ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
医学&薬学
細菌万歳!(ロバン)
『細菌万歳!: 細菌たちが地球を守る』2025/8/27
マリー=モニク・ロバン (著), 杉村 昌昭 (翻訳)

(感想)
ぜん息や花粉症、アトピーといったアレルギーの罹患率はこの半世紀の間に急増し、アレルギーを引き起こす食物や物質の種類も増え続けています。その要因は、食生活・住環境の過剰な無菌化・人工化による人体の免疫システムの弱体化……世界の環境問題に取り組んできた名ジャーナリストのロバンさんが、著名な科学者たちに取材を重ねて、微生物との共生・生物多様性の保護を訴えている警告の書です。
「序論」によると……
「『細菌万歳!』は、熱帯地域における生物多様性の破壊と感染症の出現との関係を分析した『パンデミック製造工場』(邦訳『なぜ新型ウイルスが、次々と世界を襲うのか』)の続編である。この第二の本は、いまや世界人口の半分以上が居住している都市における生物多様性――植物、動物、そして微生物(細菌)から成る――の不在が炎症性疾患の原因の温床となっていることを明らかにするものである。(中略)
『パンデミック製造工場』は人間がマクロな生物多様性――動物や植物の生物多様性――の一部をなしていること、そして人間がエコシステムを破壊することによって自らに跳ね返る連鎖的影響が生じてそれが感染症というかたちで現れていることを明らかにした。それに対して本書『細菌万歳!』は、人間はミクロな生物多様性(!)にも依存していることを明らかにするものである。ミクロな生物とはバクテリア、ウイルス、寄生虫などである。」
……ということで、本書は『パンデミック製造工場』(邦訳『なぜ新型ウイルスが、次々と世界を襲うのか』)の続編なのですが、「訳者あとがき」によると……
「(前略)続編的書物とはいえ、本書は主題と主張が明確に展開された独立の書物として読むことができる。」
……実は私自身、『パンデミック製造工場』を読んでいないのですが、特に支障もなく本書を読めました。この「訳者あとがき」には本書の要約も書いてあるので、最初に読むと、内容がより理解しやすくなるかもしれません。
さて本書の「序論」によると……
「(前略)一九六〇年代から、花粉症、喘息、湿疹といったアレルギー、あるいは食物アレルギーなどの「アトピー」と言われる疾病が一〇年ごとに二倍に増えている。」
……という状況にあるのですが、これは私たちが「都市化」し過ぎているだけでなく、自分たちの経済性を優先して自然環境を破壊したり、過度に清潔な環境で過ごしていたりすることに問題があるようです。本書では、農場生活をしている人はアレルギーなどの疾患になりにくいこと(農場効果)や、都市環境と自然環境に住んでいる人の違いなどの研究から、「多様な微生物に接して生活する」ことが、私たちの免疫システムを鍛え、私たちの健康をよりよく保つことが、多数の事例とともに示されています。
とても驚いたのが、赤ちゃんは這い這いすることで環境(植物、水、家畜、土、埃など)に接触して細菌にふれ、それが赤ちゃんの免疫システムを強化しているという話。赤ちゃんが母親から免疫システム(微生物など)を受け取っていることは知っていましたが、土や床の上で這い這いすることが、彼らの健康に良い効果を及ぼしていたとは……。
しかも「母親が妊娠中に未加工牛乳を飲むこと、生まれてから一年間子どもが未加工牛乳を飲むことは重要」だそうで……実は、牛乳は殺菌されたものを飲む方がいいと考えていたので……ちょっと困惑させられました。
それだけでなく、なんと「農場研究」で明らかにされた「牛小屋の効用を入れた鼻スプレー(三歳児までが対象)」というものまで開発されているそうで、それというのも、喘息やアレルギーの予防体質を獲得する時期が、三歳児までだからのようです……幼い頃に、たくさんの雑菌に触れることが大切なんですね……。
「(前略)幼年期の子どもが多様な微生物にさらされることは獲得免疫を発動させるための理想的な条件をつくり出し、新たな敵が現れたとき耐性のメカニズムによって初期の炎症を和らげることができます。」
……獲得免疫が機能するには、人体が早い時期から病原菌にさらされなくてはならなくて、病原菌がわれわれの免疫システムを訓練するのだとか。……確かに、そうなのでしょう。
次のようにも書いてありました。
・「環境の生物多様性、人間の細菌叢、アレルギーの三者は相互に結びついている」
・「微生物の多様性と健康状態のあいだにはまぎれもない相関関係があるのです。皮膚に細菌が多ければ多いほど喘息やアレルギーが発生するリスクは小さくなるのです。」
・「(前略)われわれは生命多様性の二つの層が重なり合うことによって保護されているのです。この二つの層はわれわれの体――腸、粘膜、開口部、皮膚など――に住む微生物とわれわれを取り巻いている環境のなかに住む微生物とから成っています。われわれの内的生物多様性――これはわれわれの免疫システムと緊密な相互作用を行います――を守るために、われわれは外的生物多様性を守らなくてはなりません。」
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さらに細菌だけでなく、寄生虫も同じような役割を果たしているのだとか……
「(前略)免疫システムが成り立つためには、環境や食糧などの多様な出所からやってくる細菌や寄生虫によって試され鍛えられる必要があるのです。」
……うーん、寄生虫もですか……。
健康を保つためには、手洗いや清潔が大切という固定観念があったのですが、すべては「バランスの問題」で、過剰な清潔さや抗生物質の使用は、むしろ健康に悪影響があるようです。
「(前略)寄生虫を悪者とみなしてはいけません。人間の健康にとって良い働きをすることもあるのです。排除するのではなく、量をコントロールするだけにとどめるべきです。」
……そうはいっても「量をコントロールする」のは難しそうにも感じますが、とにかく「多様性を守る」ことが大切なようです。実は「希釈効果」といって、多様性に富めば富むほど、感染リスクは希釈される(腸内細菌叢の細菌の種類が多いほど、病原菌となる細菌やウイルスから守られる)そうです。
とりわけ子どもたちを森のような環境、土や植物のある環境で育てることは、彼らの免疫システムを健全に育てるためにも重要なことのようです。マンション暮らしなどで、子どもたちを土や植物のある庭で遊ばせる機会がない方は、植物のある公園や里山などに、家族みんなで出かける機会を増やした方がいいのかもしれません。
本書の最後では森林浴に関する事例も紹介されていました。
「(前略)一言で言うと、人間は森のなかで体が楽になり、これが免疫防衛機能を強化し、同時にアトピー性皮膚炎や慢性的呼吸器疾患から身を守るのです。」
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『細菌万歳!: 細菌たちが地球を守る』……腸内細菌叢などの内的生物多様性を守るために、外的生物多様性を守ることの重要性を、数多くの研究や事例とともに科学的に解説してくれる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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『細菌万歳!』
『なぜ新型ウィルスが、次々と世界を襲うのか?』