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第1部 本

社会

テック資本主義超入門(大田比路)

『2030年の世界を生き抜くための テック資本主義超入門』2025/12/23
大田 比路 (著)


(感想)
 たとえ、あなたがインターネットを拒否しても「テック」に依存しきったこの世界そのものからは逃げられない。民主主義も、恋愛することも、仕事を得ることも……テック時代を生きのびるための「早稲田大学の情報入門講義」を書籍化した本です。
1990年代のネットは「面白かった」。
2000年代のネットは「面白くてうるさかった」。
2020年代のネットは「作られた面白さ」に全てを奪われる時代だった。
 そして、
19世紀のカモは労働者だった。
20世紀のカモは消費者だった。
21世紀のカモは参加者だった。
 ……という感じで、面白いほど、過去・現在・未来のインターネット&テック社会をズバッと切り裂いて解説してくれる本です。
 前半はインターネット黎明期から現在までに起こった、数多くのトピックの紹介。
 1990年、ARPANETが終了し、その物理的基盤がインターネットに受け継がれ、1994年、Yahoo!が生まれたことでインターネットの中心が生まれ、さらにWebやアメリカの通信品位法の230条、PayPalマフィア、Google、Amazon、Facebook、WikiLeaks、Bitcoinなど……インターネットの発展の経緯が、各項目にみごとに集約されていて(ちょっぴりユーモアも交えてあって)感心してしまいました。この部分は、社員研修でインターネットやテック社会の説明をするときにも参考として使えそう。
 そして本書の核心となる「テック資本主義」については、次のように概説されていました。ちょっと長いですが、そのごく一部を以下に紹介します。
・「Big Techの台頭によって、中世より続いてきた資本主義は、新たな段階に入った。テック資本主義(tech capitalism)の登場である。すなわち、デジタルテクノロジーを基盤とするテック企業(tech companies)が、資本主義の主役となった時代状況のことだ。」
・「(前略)テック資本主義では、プラットフォーム(platform)がテック企業によって構築される。人々は、その「場」に参加するコストとして、自らのデータ(personal data)をテック企業に差し出す。そのデータなるものが、テック資本主義における「資本」なのだ。「21世紀の資産家階級」が富を獲得するための資源なのである。
 プラットフォームの参加者たちは、テック企業のつくった柵のなかに囲われ、彼ら21世紀の資本家階級のために、データ生成や広告閲覧といった無償労働に従事させられる。(中略)
 20世紀の労働者たちには、労働時間とは別に自由時間があった。労働と自由の区別があった。しかし、21世紀の労働者たちは、その自由時間すら、テック資本主義のために労働させられる。しかも、繰り返すが、単なる労働ではない。れっきとした無償労働だ。」
   *
 しかも……
「監視資本主義とは、テック企業が人々の行動を常に監視し、そのデータを収集することで利潤を獲得するという21世紀の資本主義の在り方である。」
 さらに……
「(前略)私たちは、すでに予測資本主義(predictive capitalism)の時代に入りつつあるのだ。
 テック資本主義は、監視を通して、あなたの行動を予測する。あるショッピングサイトは、あなたが「購入ボタン」を押す前に「そろそろ押すはずだ」と予測して、すでに発送段階に入っている。(中略)
 もっと言えば、テック資本主義が目指しているのは、たんなる「予測」ではない。あなたが将来取るべき行動そのものを、前もって作ってしまうのだ。あなたの情報環境をコントロールして、あなたの選択肢をあらかじめ整備しておく。そのなかで、あなたは「資本主義の予測に合わせて行動する人間」になっていくのだ。」
   *
 うーん、なんかほろ苦い気分になりますが……その通りのような気も……。
 この後も、「これまで人間の手に頼っていた「約束」「契約」をネットの力で自動化し、正しく守らせる土台となるEthereum」とか、サイバー戦争、COVID-19のパンデミックが加速したデジタルトレンドとか、ChatGPTなどの生成AIとか、テック資本主義にまつわるキーワードがどんどん登場してきます。
 そして……
「スマートフォン、タブレット、ウェアラブコンピュータ、ウェブ検索、レビューサイト、ソーシャルメディア、人工知能チャット。
 テック資本主義は、さまざまな情報デバイスを世界中にバラ撒き、さまざまな情報アーキテクチャを世界中にバラ撒いた。世界中の人間たちが、マルチタスキングを強いられ、いくつもの情報デバイスを見つめながら、いくつもの情報アーキテクチャの囚人になっていった。
 それらは「目の前の不確実性から逃れたい」という古代から続くホモサピエンスの修正を利用したものだった。(中略)
 Big Techが強大な資本力で持って世界中からかき集めてくる膨大なデータ。そのデータに基づいて、アルゴリズムがあなたに最適な情報を与え続ける。あなたは、その情報を消費しては、安心感を得て、孤独を逃れて、そして次に何をすべきかを考えるようになった。」
 ……うーん、私たちは否応なく「Big Tech」の予測シナリオ通りのコースを歩まされているんでしょうか……。これについて大田さんは……
「我々は、結局のところ、明日からも情報と付き合っていくしかない。インターネットと付き合っていくしかない。
 そこで重要なのは、どこかの誰かが作ってバラ撒いたストーリーや答えばかりを消費しても仕方がないということだ。」
 ……そして、テクノロジーと友達になるのか、奴隷になるのか……
「いずれを選ぼうと、それはまぎれもなく、あなた自身の人生なのだ。」
 ……Big Techのシナリオ通りの道を歩んでいくかどうかは自分次第。テック資本主義の特性をきちんとわきまえつつ、自分がやりたいことを自分で選択していくべきだということなのでしょう。
『2030年の世界を生き抜くための テック資本主義超入門』……インターネットやテック資本主義について「楽しく」「総合的に」学べる早稲田大学の情報入門講義で、とても勉強になり、いろいろなことを考えさせられました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『テック資本主義超入門』