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第1部 本
天文・宇宙・時空
宇宙暗黒時代の夜明け(島袋隼士)
『宇宙暗黒時代の夜明け 21cm線電波で迫る、宇宙138億年史 (ブルーバックス B 2314)』2025/11/20
島袋 隼士 (著)

(感想)
宇宙が誕生してから数億年、光を放つ星も銀河もなく、ただ水素ガスが広がるだけの「暗黒時代」が続いていました。そこから、最初の星や銀河が生まれ、宇宙に光が満ちる「再電離期」へと移り変わります。では、その決定的な転換は、いつ、どのように起こったのでしょうか。
その謎を解く手がかりとなるのが、21cm線と呼ばれる中性水素からの微弱な電波。陽子と電子のスピンが反転するときに放たれるこの電波は、宇宙に満ちる水素ガスの「声」とも言えるもので、可視光では見えない宇宙の深淵を、電波という窓から覗くことができるのです。
そんな21cm線を用いた観測によって宇宙の黎明を探る研究を、最新の成果とともに紹介してくれる本です。
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「(前略)宇宙138億年の歴史では星や銀河の存在しない「宇宙暗黒時代」があり、その後、ファーストスターや初代銀河、ブラックホールが形成されて「宇宙の夜明け」が始まります。その後、それらの天体から放射される紫外線によって宇宙に存在する水素が電離する「宇宙再電離期」があり、宇宙再電離期が終了した後、現在の宇宙につながるのです。」
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そして第3章によると、ビッグバンが始まった直後の宇宙の温度は、なんと10の27乗ケルビンだったのですが……
「ビッグバンから数マイクロ秒が経過すると、宇宙に満ちていたクォークとグルーオンが結びつき、陽子や中性子が形成され始めます。その後、宇宙は膨張に従って急速に冷却し、ビッグバンからおよそ1秒後には温度が約100億ケルビンにまで下がります。(中略)
温度が100億ケルビンに達すると、陽子と中性子の反応が活発になり、核融合反応が進行します。これによって宇宙初期の元素が合成される現象を「ビッグバン元素合成(あるいはビッグバン核融合)」と呼びます。(中略)
ビッグバンから約1秒が経過すると、本格的な核融合反応が始まります。まず中性子と陽子が結合して「重水素(デューテリウム)」が生成されます。」
さらに……
「(前略)ビッグバンから約3分が経ち、宇宙の温度が10億ケルビン以下に下がると状況は一変します。光子のエネルギーが低下するため、最早、重水素を破壊することができなくなり、重水素が安定して存在できるようになります。すると、重水素同士が反応し、まずヘリウム3が、さらにそれが中性子と反応することによってヘリウム4が合成されます。」
……ビッグバンの後、宇宙に大量の水素とヘリウムが作られましたが、水素の大部分は中性状態のガスで、これが光や紫外線を吸収するので、宇宙は「霧」につつまれていたそうです。
その後、「宇宙再電離」が起こって霧が晴れていき、星や銀河がどんどん生まれていきました。
この「宇宙再電離」などを詳しく調べることができるのが、21cm線信号だそうです。
21cm線信号は中性水素からしか出ないもので、水素が電離されると21cm線信号は失われるそうです。この21cm線画像を解析することで、再電離がどのように進行していったかを「可視化」できる……21cm線信号は天文学にとって重要な情報を教えてくれるものなんですね。
ただし「宇宙暗黒時代から宇宙再電離期に存在する中性水素からの21cm線電波の検出には至っていませんが、初検出に向けて着実に歩みを進めています。」という状況のようですが……。というのも21cm線信号の観測には「前景放射」「人工電波」「電離層」「観測装置のノイズ」など、いくつもの困難があるようで、現在、天文学者たちはその難問に立ち向かっているそうです。
最終章では、SKA(巨大電波望遠鏡)を構築することで、21cm線信号の検出などを行おうとするヨーロッパを中心とした国際共同プロジェクトや、月に月面電波望遠鏡を建設する計画などについても紹介されていました。月面電波天文学については……
・「(前略)月には地球のような大気がなく、人も住んでいません。特に月の裏側は、地球からの電波や電離層の影響を受けないため、21cm線信号をクリーンに観測できる理想的な場所として期待されています。実際、アメリカ、ヨーロッパ、中国、インドなどでは、月面に電波望遠鏡を建設しようという計画が進んでいます。」
・「日本でも、JAXAを中心に「TSUKUYOMI計画」という月面電波望遠鏡の構想が進められています。」
・「このように、月を活用した天文学の可能性は世界中で注目されています。21cm線信号の観測だけでなく、月面天文台でしかできない科学、たとえば系外惑星のオーロラや天気、磁場環境の観測なども期待されています。月は、これからの天文学にとってまさに新たなフロンティアとなるでしょう。」
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『宇宙暗黒時代の夜明け 21cm線電波で迫る、宇宙138億年史』……「なぜ宇宙に星や銀河が生まれたのか」という138億年にわたる宇宙進化の謎について、現在分かっていることや、最新の研究プロジェクトなどを分かりやすく解説してくれる本で、とても勉強になりました。
この他にも、人類の宇宙観の変遷や、アインシュタインの一般相対性理論、膨張宇宙論から導かれるビッグバン宇宙など、宇宙の歴史についての総合的な概説もあります。一見すると、かなり難しい内容のようで、きっといつか私の手には負えなくなるんだろうなーと、内心冷や冷やしながら読み進めていったのですが……島袋さんの文章がとても分かりやすかったおかげで、最後まで楽しく読むことができました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『宇宙暗黒時代の夜明け』