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第1部 本

生物・進化

植物のすごい繁殖戦略(保谷彰彦)

『植物のすごい繁殖戦略: 花のしくみはこんなに違う!』2025/11/27
保谷 彰彦 (著)


(感想)
 花を咲かせない? 種子をつくらない? 驚きと不思議に満ちた植物のすごい繁殖戦略を、さまざまな植物の事例とともに紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
【1】花の旅のはじまりに
いろいろな花/花の誕生/花のつくりの基本/花が咲くのは何のため?/受粉から受精に至るプロセス/送粉のしくみ/送粉者/送粉者を誘い寄せる花/自家受粉と他家受粉/送粉シンドローム
【2】ほかの花と結ばれるしくみ
自他を見分ける/タイミングをずらして交わらない/ 離れていれば交わらない/異なるタイプとつながる/ 花の左右が違う/究極の戦略は広がらない
【3】虫いらずのしくみ
目立たなくていい/咲かずに実を結ぶ/来るものは拒まず、来なくても構わず/イネを知る/じつは二刀流も多い
【4】クローンで殖えるしくみ
クローンの種子で殖える/体の一部で殖える
【5】花蜜をめぐるしくみ
ただ甘いだけじゃない/花は送粉者だけのものではない/花蜜のありかへ導く/穴をあけて盗む/花蜜に毒を混ぜる
【6】花蜜以外で誘うしくみ
胸部の筋肉がふるえる/植物だって熱をだす/子房を食べてもらう見返りに/あるある詐欺もいろいろ/大きくてよいこともある
【7】まだある、見なれた花のしくみ
調和のとれた集まりで繁栄する/色の変化で知らせる/原始的ではない/この二刀流は古くて新しい
   *
「【1】花の旅のはじまりに」は、花に関する基礎知識から始まります。
「花を咲かせる植物を被子植物といいます。現在の陸上植物は、種数がとても多く、その系統も多岐にわたりますが、コケ植物、小葉植物、シダ植物、種子植物の大きく4つに分けることができます。種子植物は裸子植物と被子植物からなります。なお、小葉植物は、あまり聞きなれないかもしれませんが、ヒカゲノカズラ類、イワヒバ類、ミズニラ類からなる小さなグループです。以前はシダ植物のなかに含められていましたが、近年ではシダ植物とは分けることが多くなっています。」
 ……本書は、このうちの「被子植物の花」に焦点をあてています。
・「(前略)被子植物の出現は、化石の記録から白亜紀の初期(1億4500万年前)と見積もられています。(中略)
 驚いたことに、約35万種の被子植物のうち、大部分が花粉の運搬を昆虫や鳥を中心にした動物に依存しています。これらの花粉を運ぶ動物と密接に関わりあいながら、互いに進化してきたことが被子植物の多様化をもたらした要因のひとつと考えられています。」
・「花は多様ですが、基本的なつくりには共通点があります。それは、ふつう花の外側からがく片、花弁、雄しべ、雌しべという4つの器官があることです。」
・「植物にとって花は生殖器官ですが、その役割は2つあります。それは、自ら種子や果実をつくるという種子親(雌)としての役割と、自らは花粉を提供することで他個体がつくる種子の父親になるという花粉親(雄)としての役割です。大部分の植物は両性花をつけるため、種子親にも花粉親にもなれるのです。」
・「(前略)風を中心とした非生物による送粉が約12%であるのに対し、動物による送粉は約88%となり、そのうち約82%が昆虫、約6%が鳥類を中心とした脊椎動物であると推定されています。」
    *
 ……なんと被子植物の8割以上が、昆虫のおかげで繁殖できているんですね。
 そして「【2】ほかの花と結ばれるしくみ」では……
「(前略)自殖に由来する個体は、他殖に由来する個体に比べて、生存力や繁殖力が弱くなることが知られています。そこで、多くの植物は、自殖を避けるさまざまなしくみを備えているのです。」
 ……近交弱性を避けるため、多くの植物は自家不和合性(受精の過程で花粉の自他が認識されて、自家花粉が失敗する)という仕組みを備えているそうです。同花受粉を避ける仕組みには、「雌雄異熟」、「雌雄離熟」、「異型花柱性」、「雌雄異株」などがあるようでした。
