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第1部 本
ビジネス・経営
Breaking Twitter(メズリック)
『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』2025/3/26
ベン・メズリック (著)
(感想)
イーロン・マスクさんによるツイッター社買収の「驚愕の舞台裏」。なぜ彼はツイッター社を手に入れ、大胆な改革と大量解雇を断行したのか? ツイッター社社員が目の当たりにした彼の姿とは……関係者への徹底的な取材のもと、マスクさんの知られざる素顔に迫る衝撃作で、主な内容は次の通りです。
はじめに
プロローグ ツイッター本社に棲むビリオネア--2022年11月29日
【 第1部 買収 】
第1章 ワンチーム・カンファレンス
--2年以上前の2020年1月15日
第2章 ギガテキサス--2022年3月25日
第3章 不意打ちの株式取得--2022年4月4日
第4章 ツイッターの運営・管理
第5章 テキサス州ボカチカ
第6章 ウェブ会議--2022年6月16日
第7章 資金集め--2022年10月4日
第8章 トロールファーム
【 第2部 大量解雇 】
第9章 運をつかんだ者--2022年10月26日
第10章 占領--2022年10月27日
第11章 レイオフ
第12章 真夜中の侵入者--2022年10月28日
第13章 イーロン・マスク狂騒曲--2022年10月31日
第14章 終わりの始まり--2022年11月3日
第15章 炎上--2022年11月9日
第16章 突きつけられた二択--2022年11月16日
第17章 全社集会--2022年11月21日
第18章 ヨエルを襲う悪意--2022年12月11日
【 第3部 崩壊 】
第19章 シャペルのステージ--2022年12月11日
第20章 トラスト&セーフティの解体--2022年12月12日
第21章 位置情報--2022年12月13日
第22章 死の螺旋--2022年12月17日
第23章 民の声は神の声--2022年12月18日
第24章 ツイートする者はツイートによって滅ぶ
--2022年12月20日
第25章 沈みかけた船--2023年2月13日
第26章 孤独な人--2023年2月25日
エピローグ 爆発--2023年4月20日
訳者あとがき
*
冒頭には、次のように書いてありました。
「本書は、私が行ってきた取材や報道に基づき、創作的に物語るノンフィクションである。」
……ということで、本人が特定できないよう名前や特徴を一部変えてあるそうです。
本書は、イーロン・マスクさんによるTwitter(ツィッター)社の企業買収の顛末を描いたものですが、「訳者あとがき」によると……
「電気自動車のテスラや宇宙開発のスペースXなど並外れた実績を上げてきたイーロン・マスクが、2022年10月、ツィッター社(現X社)を買収し、すさまじい勢いで改革を始めた。買収からわずか1カ月半で社員数を4分の1近くまで減らすほど猛烈に人員を整理する、システムが不安定になるという技術陣の反対を押し切ってサーバーなどの機材をぎりぎりまで集約するという具合だ。(中略)もちろん、ツイッターの使い勝手に直接影響する機能やユーザーインタフェースにもどんどん手を入れた。そんなわけで、アルゴリズムの変更はもちろん、機材も集約しすぎて運用が不安定になるなど、その影響は日本のユーザーにも感じられるものになった。」
……実際、日本でもTwitterがXになり、そのゴタゴタぶりが感じられたことは、まだ記憶に新しいと思います。買収によって大量解雇が発生し、社員数が激減したことを耳にして、特にヘビーユーザーではなかったものの、色々な意味で「大丈夫なのか……」と不安に感じました。
この本で、マスクさんがなぜ急にツィッター社を買収したのか、その理由を知ることが出来ました。
「第5章 テキサス州ボカチカ」によると、マスクさんは「人類が地球大気圏の外まで広がるために、広大な宇宙を渡り、住むのに適した惑星に着陸して、自給自足の入植地を建設できる」ようにするためにスペースXを作って、成功を収めましたが、それを推進するためには……
「複数惑星に住めるところまで人類文明が到達するのであれば、その状態を十分な期間、保ちたいのであれば、文明が前に進みつづけ、暗黒時代に戻らないようにしなければならない。そして、意見を真に自由に交換できる世界のタウンホールは、ロケットブースターと同じく、前に進みつづけるのに必要である。」
……「意見を真に自由に交換できる世界のタウンホール」が必要だから、ツイッター社を買収したんですね……。
ところが彼が買収した頃のツイッター社は、かなり統制が緩んだ状態にあったようです。もともとツイッター社は創業時から「完全在宅勤務」を目指していて、完全リモートで仕事をしている人も多かったのですが、「分散型の働き方」へのシフトをきっかけに、働き方がどんどんルーズになっていたようです。
しかも「(前略)ツイッターは、フェイスブックやインスタグラム、スナップチャット、グーグルなどの巨大ソーシャルメディアに追いつくほどの成長を実現できなかった。報道、政治、娯楽を中心に世論の形成を左右する対話の場にはなったものの、同時に混沌とした遊び場でもあり、いつもどこかで火の手が上がっている状態だったからだ。」という状態でもありました。
紆余曲折を経た後、財政状態がとても良くなかったツイッター社を買収したマスクさんは、急激な大量解雇を行い、その一方では、見どころがあると感じた社員を大抜擢して即座に新しいプロジェクトを立ち上げるなど、怒涛の動きを始めます。
