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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

地理院地図の深掘り(今尾恵介)

『遊べる、学べる、役立てる 地理院地図の深掘り』2025/5/22
今尾 恵介 (著)


(感想)
「地理院地図」とは、国土地理院(国土交通省)が発信するウェブ地図。誰でも無料で、パソコン、スマートフォンなどを用いて利用できます。
国の基本図とされる地形図はもとより、年代別の空中写真、標高、地形分類、災害情報など多種多様な情報にもアクセスできます。また、これらの情報を用途に合わせてセレクトし、重ね合わせて「自分だけの地図」が作れることも魅力の一つ。
「100人いれば、100通りの使い方ができる」「まるでファミレスのようなメニューの多さ」とまでいわれる地理院地図の楽しみ方・使い方を教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 紙では望めなかった機能あれこれ
第2章 いろいろと測ってみよう
第3章 多種多様な地図を使おう
第4章 自分だけの地図を作ろう
第5章 防災に役立てよう
「はじめに」には次のように書いてありました。
「地理院地図の良さは、何といっても誰もが必要に応じて多種多様なメニューから適した地図を選べることである。」
……「地理院地図」では、地図だけでなく、年代別の写真なども見ることができるそうです。
 また「国土地理院以外の機関によって作成(協力も含む)された地図が閲覧できるのも魅力だ。」とのことで、例えば「地質図」、「全国植生指標データ」、「指定緊急避難場所・指定避難所データ」などが見られる他、「確率論的地震動予測地図」「地すべり地形分布図日本全国版」「活火山分布」などにもアクセス可能なのだとか。
 ところで「第1章 紙では望めなかった機能あれこれ」によると、「ネット地図には縮尺がない」そうです。
「(前略)パソコンやスマホの画面に表示するネット地図では、表示されるディスプレイの大きさが機種や利用者の設定によって一定しないため、縮尺の数値を発信者側では決められない。
 そんなわけで、地理院地図でも左下に表示された小さなモノサシ(スケール。ズームレベル15の場合に300m、同じく10の場合には10kmなど)を目安にするしかないのである。」
 ……そうだったんですね……でもちゃんとモノサシがついているなら安心ですね。
 デジタルの「地理院地図」では、なんと「自宅玄関と裏口の標高差さえわかる」そうです(笑)。
「地理院地図が紙地図と違う最大のポイントは、地点の標高がすぐにわかることだ。
 地図右上の「設定」で「中心十字線」がオンになっている場合、その「+印」が指す地点の標高が示されている。」
 ……それは凄い。しかも「地理院地図には3Dモードがある。」そうで……
「画面の左下には「高さ方向の倍率」があって、その右側のスライドの操作によって最大10倍まで高さを誇張することができる。」
 ……これを利用すると、「渋谷の見えざる「川」も浮かび上がる」のだとか。
 さらに「立体模型」までも作れてしまうのです!
「3Dモードからプリンタ用データをダウンロードできるので、さまざまな立体地図、立体模型が創れる。用途は多彩で、博物館用、災害把握用、情報番組の解説用など、幅広く利用されている。」
 ……「地理院地図」……なんて使えるサイトなんだ……。
「第2章 いろいろと測ってみよう」では、「東京~ロンドン間も1m単位で計測できる」とか、「面積も測れる」とか、さまざまな使い方についての解説がありました。
 続く「第3章 多種多様な地図を使おう」では、「地形」の成り立ちが一目瞭然の「地形分類図」や「土地条件図」、「陰影起伏図」についても解説されています。
 山の形だけでなく溶岩の流れもリアルにわかる「陰影起伏図」は……
「(前略)このモードは、北西(左上)から光線が当たったと仮定した影が付けられているが、この方向は人間が立体を把握するのみ最も適しているのだそうだ。」
 ……これは普通のデスクライトがその位置についている(鉛筆を持つ右手の影が本やノートに落ちないようにそうなっている)ので、とても合理的だと思います。
