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第1部 本
健康&エクササイズ
お耳の国のイチカ(濱西伸治)
『お耳の国のイチカ:聴覚をめぐる大冒険 (ミネルヴァ・サイエンスライブラリー)』2026/1/20
濱西伸治 (著)
(感想)
おばあちゃんに耳かきをしてもらいながら、気持ちよくウトウトしていた主人公の小学生のイチカちゃん。目を覚ますと、なんとそこは、おばあちゃんの耳の中……聴覚の不思議をめぐるイチカちゃんの大冒険物語で、主な内容は次の通りです。
序 章 おばあちゃん、最近耳が遠くなった?
第一章 イチカ 長いトンネルをくぐる(外耳・鼓膜編)
1 耳たぶが無かったら?――耳たぶは「音のアンテナ」
2 ここは真っ暗闇?――外耳道トンネルの正体は?
3 お耳の国のマジシャン登場――鼓膜が魅せる七変化
耳に関する言葉あれこれ(1)
第二章 イチカ 鍾乳洞でブランコに乗る(中耳編)
1 変わり者三兄弟――誰が一番美しい?
2 中耳腔にある落とし穴?――耳管は不思議の泉
耳に関する言葉あれこれ(2)
第三章 イチカ カタツムリ塔でダンスを見る(内耳編)
1 蝸牛の中のコンサート――基底板が奏でるメロディ
2 どんなダンスがお好き?――ダンスする外有毛細胞
3 おばあちゃんを助けて!――感音性難聴
耳に関する言葉あれこれ(3)
第四章 イチカ お耳の国から戻ってくる(帰還編)
1 ゴールでの決意――耳音響放射
2 良好なコミュニケーションを目指して――未来へのメッセージ
第五章 イチカ 冒険して欲しい場所がある(番外編)
1 お耳の国の巨大迷路――聴覚伝導路
2 聴こえと体のバランスを保つのは同じ場所?――平衡感覚
3 スポーツで難聴になる?――コンタクトスポーツ難聴
おわりに
索 引
*
耳の中を旅する小学生のイチカちゃんの冒険物語ですが、目次を見ても分かるように、「耳」の構造や機能も学べるようになっています。この本は、「特に医療・福祉分野に関心のある中高生に最後まで読み進めてもらえるように、聴覚のメカニクスを「冒険」という形で紹介」してくれるのです。
「第一章 イチカ 長いトンネルをくぐる(外耳・鼓膜編)」では、鼓膜について詳しく解説されていました。ちょっと長いですが、以下にその一部を紹介します。
「鼓膜の断面を観察すると、ゴム膜のように均一ではなく、サンドイッチのようになっています。真ん中の部分が、布のように糸(線維)がいくつかの方向に織り重なっている層で、その両側は皮膚の一部で出来た層と粘膜の一部でできた層で挟まれています。真ん中の部分の線維層に着目すると、レコード盤の溝のように円に沿って(円周状に)並んでいる線維と、タンポポの花びらのように中心から外側に向かって(放射状に)伸びている二種類の線維が組み合わさっています。円周状と放射状の線維は、それぞれ低い周波数の音と、高い周波数の音を、効率よく耳の奥へ伝えるために必要な構造であると考えられています。
(中略)耳介と外耳道を通ってきた音に合わせて、鼓膜が変幻自在に模様を変えて複雑に振動することで、その音の周波数と大きさの情報を正確に奥に伝えていきます。」
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そしてこの鼓膜は、なんと「穴が開いても」再生できるようです。
「膜が損傷したことによる難聴に加え、耳鳴りや痛みが生じることもありますが、鼓膜自体が炎症を起こさなければ、大きな穴が開いたとしても、時間をかけて徐々に再生して自然に塞がります。」
……それは有難いですね!
「第二章 イチカ 鍾乳洞でブランコに乗る(中耳編)」では、鼓膜から奥へは、鼓膜側から順番に「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」の三つが関節を介してつながっていることや、アブミ骨の底板は蝸牛にはまり込んでいて、ここが振動することで、蝸牛の中にあるリンパ液を振動させることなどが書いてありました。
とても参考になったのが、自分で話している声と録音した声が違う理由についてで……
「(前略)通常の音の経路は耳介から入った音が外耳道、鼓膜、耳小骨を経て伝わります。これは「気導音」と呼ばれます。しかし、音の経路にはもう一つあり、外耳道や鼓膜を通らず、頭蓋骨の振動が直接、蝸牛に伝わる「骨導音」という音があります。
いつも聞いている自分の声は気導と骨導がミックスされた音です。録音した自分の声は気導音のみであり、逆に耳を手で塞いでも聞こえてくる自分の声は、骨導音のみです。」
……なるほど。そういう原理だったんだ……。
「第三章 イチカ カタツムリ塔でダンスを見る(内耳編)」では……
「(前略)アブミ骨の底板は、蝸牛の前庭窓に、柔らかい靭帯を介してはまっていて、耳小骨によって増幅された振動を蝸牛内のリンパ液への振動として伝えています。」
……という構造になっていて、聴こえのメカニズムとしては……
1)アブミ骨から伝わってきたリンパ液の振動で基底板が振動すると、聴毛が動いてイオンが流入
2)外有毛細胞が、音に合わせて伸縮と伸長を繰り返す
3)外有毛細胞の伸縮により基底板の振動が大きくなる
4)内有毛細胞の聴毛が振動して電気信号を発生
5)聴神経を経て脳へ
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……そして老化によって、耳も聞こえにくくなりますが、その原因は……
「(前略)一般に老人性難聴は、蝸牛の基部にある、高い周波数側の有毛細胞が抜け落ちてしまうために発症すると言われています。」
……だから高音の音が、より聞こえにくくなるんですね……。
「第五章 イチカ 冒険して欲しい場所がある(番外編)」によると、「聴こえ」と「平衡感覚」は同じ原理を使っていて、どちらも「有毛細胞の感覚毛が曲がること」がポイントになるそうです。
またラグビーやアメリカンフットボール、格闘技など、脳震盪を起こすこともあるほど頭部に強い衝撃を受けるスポーツでは、CTE(慢性外傷性脳症)を発症することがあるそうで、これは認知障害や抑うつ状態だけでなく、難聴にもつながるようです。怖いですね……。
それでも最近は頭部を保護できる「ヘッドキャップ」があるようなので、頭部に衝撃を受けやすいスポーツをする方は、これを積極的に使用する方がいいと思います(残念ながら著者の濱西さんの得意な剣道にはないようですが……今後は対象のスポーツすべてで、このような防護用具が開発されると良いですね)。
『お耳の国のイチカ:聴覚をめぐる大冒険』……小学生の冒険を通して耳について詳しく学べる本でした。中高生を対象にしているだけあって、とても読みやすいので、医学や聴覚に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『お耳の国のイチカ』