そして「言論の自由」を目指すマスクさんは、広告という足かせから解き放たれて「言論の自由」を守れる方法として、サブスクリプションで有料ユーザーを増やすことに力を入れ始めました。そのために行ったのがブルーチェックの有料化だったようですが、最初のやり方がかなり乱暴で、懸念した社員が大反対したのを押し切ってまで断行……予想通りというべきか、なりすましのアカウントが大量発生し、広告主から悲鳴の電話も殺到したことで、資格調査も行うよう変更するなどの方針変更を余儀なくされます。
どうやらマスクさんの「行動原理は事実でも専門知識でもなく、本能と直感」のようで、周囲からの「大人の意見」はほとんど聞き入れず、「とにかく自分の考えを試してみて失敗したら考えを修正する」という実証主義者のように思えました。
しかもその「高い理想」も「厳しい現実」の前では揺らぐようで、矛盾するような行動もかなりしています。
その一つが、マスクさんの息子さんが悪意のある人の車に追跡されるという危険に遭遇した時のこと。この一件で、彼は急激に方針を変更し、「身の安全が脅かされることから、誰かの位置情報をリアルタイムにさらすアカウントは凍結する」ことを宣言。しかも自分の息子を追いかけた人と車の映像をツイートして、「誰か見覚えはないか?」とネット上に「さらした」のです。この後、アカウント凍結祭りが始まり、マスクさんに敵対していた人のアカウントだけでなく、著名なジャーナリストも凍結され、米国自由人権協会の会長が、「言論の自由を求めるツイッターが批判的なジャーナリストのアカウントを凍結するのは、どうにも合点がいかない事態である。」と懸念を表明するに至りました。
これを受けてマスクさんは、「位置情報をさらしたアカウント凍結」に関するアンケートを投稿。その結果、「解除すべき」が多数派になり、アカウント凍結のほとんどは解除されることになりました。
この後も、自分が抜擢した社員や技術者まで解雇するなどの迷走を続けましたが、マスクさんの「ツイッターのトップから退くべきか」という投稿に対して、57%の人々が「退くべき」と回答してきたことから、ついにCEOを辞任するという結果になりました。
「エピローグ 爆発」には、ツイッターのマスクさんは、テスラやスペースXのマスクさんとは違って……
「(前略)平等な場、言論の自由、星空を渡る人類など、イデオロギーはすばらしいのに、それを具体化しようとしたとたん、混乱とごまかしと脊髄反射に堕してしまう」
……となっていたと書いてありました。
また「第22章 死の螺旋」には……
「言論の自由にまつわる問題は、エンジンの燃焼率などと違い、計算でどうこうできるものではない。言論の自由とはぐちゃぐちゃでわけのわからないものであり、対話から収益を上げるビジネスはほかと違う問題が起きがちだし、それがまた、いろいろと絡み合って惨事になりがちだ。」
……とありましたが、まさにその通りだと思います。
ところで本書を読んで、私自身は、「広告」は、もしかしたらネット社会の健全化に役に立っているのかもしれない、と感じてしまいました。
買収前のツイッター社のCEOのパラグさんは……
「(前略)その目標は、自由な言論ではなく、健全な言論だというのがパラグの考えだ。さらに健全な言論とはなんぞやと言えば、基本的に、ユーザーや広告主の気分を害さないもの、だ。」
……という考えを持っていて、買収以前のツイッター社では、「トラスト&セーフティ」部門が、次のような仕事をしていたからです。
「職務は、「ツイッター」そのもの、すなわち対話やコメント、トレンド、アカウントなどをリアルタイムに監視し、保護することだ。(中略)ヘイトスピーチや暴力的な脅しなどをみつけてつぶす。最近は、誤解を招くいわゆる「誤情報」の取り締まりが増えている。ちなみに、なにをもって誤情報というのかは、政治的・科学的・宗教的とさまざまな見地があるため曖昧模糊としてよくわからない。」
……この「トラスト&セーフティ」がなければ、大企業などにそっぽを向かれてしまうため、広告など売れはしないそうです。また、次のようにも書いてありました。
「(前略)規則はその場しのぎであってはならないし、しっかりと周知して透明性を確保しなければならない。それでもなお、「オンラインの公衆衛生管理という仕事は、厳しいし、物議を醸しがち」である。」
そして2016年の大統領選などで、ツイッターは白熱しましたが……
「なにもせず、拡散するに任せるのがとりあえず手軽である。言論の自由というものがあるのだから。でも対応しなければ、なにがしかの形でモデレーションをかけなければ、それもまた、大きな禍根を残すことになる。後日、ハッキングによるマテリアルと海外勢力によって生まれたスクープだったと確認されたら、ツイッター社がなにもしなかったから誤情報に大統領選挙を左右されたと非難されかねない。」
……というように「基本的に、ユーザーや広告主の気分を害さない」ようにすることは、単純に「自由な意見」を尊重するよりも、むしろ社会全体を良い方向に向かわせるものなのではないかと思ってしまったのです。本書を読むまでは、「広告は邪魔だけど、便利なネットを安価に利用するためには仕方ないもの」としか考えていなかったのですが……。
『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』……たった一人のビリオネアの強大な力を如実に知ることが出来て、いろんな意味で衝撃的で、考えさせられることがたくさんあった本でした。ノンフィクションですが、小説風で読みやすいので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
なお「訳者あとがき」によると、本書はツイッター社の側から買収を見ているものですが、この買収をマスクさんの視点から見ているのが、『イーロン・マスク(上)』『イーロン・マスク(下)』(ウォルター・アイザックソン著)だそうです。興味のある方はそちらも読んでみてください(以下の商品リンクには両方をのせています)。
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