ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
生物・進化
適者はいかに作られる(キャロル)
『適者はいかに作られる――DNAで読み解く進化の仕組み』2025/12/12
ショーン・B・キャロル (原著), 渡辺政隆 (翻訳)

(感想)
南氷洋でも凍らない無血魚、熱泉に生息するアーキア(古細菌)、三色型色覚を持ち反芻するサル、生きた化石シーラカンス、単純な眼から複雑な眼まで、さまざまな眼の進化……それらの適応はみなDNAに残されている進化の痕跡で説明できると、進化発生生物学の第一人者のキャロルさんが語っている本で、主な内容は次の通りです。
写真・図版多数、カラー口絵8頁。
目 次
はじめに 合理的な疑いの余地なし
1 序説――ブーベ島の無血魚
2 進化の計算――偶然、淘汰、時間
3 不死の遺伝子――永遠に現役
4 古きものから新しきものを作る
5 遺伝子化石――昔日の生活を物語る破片
6 デジャビュ――進化はなぜどのようにして繰り返すのか
7 われらが血と肉――軍拡競争、人種、自然淘汰
8 複雑さの形成と進化
9 見ることと信じること
10 ワイオミングのヤシの木
謝辞
訳者あとがき
参考文献と読書案内
索引
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「1 序説」によると……
・「今では、進化の各中間段階は、DNAに記録されていることがわかっている。」
・「生命史研究の多くは、伝統的な化石という記録に焦点を合わせている。しかし生物学者は、DNAの中に新しいタイプの化石記録、すなわち遺伝子化石を見つけてきた。堆積岩が絶滅した古代生物の記録を含んでいるように、すべての種のDNAには、もはや使われてはおらず、さまざまなかたちで壊れている遺伝子が、ときには何百個も含まれている。」
……DNAが進化についても、とても多くのことを教えてくれるそうです。
そして「2 進化の計算」によると、「われわれはみな突然変異体」なのですが……
「(前略)なかには有害な変異もあるが、全部がそうだというわけではないのだ。誰もがほぼ健康なのは、それら一七五個の突然変異が、(1)意味のある情報を担っていないDNAの部位で起きているか、(2)一個の遺伝子の中か近くで起こった突然変異だがその遺伝子の機能には影響を起こしていないか、(3)大半の遺伝子が二個のコピーを別々にもっているおかげで補填されているか、(4)耐えられる範囲の変異内での効果を生じる程度の影響しかないからである。」
……私たちの体内でも多くの突然変異が起きているようですが、そういう理由で健康なままでいられるんですね。そして……
「自然淘汰が作用するのは、現時点のその環境内においてであるということも認識してほしい。生物種がもはや必要としないもの、活用していないものに対して自然淘汰が作用することはない。まだ必要としていないものに対しても作用することはない。つまり、適者とは相対的で一時的なもので、永遠に続く絶対的な状態ではないのだ。」
*
そして「3 不死の遺伝子」では、真核生物とアーキアに同じDNAコードがたくさんあることから……「つまり20億年以上前の太古のDNA配列の一部は、何度となく末梢の危機をもたらしえた突然変異の嵐に耐え、膨大な時間を生き抜いた」……不死の遺伝子なのだとか。
・「異なる生物種が持つ不死の遺伝子がコードしているタンパク質はよく似ているものの、詳しく見ると、同じ遺伝子を構成している塩基配列は、生成されているタンパク質のアミノ酸配列ほどは似ていないことがわかる。そんな違いが存在するのは、遺伝コードに「冗長性」があるからである。」
・「(前略)純化淘汰――タンパク質の機能を損なう変化を除去することでタンパク質のアミノ酸配列の「純粋性」を維持する淘汰――と呼ばれるタイプの自然淘汰がはたらいていることの明白な証拠なのである。」
……「大事な遺伝子」はこうして守られている(不死でいられる)ようです。
その一方で、機能を失ってはたらかなくなっている遺伝子が、「遺伝子化石」として残ってもいるようで、「5 遺伝子化石」には、過去のシーラカンスにはあったのに現在のシーラカンスでは壊れている遺伝子があることや、ヒトでは、嗅覚受容体遺伝子の半数が化石化していることが判明していることなどが紹介されていました。
「(前略)DNA中の情報に関して遺伝子化石が教える正規の規則は、「使うか捨てるか」である。」
……機能を失った遺伝子の方は、さらなる突然変異や欠失を蓄積していき、どんどん破壊されていくようです。
「6 デジャビュ」では、収斂進化について……
・「(前略)ペンギン、アザラシ、イルカのひれはみな、遊泳という同じ目的を担っている。しかしどの動物グループも、ひれのなかった異なる祖先から進化した種類である。翼竜、鳥、蝙蝠の翼も、収斂進化の例である。(中略)収斂進化があちこちで繰り返されているということは、似たような条件さえそろえば、その条件に適応するために生物種は似た「解決法」を見つけるケースが多いということだ。」
・「(前略)オプシンタンパク質で正確に繰り返されている進化と、他のタンパク質で繰り返されている少し異なる進化を比べると、進化で解決すべき「問題」(適応)には複数の解決法がある場合と、一通りか少数の解決法しかない場合があることがわかる。」
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また「8 複雑さの形成と進化」では、広範囲の動物で眼の発生に関与しているPax-6遺伝子が、哺乳類の脳と鼻の構築にも関与していることが書いてあり……
「(前略)遺伝子やゲノムの解読から、大半の動物は体作りと器官作りに関してよく似た遺伝子からなるツールキットを備えていることもわかっている。」
……これは、すごく大事なツールキットですね!
・「(前略)ツールキットタンパク質を変更するような突然変異は破滅をもたらす場合が多く、後代に遺伝する可能性はない。こういう背景により、形態進化の起こり方としては、ツールキットタンパク質そのものを変えるよりもツールキットタンパク質の使い方を変える突然変異による場合のほうが多い。」
・「(前略)ツールキット遺伝子はたくさんのスイッチを持つことが可能で、それぞれの遺伝子が使われる体の部位を調節する。スイッチ機能は、その塩基配列によって決まっていて、配列が変わればその機能も変わりうる。これらのスイッチの大きな特徴は、一つのスイッチが変わっても別のスイッチの機能には影響を及ぼさないことである。これは、形態の進化を考える上で、とても重要な意味を持つ。一つのツールキット遺伝子の用法を一つの構造に微調整するにあたり、他の構造にはいかなる影響も及ぼさずにすむということだ。」
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『適者はいかに作られる――DNAで読み解く進化の仕組み』……進化発生生物学の観点から生物進化とDNAについて詳しく語ってくれる本で、とても面白く、また勉強にもなりました。
冒頭には8ページのカラー写真があり、南氷洋でも凍らない無血魚(なんと進化の過程で赤血球を失っているのです)など興味深い生物の写真を多数見ることができます。
みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『適者はいかに作られる』