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第1部 本

生物・進化

世界は進化に満ちている(深野祐也)

『世界は進化に満ちている (岩波科学ライブラリー 334)』2025/6/24
深野 祐也 (著)


(感想)
 進化という現象は、壮大で時間がかかるとは限らない。とても短期間に、しかも私たちのすぐそばで起こっていることもある……進化学者の深野さんが、さまざまな事例とともに進化について語ってくれる本で、主な内容は次の通りです。
 まえがき
1 これを読めば進化がわかる!
2 進化は時としてあっという間に起こる
3 都市で起こる進化
4 外来種ももちろん進化する
5 保全の現場で起こる進化
6 これからの進化を予測する
 エピローグ
 文 献
   *
「1 これを読めば進化がわかる!」によると、進化とは、「集団の遺伝子頻度が世代を経るに従って変化していくこと」で、「生物のある性質が遺伝の影響を受けていて、集団の中でその性質をもっている個体の割合が時間とともに変化すること」だそうです。
 そして「2 進化は時としてあっという間に起こる」によると、「世代時間の短い生物に、強い自然選択がかかったときに急速に進化が起こる」ことがあるそうです。
 実際にハマダラカが、急速にDDTに耐性をもったことが事例として紹介されていました。DDTは、節足動物の神経細胞にあるナトリウムイオンチャンネルに作用することで節足動物を死に至らしめるのですが、このナトリウムチャンネルに変異があるものには作用しません。DDT散布によって、この変異をもつものが一気に有利になって、急速に数を増やしていったのだとか……このように農薬の散布によって農薬が効かない性質が広まることを、抵抗性の進化というそうです。
 また産業革命が起こした進化の例として有名なイギリスのガ。石炭の使用が進むとともにガの暗色化が起こったのですが、石炭の使用が減少して大気汚染が減少すると暗化が減少して再びもとの明色型が増えたそうです。この「ガの暗色化」は産業革命のさなかにマンチェスター辺りで起こった、たった一度の突然変異によるものだったことが、DNAでの調査で分かっているのだとか。
 さらに……
「(前略)環境変化が強すぎたり速すぎたりすると、進化が追いつかない場合があります。その結果は、全ての個体が死に絶える、絶滅です。」
 ……人間の狩猟は、多くの種の絶滅を促進するほど強いものだったそうです。
 また人間の漁業によって、海の生物も変わりつつあります。例えばタラは、強い漁獲圧によって「より早く小型の状態で成熟し繁殖する」ように変化していて、もしかしたら漁業によるこのような進化圧が、漁業自体の持続性を危うくするかもしれないとも指摘されていました(魚の小型化が進むと儲からなくなるため)。
 この章では、「変異・選択・遺伝という進化の原則」が、次のように語られていました。
「狩猟採集に関連した進化の事例を眺めてみることで、自然選択による進化理論の普遍性・予測可能性・多様性が理解できたかと思います。(中略)大きな個体や目立つ個体が選択的に死んでしまう状況では、小型化や早熟化する進化が起こりやすい。場合によっては、牙がなくなったり、カモフラージュしたり意外な性質でも進化が起こる。人間は、多種多様な生物を狩猟採集して強い影響を与えてきました。人間が引き起こした進化を解明することは、生物を保全するためにも持続的に利用するためにも必要です。一方で、これらの進化の事例は、変異・選択・遺伝という進化の原則が、さまざまな生物種や現象に適用される普遍的な理論であることを鮮やかに描き出しています。」
 ……生物は、進化によって環境変化に適応しているんですね……。
 これ以降の「3 都市で起こる進化」、「4 外来種ももちろん進化する」、「5 保全の現場で起こる進化」でも、さまざまな環境変化に、生物が「進化」と「学習」で巧みに「適応」していることが、都会では赤く葉色を変えるカタバミや、より高い周波数で鳴くようになった鳥類などの多くの事例とともに語られていました。
 そして「6 これからの進化を予測する」では、今後も生物たちは、変化していく環境に対応して進化していくだろうということが書いてありました。
「地球温暖化が新たな選択圧となることで、耐熱性が向上し成長スケジュールが早期化する。このような進化はさまざまな動植物で起こっているはずです。進化的変化は、環境変化の大きさと世代数に依存します。近い将来、地球温暖化が現在よりさらに激烈になり、長期化するにつれ、いろいろな生物の適応進化が一斉に顕在化するかもしれません。」
 ……そして最後の「エピローグ」では、宇宙空間の国際宇宙ステーション(ISS)にいるのは人類だけではなく、細菌・ウイルス・真菌などの微生物もいて、その多様性が増加しつつあるとして……
「(前略)微生物は世代時間が短いため、すでに宇宙空間への適応が起こっていても不思議ではありません。」
 ……なるほど。微生物は、宇宙空間の微小な重力、強烈な放射線、真空、極端な温度変化などの厳しい環境に、すでに適応しつつあるのかもしれませんね……。
 この章には、次のようにも書いてありました。
・「(前略)月であれ火星であれ太陽系外惑星であれ、生物進化の原理は変わりません。変異・選択・遺伝があれば、生物はどんな新しい環境でも適応しつづけます。進化理論の普遍性が宇宙空間でも確認される日が来るのが楽しみです。」
・「(前略)遺伝的に均質な人が少人数で移住すると、近交弱勢や遺伝的浮動の影響で、有害遺伝子が蓄積し集団の存続が危うくなります。そのため、長期的に人類が存続するためには、遺伝的に多様な人たちで構成される数千人規模の移住が必要となるでしょう。」
・「未来は予測できません。しかし、どんな未来であっても変わらないことがあります。それは、進化の原理です。どんな未来であっても、そこに生物がいる限り、進化は起こります。」
   *
『世界は進化に満ちている』……どんな未来でも、生物はしたたかに進化し続けることを教えてくれる本で、とても面白くて勉強になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『世界は進化に満ちている』