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第1部 本
生物・進化
なぜ人の体はこんなにつくりが悪いのか(飯島治之)
『なぜ人の体はこんなにつくりが悪いのか ーー2足歩行で起こった人体の不合理に迫ってみよう』2025/12/1
飯島 治之 (著)

(感想)
腰痛も膝痛も、ぜんぶ進化のせい? かつて4足で歩いていた人類が、2足歩行を始めたことで起こった「副作用」……人類の体に潜む「進化のざんねんポイント」を、イラストや写真も活用して分かりやすく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 人類への歩み
第2章 人類と2足歩行
2足歩行の獲得
4足歩行と2足歩行の違い
第3章 骨格系にみる直立の影響
ヒトの直立のメリット デメリット
第4章 筋系にみる直立の影響
3種類の筋が存在する筋系
第5章 内臓系にみる直立の影響
食物を消化し、栄養を吸収する消化器
血液 リンパ液を循環させる循環器
第6章 人体進化にみる不可思議さ
直立の影響でない人体の不可思議
第7章 人類のこれから
科学の利便性と脳
利便性が脳に与える影響

『ざんねんな生きもの事典』という動物の面白い大人気シリーズの本を笑いながら読んでいましたが……やっぱり人間も「ざんねんな生きもの」だったのでした(苦笑)。
「第2章 人類と2足歩行」によると、ヒトは……
「(前略)徐々に直立2足歩行による生活が定着し、身体も数万年から数十万年かけてそれに適応する形状へと変化していったものと思われます。それは骨格、筋、内臓などすべての器官系におよびます。その中には無理なく形状を変化させて直立に適応させたものもあれば、かなり無理をして適応させたものもあることになります。」
……ということで、この本はその人間の「ざんねんさ」に焦点を当てています。
でも人間が2足歩行に変わったことには、もちろん良い面もたくさんあり、中でも「大型化する脳を支えられる」ことで、高度な文明まで築くことができたのです。
・「体幹は地面に対して垂直であり下肢(後肢)で支えられています。骨格でみると脊椎は頸椎、胸椎と腰椎と直立しており、その上に頭蓋が位置する構造となっています。頭蓋が重くなっても支えられる構造になっています。」
・「(前略)いずれの動物も大脳、小脳、脳幹で構成されていることは同じです。それぞれの脳の機能を簡単に表すと大脳は認知、識別、動作、創造、思考、感覚情報の処理などを行う部位です。小脳は平衡感覚や運動の統合を行う部位となります。脳幹は心臓の拍動、呼吸、体温調節など生命の維持にかかわる中枢の存在部位と考えればいいと思います。他の動物と比べると比率的に考えて大脳の発達が顕著であることがわかります。」
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……ところが2足歩行に変わったことには、やっぱり残念な部分もあって、「第3章 骨格系にみる直立の影響」には、直立したことによって脊柱に過剰な負担がかかり、構造上の不具合が起こることで生じる疾患として次の3つが挙げられていました。
1)椎間板ヘルニア
2)脊柱管狭窄症
3)腰椎すべり症
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また脊柱を完全に直立させて2足歩行を行うために、後肢のΣカーブを捨てることが必要だったために、「高い跳躍力」と「衝撃吸収力」も失ってしまいました。しかも「大腿頸部骨折(加齢による骨密度低下でリスクが高まる。高齢者に多い)」や、「半月板損傷」、「変形性膝関節症」もその影響で起こっているようです。
ところで、この章でちょっと驚いたのが、「トラス構造を発達させた「足底」」の進化についてで……
「(前略)化石人類では約450万年前のラミダス猿人には土踏まずがなく、約350万年前のアファール猿人にはあるそうです。そして約180万年前のセディバ猿人に至ると原生人類にかなり近づいていたようです。したがって直立2足歩行の進行にともない徐々に足弓が形成されてきたものと考えられます。」
……人間の「足底」のトラス構造(土踏まず)は、徐々に進化してきていたんですね。
「第4章 筋系にみる直立の影響」では、ヒトの「大胸筋」と「広背筋」の両方が捻じれていることについて……
・「(前略)大胸筋と広背筋の主な機能は陸上生活を行う4足動物では歩行や疾走のための「推進力」、樹上生活のサル類では木登りのための「懸垂力」、そして2足歩行の人類ではものを投げるための「投擲力」を得るための筋として推移していったのでしょう。」
・「(前略)筋系にみる直立の影響は身体各部の運動の変化に対応して起こるものであり、具体的には他の運動に機能していた筋の転用が行われています。したがって、その運動自体のためにつくられたわけではないので運動効率が悪くても仕方がないように思えます。」
……捻じれていても、それをうまく活用していけばいいのでしょう。
「第5章 内臓系にみる直立の影響」では、「胃下垂」や「大腸性便秘」も、直立歩行したために発生したことが説明されていました。
そして「第6章 人体進化にみる不可思議さ」では、直立の影響でない人体の不可思議として、「神経を引きずりながら後ろへ移動した「横隔膜」」と、「不合理な迂回路を辿る「迷走神経」」の両方が、「肺が大きく発達し、心臓とともに後ろへ移動したこと」が原因だという解説がありました。このうち迷走神経の方は、なんとキリンでは、「わずか数十cm先の器官に行くのに4m以上もの迂回路を通るという不合理さ」なのだとか!
『なぜ人の体はこんなにつくりが悪いのか ーー2足歩行で起こった人体の不合理に迫ってみよう』……まさに「ざんねんな生きもの・人間版」でした(笑)。イラストも豊富で、文章も簡潔で分かりやすいので、気軽に読んでいるうちに人間の身体の構造も学べる、面白くてためになる本だと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『なぜ人の体はこんなにつくりが悪いのか』