 そして普通の地図とこの「陰影」を同居させるには……
「(前略)陰影起伏図だけでは地名も鉄道も何も表現されていないので、「標準地図」の内容も併せてみたい。そんな場合は、陰影起伏図の透過率を上げればよい。」
 ……こういう方法で、「標準地図」と他の地図を重ね合わせると、いろいろな情報がとても使いやすくなるようでした。
また富士樹海の「隠れた地形」も可視化できる「赤色立体地図」は……
「(前略)等高線という「線」で表現していた地形を、「赤色の彩度と明度」を使って「面」で表現することで、微地形さえも、よりわかりやすく表現することが可能になったのだ。」
 ……そして、よく山の地図として利用されるこの地図が、なぜ赤いのかというと……
「(前略)この色を選択した理由は、人間の網膜には赤を感じる錐体細胞が多く、わずかな彩度の違いも敏感に知覚できて、地形をより把握しやすいからだという。」
 ……へえー、そうだったんだ! この地図に関しては、山によく使われるので、緑や茶色の方が良いんじゃないかなーと思っていましたが……私たちは「赤」の識別が得意だから、赤が使われていたんですね!(勉強になりました)
 そして「第4章 自分だけの地図を作ろう」では、TVでマラソンの番組を見る時、よく出て来る「コースの断面図」のようなものを、自分で簡単に作れることが書いてありました。
「「地理院地図」には「断面図」モードがある。これを使えば指定した地域の地形の特色やコースのアップダウンなどの様子が一目瞭然なので、さまざまな応用が可能だ。」
 ……これは山歩きなどでも使えそう!
 さらに「地理院地図では地名や駅名、公共施設などの検索ができる」そうで、例えば「鎌倉」を検索すると、「鎌倉」の地名だけでなく、「鎌倉山」「鎌倉高校前駅」「鎌倉彫資料館」などの部分一致も含めて、候補地が青い旗で地図上に表示されるそうです。
「第5章 防災に役立てよう」では、自分の家の「災害リスク」も推測できるようで、例えば東京都心部については……
「揺れの大きさは、沖積平野と台地では大きく異なる。関東大震災では火災被害がとにかく甚大だったのであまり注目されていないのが、土地条件による震度の違いだ。気象庁のサイト「関東大震災から100年」特設サイトでは、東京都心部の震度を色分けした地図が掲載されている。」
 ……また「地形分類図」では、その土地が、比較的地盤が安定している「切土地」なのか、浸水・地盤崩壊・液状化などのリスクが比較的高い「盛土地・埋立地」なのかも分かるようでした。
 そしてとても素晴らしいと思ったのが、大規模な災害が起きた時の地図データ。
「(前略)大規模な災害が起きた際に、国土地理院は各種の地図データを随時提供している。」
 ……ということで、例えば2018年7月の西日本豪雨の時、国土地理院応用地理部では、災害時の初動対応として浸水現況図を作成することになったのですが、悪天候や夜間では空中撮影の機会を掴むのが難しかったので……
「一般の人がSNS上に投稿した写真などの内容および位置情報と、5mメッシュの標高データを組み合わせて、浸水範囲と浸水の深さを面的に算出した。」
 ……「車が浸かった写真」や「腰まで浸かりながら歩いている写真」の位置情報を基に、高精度の標高データと組み合わせて、浸水範囲と浸水の深さを算出したようです……これは、リアルに使える地図情報ですね! とても有難いです……。
『遊べる、学べる、役立てる 地理院地図の深掘り』……誰でも無料で、パソコン、スマートフォンなどを用いて利用できる「国土地理院(国土交通省)のウェブ地図」について、具体的に詳しく教えてくれる本で、とても参考になりました。本書によると……
「(前略)「地理院地図」は誰もがインターネット経由により無償でアクセスできる地図情報となり、本書でその一端を紹介したように、単なる「地形図のデジタル化」をはるかに超えて、多種多様な地図情報を利用するためのプラットフォームとなった。そして今日も着々と進化し続けている。」
 ……「地理院地図」は本当に有益な情報なので、今後も進化し続けていって欲しいと願っています。
 みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『地理院地図の深掘り』