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第1部 本

科学

カラー図解 身のまわりのすごい技術大全(涌井良幸)

『カラー図解 身のまわりのすごい技術大全』2024/6/17
涌井 良幸 (著), 涌井 貞美 (著)


(感想)
 日頃よく使っていたり、よく目にしたりしているのに、そのモノの仕組みは知らないまま暮らしている……そんな私たちに「モノの技術としくみ」のサイエンス全100話を、オールカラー図解で分かりやすく教えてくれる本です。
 例えば「002高層ビルの解体」では、高層ビルの解体現場でよく見かける「タワークレーンで解体物を降ろす」上からの解体方法だけでなく、なんと高層ビルを「下から」解体する方法まで教えてくれます。それは「ビルの柱1本1本にジャッキを取り付け、微妙に調整しながら1フロアごとに上下させる」もの! この前、都心のビルで実際に行っているのを見たばかりだったので、あれは、やっぱりそうだったんだと再確認できました。かなり信じられないような光景でしたが、本当に巨大なジャッキが使われていました……。
 また「008送電線と鉄塔」では、送電線について……
「送電線は、中央に鋼線が入り、周囲をアルミ線が囲む。鋼線は安価で丈夫だが重い。アルミニウム線は鋼線よりも高価で丈夫さに欠けるが、電気をよく通し軽い。安価で重い鋼の丈夫さと、電気を通しやすく軽いアルミニウム線のベストマッチで送電線はつくられている。」
 ……送電線は、鋼(鉄)線だけなのかと思っていましたが、アルミも使われていたんですね。
 また身近な化学薬品についても、いろいろ知ることが出来ました。
「033殺虫剤」
「殺虫スプレーを噴射すると、ピレスロイドが虫の気門から直接体内に入る。少量でも神経に作用しマヒさせて虫を殺すのはこのためだ。」
 ……うわー……なお哺乳類・鳥類では体内に入っても、すみやかに分解され体外に排出されるそうです(ホッ……)。そして「虫よけスプレー(主成分はディート)」の場合は……
「(前略)害虫の多くは温度や湿度、ニオイなどから人を感知する。ディートはその感知能力を攪乱し、迷惑行動を阻止する効果を持っている。ただし、殺虫効果はない。」
 ……殺虫剤と虫よけスプレーは、全然違う効果を使っているんですね……。
 面白かったのが、「066ドローン」。ドローンにはスマホの技術が多用されているようです。
「なぜドローンはこれほど安価になり、操縦しやすくなったのだろう。その理由はおもしろいことに、スマートフォンにある。ドローン技術の多くはスマートフォンからの転用なのだ。
 例えば、ドローンが小型軽量になるには、軽くて長持ちする強力なバッテリーが必要だ。それはスマートフォンとも共通する。
 また、飛行を安定させるには、例えばジャイロセンサーと呼ばれる位置制御センサーが必要だが、それもスマートフォンですでに利用されている。ジャイロセンサーは回転や向きの変化を検知するセンサーのことで、MEMSと呼ばれる素子がその役割を担う。このセンサーは、ドローンが上下・左右の向きを検知して安定飛行するのに不可欠だが、それは「ポケモンGO」のようなゲームを提供するスマートフォンにも欠かせないものだ。」
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 意外だったのが「074撥水スプレー」。撥水スプレーに使われる薬品(フッ素樹脂など)はとても安定していて、他の物質と作用しないことが利用されているようです。だから吹きかけておくと、水が「なじまずに弾かれる」のだとか……はあー、そうだったんだー。
 また「083形態安定シャツ」は、分子同士を結びつける架橋反応を利用しているようです。例えば綿繊維は内部に隙間があるので、洗濯の時に水を吸って乾くことで膨張・変形して皺になるそうです。だから皺をつくらないためには、水による膨張を抑えればいい……ということで、繊維同士がしっかり結びつくよう、分子同士に橋をかける化学反応(架橋反応)を利用しているそうです。
 この他にも「095付箋」では……
「一度貼った付箋が簡単に剥がせるのは、糊となる接着剤の構造が球状のため、被着体と接する面積が小さいからだ。」
 ……「球状」であることが、貼って剥がせるコツだったんですね!
 こんな感じの100話の他に数個のコラムもあり、「コンセントの穴の大きさが異なる理由」などの意外な事実も教えてもらえました。実はコンセントの穴は「左側が大きい」ようで、それは左側だけが「アースされている」からだそうです。それを区別するため、大きさをわざと変えているそうですが、気がついていなかったので、近くのコンセントをマジマジと見てみたら、本当に左側が微妙に大きかったのでした(苦笑)。
『カラー図解 身のまわりのすごい技術大全』……見慣れたモノの仕組みを知ることが出来て、とても面白く読めました。工作好き科学好きなので、いろんなものの構造を知っているつもりだったのに、知らないことはまだまだたくさんあったんだ……。
1話あたり4ページぐらいで、それぞれ完結しているので、隙間時間に読むのにもぴったりです。大人向けの本なので、お子さんが読むのにはちょっと難しいかもしれませんが、小学生高学年から中学生ぐらいの人が読むと、身近なありふれたものに、こんなに多くの工夫が使われていたんだ! と驚いて、科学や工学に興味を抱いてくれそうな気がします。リビングに一冊常備しておくと、みんながちょっぴり賢くなれるかも(笑)。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『身のまわりのすごい技術大全』