人ひとりがある程度は独立した思考主体だというあり方ではなくなり、集団的に思考を行う「集団心」というあり方になるかもしれません。そのようなエンハンスされたあり方を良しとする社会になれば、価値観が大きく変容することは明らかでしょう。(後略)」
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さらにLLM(注:大規模言語モデル)は意識を持つようになるのかとか、人格を決めるのは身体か記憶かとか、興味深い考察がどんどん展開されていき、「不死」へと進んでいきます。
信原「(前略)生身の身体なら、そんなふうに生ききったのち、命はおのずと尽きるはずですが、マインドアップローディングをしてしまうと、生ききったとしても命が尽きないようなあり方にされてしまう。そうすると、生きる意味が失われてしまうのではないでしょうか?」
渡辺「(前略)死をどうするか、もしくはどうあるべきかを考える必要が出てきます。(後略)」
渡辺「(前略)すべての宗教は、「避けられない死」という土台の上に立脚しています。マインドアップローディングが実現したら、その土台がひっくり返るわけです。宗教というものが、根本から変わってしまうような気がします。」
……確かに「マインドアップローディング」は、不死のようなものですよね……。
信原「もし、死の恐怖が人生を善いものに変えるのなら、アップロード後の世界にも死を設定する必要があるのかもしれませんね。人生の意味という価値が失われてもなお、不死の方がよいといえるような「不死の価値」を見いだせたら、不死は望ましいといえるかもしれません。」
……また「マインドアップローディング」には、「意識の統合の可能性」もあるようで……
信原「デジタル世界ならではの可能性として、各人の意識を統合した超意識体のようなものを構成して、個人としての生はもう、ある意味でなくなり、超意識体の一部として個人が存在する、そんな共同体を作るということも考えられます。」
渡辺「(前略)アップロード社会では意識の統合もコミュニケーション手段として用いることができるとなれば、現在とは異なる社会が成立するかもしれませんね。」
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『意識はどこからやってくるのか』……意識を機械に移す「マインドアップローディング」を通して「意識」について深く考察している本で、とても興味津々でした。
「マインドアップローディング」が実現できるようになるのは、まだ遠い未来のようですが、万が一実現されることになったら、人間の社会がまったく違っていくのかもしれないことにも気づかされ、いろんな意味で知的好奇心をビシビシ刺激されました。
みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『意識はどこからやってくるのか』