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第1部 本

伝記・職業紹介

獣医さんがゆく(浅川満彦)

『獣医さんがゆく: 15歳からの獣医学』2025/1/15
浅川 満彦 (著)


(感想)
 動物病院の獣医師から、競走馬や野生動物を診療する獣医師、食肉をまもる獣医師、医薬品開発に関わる獣医師まで、いろんな「獣医さん」をリアルな現場の視点で紹介。さらに獣医大生が実際に受けている授業やカリキュラムについても教えてくれる本で、主な内容は以下の通りです。
はじめに
第1章 もはや家族の一員――ペットを診る獣医さん
1.ご近所にある動物病院の一日/2.イヌとネコを苦しめた謎の<風邪>/3.エキゾって?――ハムスターやカメ、そしてタランチュラまで
第2章 ウマやウシの健康をまもる獣医さん
1.乗り手を選ぶウマ――<相棒>が家畜になるとき、獣医さんは?/2.ウシやブタを診る獣医さん――命をストックする食用動物/3.家畜・展示動物の病気では予防が要――家保の獣医さんはホワイトヒーロー
第3章 ヒトの健康を支え、ペットのいじめを防ぐ
1.家畜がいなければ……/2.安全・安心な食肉をまもる獣医さん/3.ほかの食と関わる獣医さん/4.衣と住、ほか健康な暮らしに関わる獣医さん/5.ペット虐待を阻止せよ!
第4章 野生動物の獣医さん
1.傷ついた野生動物を救うとは?/2.減った動物をもどす獣医さん――希少種保全の獣医さん/3.増えすぎた動物をもどす――保護管理の獣医さん
第5章 これからの獣医さんたちへ
1.獣医大で、今、なにを学ぶ/2.未来の獣医さん――自分磨きで差別化/3.獣医大入学前に……
おわりに
参考文献
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 獣医さんというと、ペットの治療をしてくれるお医者さんというイメージが強かったのですが、ヒトの健康にも大きく関わっているようです。「はじめに」には、次のように書いてありました。
「(前略)人々の健康保持や豊かな生活維持には、獣医さんが欠かせません。たとえば、人々は安全な乳肉を食べて生活をしていますが、安全かどうかのチェックを獣医さんがするからです。獣医学課程(6年制)がある大学(獣医大)には、必ず、人々の健康をまもるための科目(獣医公衆衛生学)があり、さらに、この社会にはより広範な公衆衛生分野(行政)の獣医さんもたくさんいます。そして、そういった獣医さんが保健所などで働いています。」
 ……確かにそうですね。私たちが安心して乳肉を食べられるのは、獣医さんのおかげでもあるんだ……。
 最初の「第1章 もはや家族の一員――ペットを診る獣医さん」では、動物病院の治療の一場面が紹介されていました。人間と同じように問診や触診から始まり、耳垢の顕微鏡検査などで寄生虫を発見するなどして治療するようです(人間の患者さんとは違う苦労が、かなりあるようですが……)。
 ここでちょっと意外だったのが、獣医療が「農林水産省」の管轄だったこと。獣医療は家畜の健康をまもり、よりよき畜産物を得るために発達してきたので、動物病院に関する統計資料は、農林水産省の公式ウェブにあり、獣医師国家試験や免許交付も、農林水産省が実施しているそうです。
 そして、物の健康をまもる4つの獣医学分野には……
1)基礎獣医学:動物の正常な形や働きを学ぶ解剖学、生理学、生化学、薬理学など
2)病態獣医学:動物の異常(病気)や病原体を学ぶウイルス学、細菌学、寄生虫学、病理学など
3)臨床獣医学:病気を治す内科学、外科学、麻酔学、眼科学、生殖学など
4)予防獣医学:病気を予防する公衆衛生学と動物衛生学
 ……などがあるようです。
 また動物病院には、イヌやネコだけでなく、エキゾ(ハムスター、カメ、トカゲ、ヘビ、サソリなど)も来るようで……これらいろんな生物に対応しなければならないことを思うと……かなり大変ですね。
 ここでは、爬虫類の患者さんの体表から、歯ブラシでダニをかき出して治療するというシーンもありました(なんと一部の爬虫類の体表には、わきのところにポケットのようなものがあり、ダニをそこに押し込めて他のところに広がらないようにしているそうです。)
 そして、とても考えさせられたのが、「第3章 ヒトの健康を支え、ペットのいじめを防ぐ」の「保護と救護は違う」ということ。
弱った鳥・獣を収容し、1羽1頭治療・ケアするのが「救護」で、対象は個体。動物を持続的に存続・利用することを目的とした活動が「保護」で、対象は個体群。この「保護」には、不自然に増えすぎてしまった場合に、その一部を間引く(殺す・管理する)ことも含まれるのです。
 これらを担っている動物愛護センターや保健所の獣医さんは、「命を救う」仕事をするだけでなく、「命を奪う」仕事も必要なんですね……。
 それ以外にも食肉加工場の仕事や、野生動物関連の仕事でも、「命を奪う」仕事を避けては通れないので……獣医さんには、人間の医師とは違う、さまざまな葛藤があるようでした……。
 そして「第5章 これからの獣医さんたちへ」では、獣医大で学ぶ内容などの紹介もありました。
『獣医さんがゆく: 15歳からの獣医学』……獣医という仕事について、総合的に詳しく解説してくれる本で、とても勉強になりました。最近は女性獣医師が増えているそうで、なんと20代の獣医さんは、半数以上が女性だそうです(それで表紙のお医者さんは、女性なんですね)。獣医師や動物看護師を目指す人はもちろん、ペットを飼っている人や動物が大好きな人も、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『獣医さんがゆく』