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第1部 本

ユーモア

あの子とQ(万城目学)

『あの子とQ』2022/8/18
万城目 学 (著)


(感想)
 人間社会に溶けこんだ吸血鬼の女子高校生・嵐野(あらしの)弓子の平和な日常に、17歳の誕生日直前に突然、怪しいトゲトゲの物体・Qが登場してきて、大騒動が巻き起こっていく青春ラブコメ・アクション・ストーリーです(笑)。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 嵐野家は吸血鬼一家なのですが、父も母も弓子も家族全員が「人間の血を吸わない」吸血鬼(笑)……いや、それ、すでに吸血鬼ではないのでは? ……という気がしないでもありませんが、それは17歳の誕生日まで「人の血を吸わない」まま、17歳の誕生日に儀式を終えると「血をまったく吸わない(血の渇きに惹かれなくなる上に、人間の血を吸っても何も変わらなくなる)」脱・吸血鬼になれるということで……父母はすでにその儀式を終えていますが、弓子は「未定」の吸血鬼なのです。ふだんは親友の女子高生ヨッちゃん(吉岡優)と学校生活を楽しんでいますが、実は、人間より夜目が利くし、身体能力もずば抜けて高いことを隠して生きているのでした。
 そんな弓子が、もうすぐ17歳の誕生日が来るある朝、目が覚めると、部屋に何かトゲトゲの醜い物体「Q」が現れていて、こう言うのです。
「脱・吸血鬼の儀式が終わるまで、お前が人の血を吸わないか監視に来た」
 ……こうして弓子は、怪しいQの監視のもとで、誕生日までの十日間を過ごさなければならなくなるのです。この儀式さえ無事に終えられれば、不死でなくなり子孫も作れるのですが、それまでに一度でも人間の血を吸うと、生涯「血の渇き」に悩まされる吸血鬼になってしまう……でも、もともと吸血にまったく興味もなかった弓子は、とにかくQの終日監視がうっとうしくて仕方ないのです。
 それでも学校生活は何事もなかったかのように、ほのぼのと続いていくのでした。というか……弓子に大変なことが起こったその日に、親友のヨッちゃんが、憧れの男子バレーボール部のキャプテン・宮藤豪太に告白をすることを決めてしまい、ドロドロなんだか、ドキドキなんだか、暗闇感と陽だまり感に目が眩みそうな「平和そうな」日常が……(笑)。
 こうして物語は、吸血鬼・弓子のシュールな日常と、宮藤としだいに仲良くなっていくヨッちゃんのラブコメ的日常が、同時並行的に展開していくのですが、宮藤の友人・蓮田と彼女たちの四人でダブルデートした日から、急転直下、予測不能な方向に転がっていくことになるのです。
 この後は、江戸初期に長崎で生まれた日本人第1号の「原・吸血鬼」や、太陽を恐れ吸血してこそ吸血鬼という原理主義の「宿命派」など、闇側の新たな登場人物も出てきて、彼らの思惑が不穏に交錯していきます……そしてQの真の姿を知った弓子は……。
 ……どんどんドラゴンクエスト的な冒険物語になっていって、すごくワクワクしてしまいました。吸血鬼たちの潜む洋館に囚われたお姫様(?)を救い出すヒーロー(ヒロイン?)は、もちろん女子高生の弓子! いつもながらの万城目ワールド全開で、弓子のまっすぐな性格の良さが世界を救う!(たぶん、きっと……)。
 弓子の強い思いに心が痺れたので、ちょっぴりネタバレで弓子の台詞を……。
「(前略)あなたがみんなを助けてくれたからでしょ? それなのに、あなたが死刑になるなんて……。そんなの絶対におかしい。だから、ここに来たの。ロージュの人たちには、私から話す。あなたは何も悪いことはしていない。私や、私の大事な友達の未来を守っただけだって。むしろ、誇るべきことをしたんだって――」
 ……ホント、そう。どんな時にも、正しい人が正しく判断される(そして報われる)、そんな世界であって欲しいと願っています。
 さて弓子の冒険も終わり、ついに物語も終わってしまうんだなー……と寂しく最後のページを開いたら……最高の結末が待っていました。またまた、ちょっぴりネタバレですが最後の文章を……。
「大きな再会と、再びの冒険」
 なぜだろう。
 砂時計がひっくり返されて溜まった砂が音もなく流れだすように、すでに何かが始まっている気がした。
   *
 ……や、や、やった!
 これって、つまり続編あり、ってことですよね?
 わーい☆ 楽しみ!
 ネットを探したところ「すでに続編の構想を温めている」というインタビュー記事もあったので、本当に「続編」があるようです。待ってまーす☆
『あの子とQ』……とても面白いラブコメ吸血鬼冒険譚です。みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆

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『あの子とQ』