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第1部 本

生物・進化

空飛ぶ微生物(牧輝弥)

『空飛ぶ微生物 気候を変え、進化をみちびく驚きの生命体 (ブルーバックス B 2306)』2025/9/18
牧 輝弥 (著)


(感想)
 我々の健康だけでなく気候にすら影響を与え、砂漠と海を繋いで物質循環にも貢献し、生命の起源と進化にも重要な役割を果たしてきた「大気微生物」。上空数万メートルを旅して、雲をつくり雨を降らせ、ときに宇宙まで飛び出す? そんな驚きの生命体「大気微生物」について詳しく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 大気微生物とは何者か――もっとも身近な微生物の正体
第2章 大気微生物はどこから来てどこへ行くのか――砂漠・海・森からはじまる過酷な空の旅
第3章 気候を変える大気微生物――雲をつくって生息域を拡大する生存戦略
第4章 物質を循環させる大気微生物――砂漠と海をつなぐ配達人たち
第5章 人類と大気微生物――新型コロナから納豆菌まで
第6章 宇宙を旅する大気微生物――生命の起源と進化に果たした役割
   *
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「目には見えませんが、空気中には膨大な数と種類の微生物が漂っています。海、山、田や畑、砂漠、人体などから舞い上がり、空を飛ぶようになった微生物は「大気微生物」と呼ばれます。」
 そして「第1章 大気微生物とは何者か」では、なんと世界初の大西洋単独横断飛行を成功させたリンドバーグさんが、「大気微生物」を採取していたことが紹介されていました。植物学者のマイヤーさんが、リンドバーグさんに上空の微生物を飛行機で採集してくれるように依頼。飛行中に彼が、採集箱を開けて油を塗ったガラスに上空の大気を付着させると、カビやシアノバクテリアなどが採取されたそうです。リンドバーグさんは生物学にも貢献していたんですね……。
 さて、大気中にはたくさんの微生物がつねに浮遊しているので……
「人の一呼吸で肺に入る微生物は少なくとも50個。人は一日あたり平均125万個もの微生物を吸いこんでは、吐いている。」
 ……うわー、そうだったんだ。しかも……
「(前略)あらゆる微生物は肺の奥にまで達する可能性を秘めているのです。微生物以外にも、花粉、昆虫、動植物の破片なども大気中を漂っています。」
 ……そして、実は私たち自身もその発生源になっているそうです。
「(前略)人は、皮膚や髪、呼吸器に生息する微生物を大気中にまき散らして生活しており、それが部屋の空気中を漂う微生物の源になるのです。」
 ……でも実際に空気中を生きて浮遊できるのは、ごく一部の微生物だけなのだとか。
「(前略)多くの微生物は、空気中に舞い上がると、乾燥して干からび、紫外線で細胞機能が破壊されます。」
 ……だから紫外線に耐えられる色素や構造をもてるようになった微生物が、空気に乗って生息域を広げているようです。
 また黄砂などの粗大粒子の凸凹は、入り込んだ微生物細胞にとって紫外線や乾燥からの遮蔽になるようで……
「(前略)黄砂の粒子は、付着させた微生物を守り、数千kmにわたる長距離を運ぶので、「微生物の空飛ぶ箱舟」といわれます。黄砂の鉱物粒子に限らず、煙霧のスス粒子や、森林からの花粉なども、微生物に比べると大きく、付着した微生物を延命させる運搬体となります。」
 ……さらに風だけでなく、雨も微生物を飛ばしているようで……
「(前略)雨粒が植物や土壌の表面を叩くと、その衝撃で表面の粒子が空気中にはじき出され、森林から漂う微生物の数や種類はむしろ増えます。」
 ……また海からも微生物が大気に舞い上がるようで……
「(前略)日本内陸であっても海洋から海水の塩と一緒に微生物も飛来します。海からは海水の成分である塩化ナトリウムやマグネシウムなどが大気中に舞い上がり、海塩粒子として大気中で頻繁に検出されます。(中略)
海水成分が運ばれるなら、海洋微生物が日本全土に運ばれていても不思議ではありません。(中略)
大気に飛び出す海洋微生物はその大半がプランクトンです。」
 ……さらに人間の生活圏でも……
「(前略)農耕地や畜舎、放牧地、下水処理場、工場、ヒト生活圏などで大気微生物は主に発生します。」
 ……そして、これらの微生物を解析するためには……
「(前略)空気中に浮遊する微生物を網羅的に解析するためには、大気粒子から微生物由来のゲノムDNAを直接抽出し、その遺伝子配列を解析する「メタゲノム解析」が使用されています。」
「メタゲノム解析が進展すると、大気中には微生物が恒常的に浮遊しており、その種は数百種に及ぶことがわかってきました。」
 ……また、微生物は、雲の形成や地球大気循環に関わっているのかもしれないそうです。
「(前略)実際の観測結果から、微生物などの生体粒子が、実大気での氷晶核に占める割合は大きく、雲形成に強くかかわっているとみなされています。」
「(前略)氷核活性微生物は、自身が生残する生存戦略を進化させるうちに、雲を介して地球大気の循環に関わってきたのかもしれません。」
 ……大気微生物は、地球規模で動いているのかもしれないようです。
「(前略)大気中を舞い始めた微生物細胞やその胞子は、上昇気流で上空に上り、風にのれば、数千kmの距離を地球規模で運ばれます。こうして、砂漠や森林で生まれた微生物であっても、太平洋や大西洋などの外洋に風にのって引っ越しできるのです。大気中で生きて移動できる微生物は、粗大粒子に付着し、環境ストレスを回避できたものがほとんどです。」
 ……なんと牧さんは、この大気微生物を利用した食品を作っているようで……
「(前略)能登上空300kmから採集したバチルス・サブチリスで製造した納豆は粘りがひかえめな特徴をもち、「そらなっとう」と命名されて北陸一帯で市販されています。」
 ……空飛ぶ納豆菌が、食品になっているんですね☆
『空飛ぶ微生物』……気候を変え、進化をみちびいてきた驚きの生命体「大気微生物」について詳しく解説してくれる本で、とても興味津々でした。
最初に「人は一日あたり平均125万個もの微生物を吸いこんでいる」を読んだ時には、うわー……と思わず息を止めてしまいましたが(笑)、微生物は大気循環や、生物進化にも深く関わっていて……地球や生命にとって大事な役割を果たしているものでもあるようです。地球起源の「空飛ぶ微生物」が「宇宙まで飛んで」、他の星で新たな生態系を作る……そんな可能性も皆無ではないのかも? 興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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『空飛ぶ微生物』