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第1部 本
科学
よくわかる最新分析化学の基本と仕組み[第3版](津村ゆかり)
『図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み[第3版]』2025/3/25
津村ゆかり (著)
(感想)
分析化学は、環境・食品・医薬品・各種材料など様々な分野を支える技術です。実務に必要な分析化学の知識を図解で解説した入門書で、主な内容は以下の通りです。
第1章 分析化学の世界へようこそ
第2章 基本の化学と試薬・器具
第3章 試料採取と前処理
第4章 基礎的な検出・定量法
第5章 分子分光分析
第6章 原子分光分析
第7章 X線・電子線を使う分析
第8章 質量分析とNMR
第9章 分離分析
第10章 電気化学分析
第11章 放射性物質の分析
第12章 DNA分析と抗原検査
第13章 データ処理と妥当性確認
第14章 ラボの常識と化学分析の極意
分析化学とはなにか、検出定量法、光・X線・電子線での分析、クロマトグラフィー、放射性物質分析など分析化学の基礎を図解で解説してくれます。
分析化学とは……
「物質を構成する元素や化合物、そしてそれらの形態を化学種といいます。分析化学は、化学種とそれらの量を明らかにするための科学です。」
そして分析は……
「分析は製品や環境の規格・規制と深く結びついています。規格・規制に関わる分析には基本的に公定法が定められています。(中略)
最も強制力が強いのは法律で規定される分析法です。これらは省令・告示・通知などとして、または法令で位置づけられた規格として公表されます。規格の中で日本産業規格(JIS)と日本薬局方は特に歴史が古く収載内容も膨大で、広い範囲に影響力を持っています。」
……そして「分析の流れ」は次のようになっています。
1)分析目的の明確化・計画の策定
2)試料採取
3)運搬・保管
4)前処理
5)測定
6)データ処理
7)分析結果の報告
→十分な情報が得られたか?→1)に戻る。
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化学分析について総合的に解説してくれる本で、とても参考になりました。例えば「赤外分光」では、分子中の結合の伸び縮みを検出しているとして……
「分子を構成する原子どうしはがっしり組み合わされているわけではなく、それぞれの結合部分が伸縮したり回転したりします。伸縮運動のエネルギーは赤外線のエネルギー付近にあるため、分子は赤外線を吸収して振動します。
ただし、左右非対称な振動でなければ赤外線に対して不活性です。(中略)
赤外線を吸収するということは、赤外線によって温められるということに他なりません。だから酸素や窒素は温暖化ガスではなく、二酸化炭素は温暖化ガスとして働くのです。」
……というような解説があります(本文はもっと詳しい解説です)。
さらに「第13章 データ処理と妥当性確認」では、次の「有効数字と数値の丸めかた」がとても勉強になりました。ちょっと長いですが、以下に紹介させていただきます。
「デジタル表示の測定値や割り算の結果は丸める必要があります。数値の丸めとは、いわゆる「四捨五入」です。日常生活の四捨五入では丸める位の数値が1~4なら切り捨て、5~9なら切り上げます。しかしこのようにすると、切り上げる場合のほうが若干多くなり、大きいほうへ偏りが生じます。そこで、丸める数字がちょうど5の場合は、その上の位の数字が偶数になるように切り上げまたは切り捨てを行います。例えば小数点以下2桁に丸める場合、1.225は切り捨てて1.22に、1,235は切り上げて1.24にします。この規則は丸める端数がちょうど5の場合だけで、1.2251は普通の四捨五入と同じ1.23になりますから注意してください。
計算を行う場合、丸めは原則として最後に1回行います。加減算は位を基準に、有効数字の末尾が最も高い位にある数字に合わせて丸めます。乗除算は桁数を基準に、有効数字の桁数が最も少ない数字に合わせて丸めます。」
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……細かい数字での分析が必要になる化学分析では、「四捨五入の丸めが、大きいほうに若干偏っている問題」に、このように対処していたんですね!
『図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み[第3版]』……分析化学とはなにか、検出定量法、光・X線・電子線での分析、クロマトグラフィー、放射性物質分析など分析化学の基礎を図解で説明してくれるだけでなく、「データ処理と妥当性確認」や「ラボ管理と化学分析の極意」で、化学系実験室での服装など化学分析での「常識」まで教えてくれる本でとても参考になりました。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『よくわかる最新分析化学の基本と仕組み[第3版]』