 また「【3】虫いらずのしくみ」は「自殖」に関する紹介で、「送粉者がいなくても、自殖なら種を残せる」とか、「自殖に特化した閉鎖花は、花をつくるエネルギーを節約でき、より効率的に種子を残せる」など、自殖の利点があげられていました。
 例えばスミレ類の多くは、閉鎖花(花が閉じたまま同花受粉し、受精、結実する)をつけるそうです。それでもこのような閉鎖花をつける花は、閉鎖花と開放花をつけることが多いようで、両方の利点を活用しているのかもしれません。
 また意外だったのが、「イネはほぼ100%同花受粉」だということで……
「(前略)イネがほぼ100%同花受粉で自殖することは、栽培に適した性質でもあります。なぜなら、自殖により、種子が遺伝的にほぼ均一な状態になるため、コメの特徴がばらつきにくく品質が安定するからです。」
 ……ああ、そうですよね! コメの品種がばらつかないから、私たちは安心して「コシヒカリ」などのブランド米を選べるんですね。さらに……
「ところで、栽培イネは、自然のままでは開花と同時に自家受粉してしまいます。これでは他家受粉のチャンスはほぼありません。それでは、どうやって品種改良のための交配をしているのでしょうか? 解決策のひとつは、43℃のお湯に7分間、穂を浸すというものです。こうすると、花粉は機能を失いますが、雌しべには受粉能力が残っているので、人工的に交配させることができるようになるのです。」
 ……なるほど! 自殖する花を品種改良するために「他殖」させるには、こんな工夫が必要だったんですね!
 また「【4】クローンで殖えるしくみ」では、「クローンの種子による繁殖の仕組み=アポミクシス」に関する説明がありました。
「(前略)アポミクシスとは、種子による無性生殖のことで、受精することなく、母植物と遺伝的に同一なクローン種子が生み出される仕組みです。」
 ……そしてカンキツ類には、このタイプのものが多いそうです。
「(前略)世界で経済的な価値の高いカンキツ類は、オレンジをはじめとして、1つの種子中に複数の胚が生じる多胚性の品種が主流です。このとき、複数の胚は2種類に分けられます。ひとつは、他家受粉からできた1つの受精胚です。もうひとつは、珠心細胞という体細胞からアポミクシスによって生じる多数の胚(珠心胚)です。このように、1つの種子に1つの受精胚と、多数の珠心胚が混在して多胚性になります。
 ところが、これらの多胚性の種子が発芽する際には、受精胚はほとんど成熟せず、芽がでる植物体のほとんどが珠心胚に由来します。その結果、芽生えた植物体は親個体と遺伝的に同じクローンとなるのです。これがカンキツ類のクローン種子により繁殖のしくみです。」
 ……そうだったんだ。ハッサク、イヨカン、ブンタンなどごく一部は例外のようですが、私たちが食べているカンキツ類の多くはクローンだったんですね……だからブランドとして品質が守られているのかもしれません。
 この他にも、植物が送粉者を惹きつける仕組みには、「避難場所の提供」とか「温かさの提供」とか、「繁殖場所の提供」とか、いろいろあることにも興味津々でした。
 そして最終章の「【7】まだある、見なれた花のしくみ」では、風媒花のオオブタクサなどが紹介されていました。
「花粉症の原因になる植物といえば、スギやヒノキがよく知られています。毎年春になると大量の花粉を風にのせてまき散らし、多くの人がその花粉に悩まされます。スギやヒノキとともに厄介なのが。キク科のオオブタクサです。夏から秋に花をつけ、大量の花粉を放出します。」
 ……「虫」ではなく「風」にまかせる花粉は、「量」で勝負しなければならないから、花粉症を起こすほど大量にばら撒かれるんですね……(涙)。
『植物のすごい繁殖戦略: 花のしくみはこんなに違う!』……植物の繁殖の仕方について、総合的に紹介してくれる本で、とても興味深かったです。植物好きの方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『植物のすごい繁殖戦略』