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第1部 本

ユーモア

狂瀾怒濤(ゴーリー)

『狂瀾怒濤: あるいは、ブラックドール騒動』2019/10/10
エドワード・ゴーリー (著), 柴田元幸 (翻訳)


(感想)
 ゴーリーさんの不条理に満ち満ちた世界を堪能できるゲーム(アドベンチャー)ブックです。……なんですが………えーと、なんですか? これは????
 というのが、この本を数ページめくっての感想でした(笑)。ナンセンスなのは、いつものゴーリーさんとも言えますが……それにしても、これは……突き抜けたナンセンスというか‥‥…なんか、呆気にとられるほどのナンセンスっぷりで脱力してしまいました(笑)。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 これについては、いつも秀逸な翻訳と「訳者あとがき」を書いてくれる柴田さんが、次のように解説してくれています。
「1987年にボーフォート・ブックスから刊行されたこの『狂瀾怒濤』にしても、ほかのどのゴーリー本とも違った独特の魅力に満ちている。19世紀ヴィクトリア朝イギリスを思わせる大半の作品とは異なり、ルネ・マグリットやマックス・エルンストといった20世紀ヨーロッパのシュルレアリストたちとの親近性を強く感じさせる画風で、巨大な指が屹立するシュールな風景のなか、スクランプ、ナイーラー、フィグバッシュ、フーグリブーという四人(?)の情けないキャラクターたちが濡れたスポンジやクラッカーのくずや服喪用のピンで互いを攻撃しあう絵柄が次々くり出される。(中略)
 そして言葉の方も、「興味がある人は 6へ/ない人は 2へ。」といった指示がすべての絵+言葉に添えられ、いわゆるインタラクティブな本になっているが、むろんそこは、ゴーリー、指示の選び方によって多種多様な物語が複数展開されていくというよりは、どう選んだところで展開はひたすら情けなく、しばしば不可解で、黒いユーモアが漂っている。とはいえ、どう選んでも同じと思っていろいろなバージョンを試してみると、やはりそれぞれ微妙に違う味がある気がし、そのあたりもなかなか楽しい。」
   *
 さすが柴田さん! まさに、この通りの内容なのです!
 ひたすら「しょうもない」方法で闘う四人たちは、たまには赦しあったりもするのですが、またヘチマで闘いはじめたりして……わけがわかりません……。

 この四人は、表紙の上の方に漂っているブラックドール(?)と似てはいるものの、まったく違うキャラクターで、ブラックドールは本編には登場せず、いったいなぜ副題に「ブラックドール騒動」とあるのかすら、謎なのです……。
 最後の30は、変な踊りを踊っている(?)四人の絵に、「かくしてみんな、いつまでもみじめに暮らしたのだった。」が添えられているのですが、ここへ到達する前の27には「ロマンティックな結末を望む人は、30へ。」とある一方で、28には「リアリスティックな結末を望む人は、30へ。」とあり、すると「ロマンティックでリアリスティックな結末が、この30なの?」……うーん、考えても無駄なんでしょうね(笑)。ちなみに選び方によっては、結末が30ではないケースも、もちろんあります。
『狂瀾怒濤: あるいは、ブラックドール騒動』……ナンセンスの極限に挑戦している(?)とても面白い本でした。何かの都合で「とにかく読んでも何の意味のない本」を探している方や、ひたすら無駄な時間つぶしをしたい方には、特にお勧めします(笑)。

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『狂瀾怒濤』