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第1部 本
健康&エクササイズ
100年食べられる胃(比企直樹)
『100年食べられる胃 食べる力は生きる力』2025/03/01
比企 直樹(著)
(感想)
北里大学医学部上部消化管外科学主任教授の比企さんが、人生100年時代を健やかに生きるための胃とのつきあい方を教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 「生きる欲」を司る「胃」
(胃を守ることは、「食べる」を守ること/3000件の手術が教えてくれたこと)
第2章 身近な「胃の不調」、外科医はこう見ている
(さまざまなトラブルを「受け止める」胃/「動きを止める」胃 ほか)
第3章 人体の中心ではたらく「すごい胃」
(二刀流どころじゃない!胃の7つのはたらき/食べたものが旅をする「消化管」 ほか)
第4章 「食べられる」を守る「栄養」と「筋肉」
(「栄養」とは「治療」である/「低栄養」は「病気」である ほか)
第5章 胃がん治療の現在と未来
(「胃がん」の未来はどうなるか/増えている?「十二指腸がん」「GIST」 ほか)
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「プロローグ」によると、「高齢者では、胃を全摘すると、心臓病や脳梗塞など、胃がん以外の病気で多くの患者さんが亡くなることが研究によってわかっています。」だそうですが、これは胃全摘によって食欲増進ホルモンのグレリンが分泌されなくなり、食欲がわかなくなることの影響が強いようです。
そこで比企さんは「胃全摘対象患者に対する食欲温存胃切除」手術を学会で発表したそうです。これは、胃全摘しか方法がないとされる患者さんに行う、食欲を司る「グレリン」を分泌する「胃のある部分」を残す手術なのだとか。驚いたことに、こうすることによって食欲を保つことができるようです。
「腸全体は長くて、6~9メートルもありますから、前にためることができなかったとしても、腸へうまく流れていけば、食べることができる。つまり、グレリンの分泌を守って、食欲さえ保つことができれば、たとえ胃は小さくなっても、私たちはおいしく食べることができるはず。(中略)
胃がんをしっかり治しながら、胃のグレリンを分泌する部位だけ残して、体重と筋力の低下を防ぐ。」
……この方法で胃の3分の2を切除した50代のスキルス胃がんの患者さんは、なんとトライアスロンまでできるほど元気に回復しているそうです……凄いですね……。
なお胃がんの主な原因は、「ピロリ菌」であることがはっきりしていて、「胃がんは、除菌治療によって予防可能な時代になってきている」のだとか。そして「(胃がんの)予防は、「ピロリ菌除菌」「禁煙」「塩分を取り過ぎない」の3点につきます。」だそうです。
また胃の不調の主な2つには、次のものがあるそうです。
1)胃粘膜がなんらかの攻撃因子にさらされた結果、壊れてしまうことで起きる不調
(胃酸過多など。自律神経の乱れを起こすのは、過労・ストレス・寒暖差・冷たい食べ物など。胃潰瘍の原因はピロリ菌と非ステロイド性解熱鎮痛抗炎症剤)
2)胃の「蠕動運動不全」
(胃が動かなくなることが原因の不調。時間とともに解消することが多いが、胃潰瘍などの可能性もある)
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そして胃には、次の7つの大きなはたらきがあるそうです。
1)食べ物を貯めておく
2)蠕動運動で食べ物を攪拌し、粥状にして、十二指腸に少しずつ送る(食物を胃液でよく混ぜ合わせる)
3)タンパク質や脂肪の一部を分解する
4)小腸での栄養素の吸収を助ける物質を分泌する
5)消化管ホルモンを分泌して胃酸と消化酵素の分泌を促す
6)食欲増進ホルモン「グレリン」と食欲抑制ホルモン「レプチン」を分泌して食欲をコントロールする
7)胃酸を分泌して食べ物と一緒に入って来た細菌などの殺菌を行う
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「食べた物が入ってくると入口である噴門と出口の幽門が閉じて、消化作業がはじまります。胃の壁から強酸性の胃酸(胃液)が分泌され、同時に蠕動運動によって胃酸と食物を攪拌し、ミキサーにかけたようなお粥状にしていきます。
胃酸は1日あたり約2リットルも分泌され、消化の他、殺菌効果もあります。食物の胃での滞在時間は約2時間。どろどろのお粥状になると幽門が開き、十二指腸に送られます。」
……そして食べたものから栄養を吸収するのは、小腸や大腸の役割なのだとか。
私たちは、食べることで自分の体を守っているので、胃の働きはとても重要なのです。
「要するに人間は、食べることによって、腸の粘膜に栄養を届け、結果、自分たちのからだを守っている。」
……栄養と筋肉量は生命に直結していて、がん治療にも、栄養状態、すなわち筋肉の量が重要な目安となるようです。なんと北里大学病院では……
「胃がんの手術の際には、「自分の力で、何の不自由もなく2階まで階段で上れること」を、手術ができるかできないかの判断基準にしています。」
「北里大学病院では、入院前に筋肉トレーニングを推奨し、入院する前も、入院中も、筋肉の維持を意識していただいています。」
……えええ! そうなんですか!
人生100年時代、筋肉現象を防ぐための栄養たっぷりの食事、筋肉維持のための運動、十分な睡眠という「健康な生活習慣」は、やっぱり胃のためにも良いようでした。
この本では、食事に関する説明だけでなく、美味しい病院食のカラー写真付きの簡単なレシピも2種類掲載されていました(本当に美味しそうです)。
またお勧めの運動についても、イラスト付きで、やりかたを教えてもらえます。
『100年食べられる胃 食べる力は生きる力』……人体一の多機能臓器といえる「胃」について、さまざまなことを解説してくれる本でした。まだ胃に不調を感じていない私としては、とりあえず「胃の健康にも良い」いつもの健康習慣(食事・運動・睡眠)を続けていこうと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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『100年食べられる胃』