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第1部 本
数学・統計・物理
「原子・素粒子・量子の世界」のことが一冊でまるごとわかる(齋藤勝裕)
『「原子・素粒子・量子の世界」のことが一冊でまるごとわかる』2025/2/3
齋藤 勝裕 (著)

(感想)
「原子・素粒子・量子の世界」について、原子、電子を専門とする化学的な観点から量子の世界を分かりやすく解説してくれる入門書です。
世界をつくっているのは「原子」と考えられていましたが、その原子の構造を明らかにする過程で量子論がつくられて発展し、原子よりももっと「世界をつくる最終的な粒子」として「素粒子」があることが分かってきました。
その素粒子には、次の3つのグループがあるそうです。
1)物質をつくる素粒子:フェルミ粒子
2)力を伝える素粒子:ゲージ粒子
3)質量を与える素粒子:ヒッグス粒子
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……このフェルミ粒子には、「クォーク」としてアップ、チャーム、トップ、ダウン、ストレンジ、ボトムがあり、「レプトン」として電子、ミュー粒子、タウ粒子、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノがあります。そしてゲージ粒子には、フォトン(光子)、グルーオン、Wボソン、Zボソンがあります(なお、ヒッグス粒子はヒッグス粒子だけです)……こんなに色々な素粒子があるんですね。
そして素粒子が集まって陽子や中性子のような粒子をつくるためには、互いを寄せ集める力が必要ですが、その力をつくっているのも素粒子で、力には次の4種類があるそうです。
1)電磁気力:電磁気力を伝える素粒子:フォトン(光子)
2)強い力:強い力を伝える素粒子:グルーオン(原子核の中性子と陽子をくっつける力)
3)弱い力:弱い力を伝える素粒子:Wボソン、Zボゾン
4)重力:重力を伝える素粒子:グラビトン(未発見)
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こんな感じで「原子・素粒子・量子の世界」のことを詳しく解説してくれます。
また、電子配置には、次のようなルールがあるそうです(パウリとフントの原理)
原理1:電子はエネルギーの低い軌道から順に入る
原理2:1個の軌道には2個まで入ることができる。1個の軌道に2個の電子が入る時はスピンを逆にしなければならない。
原理3:1個の軌道には2個以上入ることはできない
原理4:軌道エネルギーが等しい場合には、別々の軌道にスピンをそろえて入る
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……原子の電子構造(電子配置)が分かると、原子の構造と原子の物性、反応性の関係を理解しやすくなるようです。
「原子の物性を支配するのは「最外殻電子、価電子」」で……
「2個の原子が反応するということは、簡単に言うと2個の原子が衝突することです。その衝突は自転車の衝突と似ています。衝突した原子が互いに擦れ合い、凹み、変形し、融合し、ときに合体するのが化学反応です。
(中略)衝突の影響を最初に受けるのは電子雲であり、その電子雲の中でも、もっとも外側にある電子、つまり最外殻に入っている電子、そしてもっともエネルギーの高い軌道に入っている電子、価電子なのです。」
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原子をつないで分子にする化学結合には、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合などいろいろな種類があるのですが、共有結合以外は、簡単に静電引力、つまり電磁気力で説明できるそうです。でも共有結合は、量子論の助けを借りないとスッキリと説明できないのだとか。「共有結合は原子が軌道を重ねてつくる結合です。」として、この軌道の重ね方について、イラストを使ってとても詳しい解説がありました。そして……
「(前略)普通の化学反応は、電子(電子雲)だけが起こすものであり、原子核は一切関与しません。」
……そうなんですか。
また放射線には、次の5種類があるそうです。
1)α線(高速で飛ぶヘリウムの原子核)
2)β線(電子の高速な流れ)
3)γ線(電磁波)
4)中性子線(中性子の高速な流れ)
5)陽子線(陽子の高速な流れ)
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……放射線というと、ちょっと怖い(健康に悪そう)という印象がありますが、私たちは、放射線から逃れられないそうです。
「私たちの体は炭素Cや水素H、カリウムKなどからできていますが、これらの元素は放射性同位体を持ち、その同位体は毎日せっせと崩壊反応を行って、体内でβ線をまき散らしています。」
……そうだったんだ。それなら必要以上に恐れる必要はないのでしょう。
また宇宙線のおよそ90%は陽子(電離した水素原子核)、およそ9%がアルファ粒子(電離したヘリウム原子核)、残りが炭素や酸素、鉄などの原子核なのだとか。その他にレプトン(電子など)、ミューオンなどの素粒子もあるそうです。
でも、地上に降り注ぐ宇宙線のほとんどは「二次宇宙線」だそうで、二次宇宙線というのは、宇宙から飛んできた宇宙線が地球大気に衝突して、さらに多くの粒子を発生させるもの。その多くがミュー粒子なのだとか。
さらに超電導で電気抵抗がゼロになるわけは……
「電気抵抗が発生する原因は、物質の中を進む素粒子である電子が、さまざまな要因でその運動を邪魔されていることにあります。邪魔をする要因は、散乱要因と呼ばれており、物質中の不純物や結晶欠陥、あるいは金属原子の熱振動などが挙げられます。(中略)
超電導状態にある物質中では、電子が2つひと組になって運動しています(クーピーペア)。このクーピーペアになることで、超伝導中の電子が、1つの大きな波のように運動できるようになります。
この波は簡単に散乱要因を乗り越えることができるため、何ものにも邪魔されずに運動することが可能となり、超電導状態になるのです。」
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『「原子・素粒子・量子の世界」のことが一冊でまるごとわかる』……化学の目線で「原子・素粒子・量子の世界」を分かりやすく教えてくれる本で、とても勉強になりました。名前をよく聞くから、なんとなく分かっている気になっていた素粒子や放射線も、こうして簡略にまとめて教えてもらえたことで、総合的に復習できて、とても有意義だったと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『「原子・素粒子・量子の世界」のことが一冊でまるごとわかる』