ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
社会
いのちの未来 2075(石黒浩)
『いのちの未来 2075 人間はロボットになり、ロボットは人間になる』2025/5/18
石黒浩 (著), 大阪・関西万博 シグネチャーパビリオン「いのちの未来」クリエイティブチーム (著)

(感想)
ロボット工学の第一人者の石黒さんが、50年後(2075年)の人間・社会・文化・技術を鮮やかに描いている本で、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」公式ブックです。
科学技術の進歩であらゆる制約から解き放たれた2075年の世界を、第1部で大胆に予測。さらに第2部からは、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」についても、50年後の未来を具現化したパビリオン製作の舞台裏を明かすとともに、展示内容の一部も写真などとともに公開してくれています。さらに、1000年後の未来の人間の姿も披露されています。
第一章には、万博が必要な理由として……
・「(前略)未来を考えるのは、我々人間の責任であり、どんなに忙しくても、時には未来を多くの人と考える時間を設ける必要がある。そうした機会は簡単に得られるものではないが、その機会を与えてくれるのが万博なのである。」
・「大阪・関西万博のメインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であるが、その意味は、人類の未来は人類が責任を持ってデザインしていかなければならないというものである。」
……なるほど。万博は単なる各国の魅力(得意分野)紹介(最新技術も含めて)のお祭りではなく、みんなで「人類の未来」を具体的に描き出すという意味もあったんですね……。
そして石黒さんが担当した大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」のテーマは「いのちを拡げる」で、これは「科学技術の力で人間が人間のいのちの可能性を拡げる」という意味だそうです。
ロボット工学専門家の石黒さんは、次のように考えているようでした。
・「(前略)人間とは、生物進化のメカニズムである遺伝子の仕組みで、環境に適応し、進化するだけでなく、科学技術によってその能力を拡張してきたのである。科学技術は、人間にとっては進化の手段となっている。」
・「このようにして我々人間は、身体的な能力だけでなく、脳が持つ能力を含め、様々な能力をAIやロボットに置き換えていく。そうして近い将来に、体のほとんどを機械に置き換えるような人間も現れるだろう。
一方で、AIやロボットは、より人間らしくなっていく。」
……また「肉体は人間の進化を加速させるための、一次的な手段に過ぎない」として……
・「(前略)人間はたまたま生物として生まれ進化発展してきた。しかし生物だけが進化できるものではないだろう。宇宙には生物以外の手段で進化発展しているものが存在する可能性がある。」
・「人間が今後さらに進化発展するには、その活動範囲を地球上から宇宙に拡げていく必要がある。進化とはより広い環境に適応することである。しかしながら、今のタンパク質で構成された体では、宇宙に活動を拡げていくことは容易ではない。(中略)
より高い環境適応性を獲得するために、我々人間は科学技術によって、身体を進化させようとしており、そのために、AIやロボットの技術に惹かれているのだと思う。」
……おお! 人間は宇宙へ活動範囲を広げるために、ロボット技術を活用するなどして今後も進化し続けなければならないんですね!
