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第1部 本

作家で食っていく方法(今村翔吾)

『作家で食っていく方法 (SB新書 715)』2026/1/7
今村翔吾 (著)


(感想)
『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村さんが、小説家稼業の裏側を大公開。作家の仕事の理想と現実を具体的に語ってくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第一章 作家になる方法
第二章 作家で食っていく方法
第三章 売れる小説を書く方法
第四章 これから生き残る方法
おわりに
   *
「はじめに」には、作家で食っていく方法として……
「もちろん、小説の技術は要る。しかし、私はこれを成すには、ある種のマインドセットが必要だと思っている。編集者とはこのように付き合うとか、自作の売り込み営業はこうしてとか、メディアミックスは云々――。といったサバイバル以前の話。小説家として食っていくためのスタンスから話していく必要がある。」
 ……と書いてありました。だから本書には、「作文」技術もありますが、それ以外の「仕事人(作家)としての心構え」の方が多かったような気がします。
「第一章 作家になる方法」では、作家になるのに必要なたった一つのことは、「読書量」だとありました。
「小説を書くためには、構成にしてもキャラクターにしても文章にしても、引き出しの蓄積が必要です。このためには、とにかく数を摂取するしかありません。たくさんの本を読みましょう。」
そして読むべきものを勧めるとしたら、1)自分の好きなもの、2)今売れているもの、で……
「(前略)売れているものがなぜ売れているのかを分析しながら読むことは、その後自分が売れるものを書くときの糧になります。」
 ……なるほど。そんな読み方もあるんですね(笑)。
 また作家になる前に「社会人」を経験することも勧めています。その理由は……
1)専業作家になる前に、兼業作家としてやっていくための基盤を築ける
2)コミュニケーション能力を培う
3)様々な人と接することで、キャラクターの引き出しが増える
 ……これは確かにそうかも……。
 なお作家として本気でやっていきたいなら、「年3冊のペース」で書くことも勧めています。
「第二章 作家で食っていく方法」でも……
「結局のところ、安定収入を見込んで精神衛生を保つためにも、とにかくたくさん書くしかないのです。
 つまり、安定収入は、「安定して書き続けられる能力」と同義です。スポーツ選手と同じで、1日でも練習を欠かすと、パフォーマンスは落ちます。落ちたパフォーマンスを取り戻すのは、毎日の地道な努力より大変です。」
 ……やっぱり作家も、けっして自由な(気楽な)仕事ではないんですね……。
 この他にもデビューの仕方とか、一冊を書くのに必要な手間の内容とか、役立つ情報がたくさんありました。
 そして「書く」技術として参考になったことの、ごく一部を紹介すると、次のような感じ。
・ネタの量産方法の秘訣は「分解と再構築」
(例えば『SPY×FAMILY』なら「スパイもの」「家族の物語」「コメディ」「東ドイツを思わせる舞台設定」「能力もの」と……分解する。1作品につき10個ぐらいの要素で200個挙げたら、それをシャッフルして8個ぐらい取り出し、再構築して小説を書く)
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・「(前略)シリーズ化を狙うなら、とにかく1巻で全て出し切る。出し惜しみしない。1巻で物語を完結する。このことに尽きます。(中略)
 続巻を見越して余力を残すのではなく、とにかくその場で全力を出し切り、後で物語の整合性を取りながら、続巻を書く。(中略)
 その前提に立ったうえでの創作術としては、シリーズ化のための一番の条件は、キャラクターの魅力です。
 1巻の内から、主人公の他にも最低で二人、軸となるキャラクターを出しましょう。
 長期のシリーズ化を目指すなら、「主人公を一番人気にしないこと」が重要です。魅力的なキャラクターを出し、育て、増やし、彼らの魅力でシリーズを引っ張っていく。ついに主人公を人気1位にするのは、シリーズの最後です。これが最も「エモい」シリーズ化の流れではないでしょうか。」
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・「(前略)作家が調整すべきは、安心感と裏切りのバランスです。まずは安心感を担保しつつ、そこに少しの裏切りを加えていく。その裏切りが、既存のファンを楽しませる。と同時に、新たな読者層へのフックにもなります。」
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・テーマを見つける具体的方法は連想ゲームがお勧め。
「複数の連想ゲームの交点、つまり複数の連想ゲームに共通した問題意識は、普遍的なテーマである可能性が高いです。」
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・「長編において基本となる構成は、山二つです。横軸を時間、縦軸をテンションとした時に、山が二つできるような物語を意識してください。山とはつまり、盛り上がりです。」
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・「キャラクターを書き分ける文章力向上のためには、5人以上が登場し、しかも大体均等に発言する会話シーンを書く練習がお勧めです。
 会話シーンでなくても、複数人が登場する場面を処理するのは、非常に骨が折れる作業です。」
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・「特に触覚、嗅覚、味覚について、文章一つで読者に擬似体験をさせられるのは、小説の強みです。漫画・動画・音楽に劣るとはいえ、視覚や聴覚も、もちろん文章で表せます。五感をバランスよく表現できるのが、小説の優れた点です。」
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・「(前略)カメラワークは好き勝手に切り替えて、そのまま繋げばいいという話でもありません。
 視線誘導が必要です。
 陣形を上から描きたくても、人物目線での描写からすぐに俯瞰に移るわけにはいきません。
 例えば、人間が空を見上げ、鳥が目に入る。二羽の鳥が楽しそうに飛んでいます。鳥たちは、人間はなんて愚かなんだろうと思っているだろうか、とこう続く。そこで俯瞰に入ります。
 地上から鳥を見上げるのを経由して、視線誘導をしているわけです。」
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 ……などなど。この他にも生成AIの使い方など、さまざまな具体的アドバイスをもらえました。
なかでも特に心に残ったのが「駄作かもと不安になっても、最後まで書き切る」というアドバイス。この「敗戦処理」が作家に最も必要な能力を育てるそうです……確かに「敗戦処理」を通して、文章力だけでなく、精神力も鍛えられそう。
『作家で食っていく方法』……小説家として生き残るための思考と方法について、実践的なアドバイスをたくさん見つけられる本でした。これらは、小説家ではない、ごく一般のビジネスマンにも役に立ちそうな気がします。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆

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『作家で食っていく方法』