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第1部 本
科学
電子を知れば科学がわかる(江馬一弘)
『電子を知れば科学がわかる 物質・量子・生命を司る小さな粒子 (ブルーバックス B 2297)』2025/6/19
江馬 一弘 (著), 松下 安武 (著)
(感想)
世界に充ち満ちている「電子」の不思議な振る舞いや、多岐に渡る働きについて分かりやすく解説してくれる本で、物理学の基本が学べる入門書でもあります。主な内容は、次の通りです。
序章 電子はこの世界の主役
第1章 電子は自然界の「最小部品」
第2章 電子の謎の解明が「量子力学」を生んだ
第3章 電子が見せる量子力学的な振る舞い
第4章 化学の主役としての電子
第5章 金属と絶縁体、半導体、そして超伝導体
第6章 生物の体の中でも電子が大活躍
まとめ 電子とは何か?
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「はじめに」には次のように書いてありました。
「(前略)実は身のまわりのほぼすべての現象は電子が引き起こしている、といっても過言ではありません。電子が関与していない現象を見つけるほうが難しいくらいなのです。」
「電子がなぜ身のまわりのありとあらゆる現象を引き起こす主役となっているかというと、その大きな理由の一つは、電子が原子と原子を結びつける接着剤の働きを果たしているからです。」
そして続く「序章 電子はこの世界の主役」によると、私たちが廊下を滑らずに歩けるのも電子のおかげ(滑らないのは摩擦力があるからで、摩擦力は電子が生み出している)なのだとか! ……そうだったんだ。
それだけでなく、あらゆる化学反応は電子による「原子のつけかえ」だそうで……
「分子のもつエネルギーとは基本的には、電子の運動によるエネルギー(運動エネルギー)と、電子が原子核と引きあうことで生じているエネルギー(位置エネルギー)ですから、結局、化学反応による熱の発生・吸収は、電子によって起きているとも言えます。」
さらに色彩を生み出しているのも電子で……
「この世界の色彩を生み出しているのも実は電子です。(中略)あらゆる物体の色は、物体表面の原子や分子に含まれる電子が特定の色(波長)の光を吸収して、それ以外の光を反射するために生じています。
そもそも光を生み出しているのも主に電子です。目に見える光は可視光線と呼ばれますが、太陽光も、白熱電球や蛍光灯、LED電球の光も、可視光線はすべて基本的には電子が生み出しています。」
……なるほど……「ほぼすべての現象は電子が引き起こしている」んですね……。
そして、とても勉強になったのが、「第2章 電子の謎の解明が「量子力学」を生んだ」。そのごく一部を紹介すると……
・「(前略)電荷が上下に振動するように動くと、その周囲の電場の大きさや向きも振動します。するとこの電場の振動が周囲に広がっていきます。これが電磁波、すなわち光の正体です。」
・「(前略)光子は観測されるまでは波として広がって存在しており、観測されると粒子として1ヵ所だけに姿を現す」
・「(前略)光を放出したり、吸収したりしているのは、実は電子なのです。」
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続く「第3章 電子が見せる量子力学的な振る舞い」でも……
「量子力学によると、電子のようなミクロな粒子には二つの種類があります。一つは、電子のように一つの席に一つしか入れないもので、「フェルミ粒子(フェルミオン)」と呼ばれます。もう一つは、同じ席にいくらでも詰め込むことができる粒子で、「ボース粒子(ボソン)」と呼ばれます。ボース粒子の代表は光子です。レーザー光は強度を強くすることで、金属でも溶かすことができますが、これは光子がボース粒子であり、同じ量子状態に光子をたくさん詰め込み、強度を高めることができるからです。」
……電子と光子は同じようなものかと思っていましたが……かなり違う性質もあったんですね。なお、「おわりに」にも、次のように書いてありました。
「(前略)光は電子の振動によって生じ、物質の光学的性質も光と電子のやりとりによって決定されます。つまり、光を研究する際は「光」と「電子」の両方が主役となります。光は電子がなければ発生することも、何かを引き起こすこともできません。この観点からすると、電子は「格上の主役」とも言えるのかもしれません。」
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「第4章 化学の主役としての電子」では、原子どうしの複数の結合の種類(共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、金属結合)について、かなり詳しい解説があり、とても勉強になりました。
ここでは「絶対零度は原子や分子が完全に静止してしまう温度だが、厳密には静止していない」ことについても……
「(前略)量子力学によると、ミクロな世界は常に揺らいでいます。そのため、原子や分子の速度を完全にゼロにすることはできません。速度ゼロは、速度が揺らいでいないことを意味するからです。
本文中で、ヘリウムは常圧では絶対零度にしても固体にはならないことを説明しました。これはヘリウム原子どうしに働くファンデルワールス力が極めて弱く、絶対零度でもヘリウム原子の量子的な揺らぎの効果(零点振動)の方が上まわるからです。ヘリウム原子を1ヵ所にとどめようとしても、わずかに揺れ動いてしまうのです。その結果、ヘリウムは圧力をかけない限り、固体にはなりません。」
……なるほど、そういうことだったんですか……。
この他にも「電子は小さな磁石としての性質ももっており、その性質の元となっているものは「スピン」と呼ばれています。このスピンも量子状態の一つです。」など、電子について、本当にいろんなことを知ることが出来ました。
『電子を知れば科学がわかる 物質・量子・生命を司る小さな粒子』……電子を通して物理学の基本まで深く理解できたような気にさせてくれる本で、とても勉強になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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『電子を知れば科学がわかる』