「現代の人間は、環境そのものを設計できるだけの技術の力を手に入れたのである。故に、かつては神様に委ねていた環境問題や人間の将来について、人間は自らが責任を持って考え設計しなければならなくなったのである。
その責任を果たす場がまさに、新たな大阪・関西万博である。」
……50年後の未来は、AIやロボット技術がより身近なものになっているようです。また医療も進んで、「老化」を止められる可能性があるのかもしれません。50年後の医療技術については、次のことが予想されていました。
<50年後の未来の技術 医療技術>→人体の制御
・老化制御技術:エピゲノム研究により老化が治療され寿命が150歳を超える。
・日常治療技術:浴室、トイレ、ベッド、衣類にこころや体を治療するシステムが組み込まれる。
・健康管理技術:広範囲常時行動モニタリングによるテーラーメイド医療・調薬が実現。
・成長制御技術:ゲノム研究によるiPS細胞の利用により臓器が自由に作れる。
・受精・育成支援技術:人工授精と遺伝子治療と人工子宮が普及する。100歳で子育てする。
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また50年後の環境・エネルギー技術としては……
<50年後の未来の技術 環境・エネルギー技術>→自然の制御
・環境超センシング技術:人体や環境を、人間や動物の能力を超え分子レベルで計測できるようになる
・自然理解再現技術:量子コンピューターによって複雑な自然の仕組みが解き明かされる。動植物の様々な仕組みが人工的に再現できるようになる。
・自然環境再現技術:自然を再現する技術により、家や建物が自然を超えた自然になる。
・エネルギー技術:核融合による無限に近いエネルギーを手に入れる
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……なんだか、ワクワクするような未来のようで、気分がとても明るくなりました。
しかも未来の高齢者施設は、明るく楽しい理想郷のような場所になるようで……
「まず、寿命が各段に延びる一方で、尊厳死や安楽死が認められるようになると、未来の高齢者施設は、明るく楽しい施設になると想像する。今のように、単に生きながらえる場所としての高齢者施設ではなく、十分に人生を生きた人が自分の終末を自由に設計し、自由に生きることができる場所としての高齢者施設になる。(中略)
また、そこでは介護という概念がなくなるだろう。介護とは人が高齢者や病人を介抱し日常生活を助けることであるが、未来においては、介護用ロボットの開発も進み、人に頼んで介護してもらうのではなく、自分がロボットを使って自分で生活するようになる。そうなれば、それは介護ではなく、自律した生活になる。
介護のない理想郷的な施設、人が最後に訪れたい施設、それが未来の高齢者施設である。」
……うわー、老化を恐れる必要なんて、なくなるんですね! 未来の高齢者施設は、とってもいい感じ、と嬉しくなりましたが……そもそも老化しなくなるなら、高齢者施設すら不要なんじゃないかなーとも思ってしまいました。いろんな年齢の人々が(体の一部または全部がアンドロイド化した人も含めて)、普通に自分の住宅で在宅勤務しながら生活し、数人で交流したり、たまには大勢でお祭りしたりして過ごしているのかも……。
そうなると、差別なども、まったくなくなるのかもしれません。
「(前略)ほとんどの差別は生身の体に起因する。肌の色が違う、目が見えない、足がないと人は人を差別してきた。その生身の体を自由に機械の体に置き換えられるようになれば、真のダイバーシティとインクルージョンがかなりの部分で実現できる。」
……いろんな意味で、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」が描く未来は、とても明るいもののように感じました。
また、この本は公式ガイドブックでもあるので、本書の後半では、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」の展示内容が写真で紹介されていたり、舞台裏が詳しく紹介されていたりします。大阪・関西万博に実際に行って体験した方は、感動を再現したり、パビリオンの創られ方を知ることができたりして、一層興味津々なのではないでしょうか。
さて、石黒さんというと、ご本人にそっくりのアンドロイド(ジェミノイドHI-6など)で有名ですが、50年後どころか、すでに現在でも、かなり凄いことになっているようです。ジェミノイドHI-6は、なんと石黒さんに代わって講演を行うだけでなく、質問に答えることすら出来るのだとか……
・「(前略)私の代わりに講演を行う機能であるが、私の声をAIが分析して、唇や頭や体の動きを自動的につくり出せるようになった。動作は私の行う特徴的な動作をいくつか設計して、プログラムとして与えてあるのだが、どの動作をどの言葉に応じてどのようなタイミングで表出させるかは、AIが自動的に決めている。また、言葉から感情を抽出して、その感情に応じて、表情や動作を変更することも可能になった。
すなわち、私が自分自身で行う講演の音声を記録しておけば、その記録を基にAIがジェミノイドで、私の講演を再現してくれるのである。」
・「ジェミノイドHI-6で開発しているもう一つの重要な機能は、講演を行うアバターとしての機能に加えて、私の代わりに質問に答える機能である。」
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現在のAIの怒涛の進化っぷりを考えると……大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」の未来予想図は、現実化の可能性がかなり高いのかも……。
『いのちの未来 2075 人間はロボットになり、ロボットは人間になる』……大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」公式ブックで、展示のガイドだけでなく、2075年の世界を大胆に予測している本で、とても参考になりました(ワクワクさせられました)。大阪・関西万博に行った方はもちろん、行かなかった方もぜひ一度、読んで(眺めて)みてください☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『いのちの未来 2075』