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第1部 本

自己啓発・その他

眠れる進化(ワグナー)

『眠れる進化: 世界は革新【イノベーション】に満ちている』2024/9/19
アンドレアス・ワグナー (著), 大田 直子 (翻訳)


(感想)
 地球生命史上、樹脂は40回、大臼歯は20回も「発明」された末にようやく成功をつかみ、ヒトは歴史上、温度計を7回、レーダーを6回も「発明」していた……革新(イノベーション)は決して特別なものではない……進化生物学で、この世界の隠れたルールを解き明かしている本です。
 本書のキーワードとなるのが「眠り姫」。これは「多くの生命形態が爆発的な成功を収める前には、きわめて長い休眠状態を経るという現象」を意味しています。
 序章に本書の概要となる記述があったので、まずそれを紹介します。
「自然の分子創造から人類のテクノロジーまで、本書の例は四〇億年におよぶイノベーション史の随所から引いている。数え切れないイノベーションが時期尚早に生まれている。そういうイノベーションは自分の時期が来るまでじっと待つ。どんなに重大で革新的であっても、イノベーションはそれを受け入れる環境が見つかってはじめて成功する。適切な時期、適切な場所に生まれる必要があり、さもなければ失敗する。」
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 例えば草は、低い位置の分裂組織、草食動物に対する防御(樹脂やリグニン)などさまざまなイノベーションを、最初からいくつも進化させていたのですが、なかなか成功しませんでした。そんな草が成功するためには、地球の気候変動が必要だったのです。
 そしてこのような状態は、草や生物などの「自然」だけでなく、道具などの「人工」のイノベーションでも、同じような経緯を辿ることが多数の事例で紹介されています。
「イノベーションは即座に生まれ、しかも頻発している」
「なかには時期尚早に生まれたために絶滅するものもある」
「イノベーションはふさわしい環境と出会ってはじめて役に立つ」
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 実は遺伝子レベルでも同じようなことが起こっているのです。第5章には、次のように書いてありました
・「自然はひっきりなしに、新しい遺伝子や新しいリン酸塩スイッチのようなゲノムの発明を生み出す。すぐに成功するものはごくわずかで、しばらくしてようやく成功するものが多く、大部分はまったく成功しないという意味で、人類の発明と似ている。」
・「(前略)休眠状態の遺伝子を目覚めさせるには、環境の変化が欠かせないのかもしれない。」
 ……また、次のようにも。
・「(前略)私たちの知性が本領を発揮するアイデアの世界でも成功はまれで、眠っている発明、死んでしまった発明、死にかけの発明がたくさんある。遺伝子の分子の世界と同じだ。そして類似性はそこで終わらない。どちらの世界でも、今日の敗者が明日の勝者になることもある。」
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 なるほどなー、と多数の事例を背景とした「説得力」に納得させられたのですが(笑)、本書の凄いところは、それではどのようにすれば成功率を高められるのかについてまで、アドバイスがあったところ。最終章の第10章には、「クリエイターが成功するのを助ける2つの処方箋」として……
1)世間に耳を傾け、それが欲しているものを見つけること
2)世間を変えて、イノベーションが成功できる環境をつくること
 ……確かに。イノベーションは、それが役に立つ環境があってこそ成功するのですから、この2つの処方箋は正しいと思います……でも……これはある意味、当然のことを言っていて……これが出来るなら苦労しないですよね……とモヤモヤしていたら、さらに次のことも書いてありました。
・「(前略)最も大きな成功を収める科学者は、生涯にわたって最も多く成果を発表する人である傾向があることだ。」
・「(前略)認知されない珠玉をつくりだす時間は、つくり出すことそのものの理由が喜びと楽しさと愛であるなら、費やす価値のある時間なのだ。」
 ……なるほどー(笑)。成功率を上げるには「たくさん出す」ことも大事ですよね(笑)。それにたとえ成功しなくても、努力そのものが楽しければ、それでいいと考えることもできますね(苦笑)。
「天才は集団より数歩先を行っているに過ぎない」……「天才と狂気は紙一重」とよく言われますが、実際には、天才が紙一重なのは、我々一般人なのかもしれません(笑)。
『眠れる進化: 世界は革新【イノベーション】に満ちている』……まさにタイトル通りの本で、とても面白く読めました。
 ここで紹介した以外にも、「遺伝子の分子時計」、「遺伝子水平伝播」、「攻撃者の毒をむしろ利用してしまう生物」、「抗生物質耐性」、「非コードDNA」、「社会的学習」、「クモや昆虫にさえ数感覚がある」、「AIの深層神経回路網の数感覚」、「読字能力」、「類推と隠喩の力」など、興味深い話が満載でした。とても勉強になったので、みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『眠れる進化』