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第1部 本

伝記・職業紹介

ジーン・マシン(ラマクリシュナン)

『ジーン・マシン――細胞のタンパク質工場「リボソーム」をめぐる競争』2025/12/12
ヴェンカトラマン・ラマクリシュナン (原著), 大田直子 (翻訳), 田口英樹 (解説)


(感想)
 リボソームの構造と機能を解明した功績で、2009年にノーベル化学賞を受賞したインド出身の生物学者のラマクリシュナンさんが、秘密解明までの日々を、200名を超える科学者たちの貢献を交えて語っている自伝的科学エッセイで、主な内容は次の通りです。
序文  J・A・ダウドナ
プロローグ
第1章 アメリカでの予期せぬ計画変更
第2章 リボソームとの遭遇
第3章 見えないものを見る
第4章 遺伝子マシンの最初の結晶
第5章 結晶学のメッカへ
第6章 生命の起源とリボソーム
第7章 出発点に立つ
第8章 レース開始
第9章 ユタでスタート
第10章 メッカへの帰還
第11章 表舞台へ
第12章 チャンスを逃しかける
第13章 最終攻撃
第14章 新大陸を見る
第15章 評価をめぐる政治活動
第16章 リボソーム巡業
第17章 動画の出現
第18章 十月にかかってきた電話
第19章 ストックホルムでの一週間
第20章 科学は前進を続ける
エピローグ
謝辞
解説――リボソームという「巨象」を解明する人間ドラマ  田口英樹
原注および推薦文献
人名索引
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「第2章 リボソームとの遭遇」によると、DNAやタンパク質、リボソームは……
・「大まかに言って遺伝子とは、タンパク質をいつ、どうやってつくるかに関する情報を含むDNA領域である。タンパク質は生命体でさまざまな機能を実行する。たとえばタンパク質は筋肉を動かす。光、手触り、熱を感じさせ、病気を撃退する。肺から筋肉に酸素を運ぶ。思考と記憶もタンパク質で可能になる。酵素と呼ばれるたくさんのタンパク質は、細胞内に何千という分子をつくる化学反応を触媒する。突き詰めれば、タンパク質は細胞に構造と形を与えるだけでなく、その機能をも可能にするのだ。」
・「リボソーム全体には五〇万の原子がある。遺伝子とそれが指定するタンパク質をつなぐリンクなので、リボソームはまさに生命の交差点にある。皆ここまではわかっていたが、二つの要素からなる小球であること以外、リボソームがどんな外観かを誰も知らなかった。これは重要な問題だった。どうにかしてリボソームはmRNAをつかまえ、tRNAに運ばれてきたアミノ酸とつなぎ合わせてタンパク質にする。しかしそれがどんな外観かを知らなければ、どうしてすべての仕組みを理解できるだろう。」
・「(前略)すべてのリボソームには二つの要素、小サブユニットと大サブユニットがある。小サブユニットが遺伝情報を含むmRNAをとらえる一方、大サブユニットはタンパク質をつくるためにtRNAが運んでくるアミノ酸を実際につなぎ合わせる。」
   *
 ……リボソームはRNA情報をもとにタンパク質をつくっているのです。この非常に重要な働きをしているリボソームはあまりにも小さいので、電子顕微鏡でもはっきりと見えない状態にあったようです。
 さて、ラマクリシュナンは、インドから米国へ行って物理学で博士号を取得したのですが、物理学よりも将来性が感じられた生物学に、しだいに心惹かれるようになっていきます。そんな時、ある科学雑誌で、リボソームのさまざまなタンパク質の位置を突き止めるのに中性子散乱法を使うという新しい方法を知りました。この中性子散乱法は、物理学者は知っていましたが、生物学者にはほとんど知られていない方法だったので、これはチャンスだと思って、生物学へ進路変更したそうです(経験もコネもなかったので、とても苦労したようですが……)。
 その後、研究者への売り込みなどを通して、さまざまな大学や研究所、さらに分子生物学のメッカ、英国ケンブリッジのMRC-LMBへと移りながら、リボソームの研究を続けていきます。
 リボソームを結晶化し、シンクロトロンなども利用してX線結晶構造解析を行うなど、構造解析の方法を地道に改良していくことや、他の研究者や自分のチームとの仕事の様子などが具体的に紹介されていて、生物学をやっている方だけでなく、研究者の方にとっては、とても参考になり、励みにもなるのではないかと思います。
 それにしても生物学の教科書で、細胞内のリボソームについてイラストなどで学んだ記憶がありますが……実際には、こんな風にすごく地道な方法で構造や機能が少しずつ解明されてきたんですね。
 またリボソームというと細胞内の「タンパク質製造部品」みたいな単純かつ概念的な理解しかしていませんでしたが……この本を読むことで、「ヒトだけでなく、動植物や細菌にいたるまであらゆる生命のタンパク質をつくり、生命活動を支える超重要な分子機械」だということを痛感しました。
「解説――リボソームという「巨象」を解明する人間ドラマ  田口英樹」では、そんなリボソームについて、「大腸菌」を例にしたファクトが解説されていたので、以下に紹介します。
・細胞の乾燥重量の約三〇%はリボソームが占める
・細胞一つあたり六万~七万程度のリボソームが含まれる
・リボソームは五〇種類のタンパク質パーツ(サブユニット)と三種類のRNA(リボソーマルRNAからなるタンパク質-RNA複合体である。総分子量は二五〇万ダルトン程度で細胞内で最も巨大な分子である。
・機能的な側面から言うと、リボソームは一秒間に一五~二〇個のアミノ酸を順次つないでペプチドとする。タンパク質の平均的なアミノ酸数は約三〇〇個なので、リボソーム一分子は一分間にタンパク質四個程度、細胞一つだと一分間で二四~二八万個ほどのタンパク質を合成する。
・細胞全体のエネルギーの約半分がリボソームを中心としたタンパク質合成反応に使われている。
   *
 ……これは大腸菌の例ですが、人間の体内でも大量のリボソームがどんどんタンパク質を合成することで、身体が動いたり脳が考えたり出来ることを考えると……本当に「最重要」な分子機械なんですよね……。今後もリボソームの研究が進むことで、より副作用の少ない抗生物質など、医療分野での活用も期待できそうです。
『ジーン・マシン――細胞のタンパク質工場「リボソーム」をめぐる競争』……リボソームの構造や機能を解析する研究者たちの苦闘とともに、どのように解析するのかも紹介してくれる本で、とても興味津々でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください。研究者の方や、研究者を目指している方には特にお勧めします☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『ジーン・マシン』