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第1部 本
医学&薬学
金属バイオマテリアル(塙隆夫)
『金属バイオマテリアル: 医療用金属材料』2025/7/4
塙 隆夫 (著), 米山 隆之 (著)

(感想)
めざましい進展を遂げている最新の研究開発の現状を踏まえて、金属バイオマテリアルについて解説してくれる本で、主な内容は次の通りです(なお2007年に発刊した「金属バイオマテリアル」(バイオマテリアルシリーズ1)の改訂版です。)
1章:バイオマテリアルとしての金属
2章:どこに使われるのか ―臨床応用例と課題―
3章:どんな材料が使われているのか ―金属バイオマテリアルの種類と性質―
4章:人体内でどのように変化するのか ―耐久性とその評価―
5章:金属材料は人体に安全か ―安全性と生体適合性―
6章:金属材料を生体適合化・生体機能化する ―表面処理・表面形態制御―
7章:いかにして製品となるか ―承認・認証制度―
付録:金属材料の内部構造と機械的性質/金属材料の表面構造と腐食/金属バイオマテリアルの規格
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バイオマテリアルとは「医療や生命科学を対象とした材料の総称」です。この本は「金属バイオマテリアル」の解説本ですが、バイオマテリアルとしては、他にセラミックと高分子も使われています。「まえがき」によると……
「(前略)一方、セラミックと高分子におけるこの半世紀の急激な技術革新は、これらの医療機器への幅広い応用を可能にした。特に、セラミックスや高分子の優れた生態組織適合性や生体機能性は、バイオマテリアルとして大きな期待を抱かせるものであり、事実多くの金属製医療機器がセラミックスや高分子で代替されてきた。それにもかかわらず、金属材料は優れた強度と靭性から依然として多くの医療機器に使用され、体内埋植型医療機器(インプラント)の70%以上を締め、整形外科に限れば95%以上が金属製である。一時期は、すべての医療機器がセラミックスや高分子製になるのではないかと考えられたこともあったが、力学的信頼性から金属材料の必要性はまったく衰えていない。」
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そして「1章:バイオマテリアルとしての金属」には……
「バイマテリアルは生体組織と接触して使用されるため、生体に対して安全であることが要求され、感染を防ぐために消毒・滅菌できなければならない。また、使用期間の耐久性が必要なことはいうまでもない。さらに、金属材料においては、耐食性がつねに必要である。このような条件の下で、用途に応じて、強度、靭性、弾性、剛性、柔軟性、軽量性、生体活性・不活性・崩壊性、X線造形性などさまざまな性質が要求される。」
……とありました。
「セラミックス」は、材料が体内で骨に変化していく骨置換材料、人工骨など、硬組織の機能代替する用途に使用されていて、「高分子」材料は、柔軟・軽量で加工性に優れているため多くの医療機器として使用されているそうです。
そして「金属材料の特徴(金属結合の特徴)」には、主に次の5つがあるのだとか。
1)強度が大きい
2)延性が大きい。変形しやすい。
3)破壊靭性値が大きい
4)弾性と剛性を適度に兼備している
5)電気伝導性がある
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個人的に関心が高かったのが「3章:どんな材料が使われているのか」。次のように書いてありました。
「(前略)生体組織と接触した金属材料はそのままで毒性を示すことはなく、腐食によって金属イオンとして溶出するか、摩擦摩耗によって摩耗粉とあった場合に毒性を示す可能性がある。そのため、生体用に使用される金属材料では高耐食性が絶対に必要であり、貴金属(noble metal)や耐食合金(corrosion-resistant alloy)が使用されている。」
……そして金属材料のなかでもチタンは、活性であるために溶液中の水分子や大気中の湿分とただちに反応し表面にきわめて薄い酸化チタンの皮膜を生成するだけでなく、表面に傷が付いてもただちに不動態皮膜が修復されるので、耐食性に優れているだけでなく、生体に取り込まれにくく毒性がないという性質もあるそうです。……素晴らしいですね。
この他、コバルト基合金やステンレス鋼もよく使われているようです。
そしてもう一つ興味津々だったのが、「5章:金属材料は人体に安全か」。ここでは次のように書いてありました。
「毒性は人体に何らかの影響を及ぼす現象の総称であり、金属材料に限らず、すべての材料は毒性を示す。われわれは、これらの材料を人体に安全な範囲で使用しているに過ぎない。現在医療用に使用されている材料は、安全性の承認を受けたものであり、その使用方法を遵守すれば安全に使用できる。」
……うーん、確かに。そして……
・「腐食や摩耗によって金属元素が人体に放出されるが、放出された金属元素の反応性も重要である。(中略)金属イオンは、ただちに水分子やアニオンなどと反応し、酸化物、水酸化物、塩などとなり安定化するものと、これらと反応しないか反応生成物が安定でないものとに大別できる。前者では生体分子と反応する確率は低く、後者では高い。」
・「(前略)金属イオンの毒性は
1)金属イオンの溶出しやすさ(耐食性)
2)溶出した金属イオンの活性あるいは周辺分子との反応性
3)金属イオンとその誘導体自体の毒性(通常はこの毒性をもって金属の毒性としている)
の総合的結果として、決まるものであり、これらの因子を総合して金属材料の毒性を捉えるべきである。」
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また「6章:金属材料を生体適合化・生体機能化する」も、とても参考になりました。
実は、金属材料に生体適合性や生体機能を付与するためには、表面処理や表面改質を行う必要があるそうです。
「(前略)材料と骨の結合強度は、材料表面の形態によっても左右される。ビーズ、溝、繊維メッシュ、気孔など、材料表面のさまざまな形態が設計されている。」
……金属材料に適切な表面処理を施すことで、骨形成を促進したり、骨組織の結合を改善したりできるのだとか。
なおバイオマテリアル製品の承認・認証制度として、「医薬品、医薬機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(2016)があるそうです。
『金属バイオマテリアル: 医療用金属材料』……「金属バイオマテリアル」について総合的に解説してくれる本でした。専門家向けの本なので、材料工学を専門としている方や、医歯学系の仕事や学習をしている方は、ぜひ読んでみてください。
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『金属バイオマテリアル』