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第1部 本
脳&心理&人工知能
意識の不思議(渡辺正峰)
『意識の不思議 (ちくまプリマー新書 494)』2025/6/11
渡辺 正峰 (著)

(感想)
私たちの身体や脳は電気仕掛けで動いています。では、私たちが感じているこの「意識」はどのように生じるのでしょうか? ……意識の発生するメカニズムから、意識を機械に移植するという脳神経科学の最先端までを、分かりやすく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
第一章 意識について三つの不思議
第二章 脳を研究する方法
第三章 脳と機械はどう違うのか
第四章 機械脳の作り方
第五章 機械の中の意識を確かめる
第六章 意識を機械にアップロードする
第七章 デジタル世界で生きる未来
*
「はじめに」には次のように書いてありました。
「意識を機械に移して、人間の寿命が尽きたあとも意識が存在し続けられる――つまり私が生き続けられるようにする。SF映画のような話だが、私が十年以上前から取り組んでいる研究が成功すれば、そんなことも可能になる。
意識を機械に移植して、機械の中で生きることができたなら、さまざまな可能性が広がる。バーチャル世界で移植者同士の社会を築いてもいいし、コンピュータを介して生身の世界の人とコミュニケーションをとることもできるだろう。必要があれば、ロボットのような機械の身体を作って、それを動かしてもいい。機械の身体を得て、生き続けられるのだ。」
……かなり「ぶっ飛んだ」研究のようですが、その実現方法を聞くと、少なくとも一部は可能かもしれないと思ってしまいました(笑)。
「第一章 意識について三つの不思議」によると、意識というのは……
・「(前略)脳の細胞たちの情報処理というのは単なる電気信号であり、化学物質のやりとりだ。それなのに、そこに「見えている」という感覚が湧く。それらの感覚こそが、最も素朴で根源的な意識である。」
・「(前略)物を見て、聞いて、感じている、それが意識だ。もし意識がなければ、そのような情報はただ素通りしていくだけになる。」
……意識があるから、感情があり思考もできるのです。
そしてとても興味津々だったのが、「第四章 機械脳の作り方」。
まず人間の脳は……
「(前略)脳は、修正された仮想世界を使って、これまで経験してきた記憶を頼りに、生き残るためにはどうすれば最善なのかをシミュレーションする。そのために、高次から低次へ向かうトップダウンの経路を使っていると考えるのが、脳の生成モデルである。」
そして人間の脳を機械脳に移植するために、「死後脳を読み取って回線を再現」します。
「(前略)持ち主が死んだ後の脳は、特別な操作をしないかぎり電気信号が流れることはないが、ニューロンの配線は死んだときのまま残されている。その配線を読み取ってコンピュータ上に再現すれば、配線は再現できる。実際に、その試みは動物の脳で行われている。」
……その手順としては
1)頭蓋骨から脳を取り出して、その脳を冷凍もしくは特殊な液体を使って固定する。
2)固定した脳を薄切りにする(神経細胞の配線の断面)
3)断面をスキャンする
4)コンピュータで輪切りの脳をつなげていく(→配線が明らかになる)
……のようですが、実際にショウジョウバエで研究されているようで、二〇二〇年には、脳の主な部分を網羅したデータが公開され、二〇二三年にショウジョウバエの脳のすべてのコネクトーム(脳全体の神経細胞の配線の様子をすべて描き出したもの)が解明されたそうです(マジか……)。
さらに「第五章 機械の中の意識を確かめる」では、なんと「脳梁を切って半分になった脳を、機械脳の半分と脳梁(BMI:ブレイン・マシン・インターフェイス)でつなぐ」という方法(!)が書いてありました。
「この接続テストで重要なのは、生身の脳半球と機械の脳半球のそれぞれの情報処理が相互作用することで、それらの意識が一体化することだ。相互作用するためには、機械脳とヒトの脳の情報処理がある程度似ている必要がある。機械の脳がヒトの脳にそっくりの情報処理をして、ヒトの意識に似たものを生み出すからこそ、互いの交流が可能になる。」
……さらに、これを使えば「意識のアップロード」も出来るようになるのかもしれません。
「第六章 意識を機械にアップロードする」では、意識を機械にアップロードする方法として……
1)ヒトの死後脳から読み取った情報をもとに、脳に近い回路を持つ機械脳を作る。
2)1の方法では細かいシナプスの状態までは読み取れないので、あとは学習させて基本的な働きができる機械脳に育て上げる。
3)機械の中に意識が湧いているかどうかを確かめるために、脳梁を切断してBMIを埋め込み、機械脳半球とヒト脳半球を接続し、機械に湧いた意識と自分の意識を一体化する。
4)機械脳の意識と自分の意識が一体化したことを利用して、記憶を転送していく。
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……そして記憶の転送については、例えば「脳梁を介して機械脳につながった状態で、十歳の誕生日の晩ごはんを思い出す」などを行います。
「生体脳と機械脳は脳梁を介して連絡を取り合っている。そのため、機械脳側の編集長にも十歳の誕生日の晩ごはんの思い出の情報が送られるはずだ。
機械脳にしてみれば、全く身に覚えのないシンボリックな表象が隣の脳からやってきたわけだ。だが、どこから来たイメージだろうが、機械脳は気にしない。自分のやるべきことを淡々と行う。
機械脳がここでやるべきことは何かというと、高次の層で作られたシンボリックな表象を、上から下へ、トップダウンで展開して、低次の層に再現させる作業である。
その再現過程で、機械脳の神経回路網は活動する。十歳の誕生日の晩ごはんを体験しているときとよく似た活動を行うことになる。十歳だったあなたがハンバーグを食べながら、その記憶を海馬で形成していったように、機械脳もその神経活動をもとに機械脳の海馬を介して記憶を形成する。(中略)
これが機械脳に記憶を移植する仕組みである。」
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……うーん、なるほど……機械脳を移植した人間は、理論上「死」がなくなるので、このような自然な方法で、じっくり時間をかけて、過去の記憶も「機械脳」に馴染ませていけるのでしょう。
最終章の「第七章 デジタル世界で生きる未来」では、メタバースなどで環境のデジタル化が進んだ社会で、デジタル化した身体や脳で生きる未来についても考察されていました。……SFや「トンデモ科学」のようでもありますが(苦笑)、少なくとも一部は実行可能なようだし、この研究はALSなどの障害の治療にも、今後の人工知能研究を進める上でも役に立ちそうな気がします。
『意識の不思議 (ちくまプリマー新書 494)』……意識や機械脳についての研究を紹介してくれる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『意識の不思議』