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第1部 本
生物・進化
環境と生態(畑憲治)
『環境と生態: 生態系のしくみと役割』2025/4/8
畑 憲治 (著)
(感想)
「地球温暖化」や「生物多様性」など、環境問題を考えるときに知っておきたい生態系や環境の基礎知識を、分かりやすく解説してくれる入門書で、主な内容は次の通りです。
1章 生態系の構成要素間のつながり
2章 生態系の機能
3章 人間活動と生態系の歴史
4章 生態系における水
5章 生態系における土壌
6章 土壌栄養塩と物質循環
7章 農業生態系
8章 森林生態系
9章 陸上生態系の改変と劣化
10章 淡水生態系
11章 海洋生態系
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「1章 生態系の構成要素間のつながり」によると……
「生態学とは、生物と環境との関係を明らかにすることを目的とする学問である。」
……だそうです。
また「2章 生態系の機能」によると、生態系には次の4つのサービス機能があるそうです。
1)供給サービス:衣食住に必要なものの提供。
例)食料、水、木材、燃料の提供など
2)調節サービス:気候や外的環境要因の調節、制御
例)気候、水質、洪水の調節、病気の制御など
3)文化的サービス:精神的・文化的利益
例)景観、観光、レクレーション、文化的遺産、精神的な恩恵など
4)基盤サービス:上記の3つの基盤となるサービス
例)有機物の生産、無機塩類の循環、土壌の形成など
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そして「3章 人間活動と生態系の歴史」では、地球上の環境問題には、次のようなものがあると書いてありました。
<地球上の環境問題の分類>
1)生物多様性の損失
(生息地・生育地の消失、野生生物の消失に伴う食料資源の減少、種多様性の減少に伴う生物間相互作用の消失)
2)非生産的資源の消失
(土壌浸食に伴う土壌環境の消失、化石燃料の減少、資源としての水の減少、光合成能力(一次生産力)の低下)
3)地球環境の悪化の直接的な要因
(有害物質による汚染、侵略的外来生物の侵入・拡大、大気中の温室効果ガス濃度の上昇)
4)地球環境の悪化の間接的な要因
(地球上の人口の増加、人間1人あたりの環境負荷の増加)
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そして勉強になったのが、「4章 生態系における水」。水には次のような特性があるそうです。
・「(前略)“熱しやすく冷めにくい”水の特性は、個体から生態系レベルにおいて様々な影響を及ぼす。例えば、外気温に関わらず恒温動物(哺乳類や鳥類など)の体温が一定に保たれている理由の1つには、体内に存在する水が温度の変化を抑制していることが挙げられる。また、地球の表面の約73%を海水が覆っていることは、地球上の気温が一定の範囲内に抑制されていることに寄与している。」
・「(前略)水には分子内部に電荷の偏り(極性)がある。この特性によって他のイオンや極性分子が水中に入ると、水分子に取り囲まれた状態で安定化、つまり状態が変化しにくくなる。これは、様々な物質が水に溶けた状態で維持されるということである。このような優れた溶媒としての特性は、体内の生理反応の進行などに不可欠な特性といえる。例えば、植物が根から土壌中の無機塩類を吸収するためには、無機塩類が水に溶けてイオンの状態になり初めて吸収可能になる。」
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また「土壌の定義」も興味津々でした。
「岩石が外界の影響によって物理的あるいは化学的に風化作用を受け、それに動物や植物の遺体が加わり、さらにその遺体が土壌生物の作用を受けて互いにまじりあい、一体になり、その与えられた環境で安定した状態(平衡状態)に移りつつあるか、平衡状態に達した自然物」
……土壌は、岩石が風化しただけでは出来ないんですね!
『環境と生態: 生態系のしくみと役割』……人など生物と環境の相互作用の基本的な知識や概念について解説してくれる本でした。生物の本はけっこう読んでいるので、あまり目新しい情報はありませんでしたが、総合的に復習することが出来たので、とても有意義だったと思います。
この他にも水田や畑などの農業生態系や森林生態系、河川、湖沼、湿地などの淡水生態系や海洋生態系、陸上から水界までのそれぞれの生態系の構造や機能などについても、環境ごとの解説があります。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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『環境と生態』