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第1部 本

社会

ジャーナリズムの100語(デュフール)

『ジャーナリズムの100語 (文庫クセジュ)』2025/2/25
フランソワ・デュフール (著), 村松 恭平 (翻訳)


(感想)
 ジャーナリズムはどうあるべきか……編集長などを務めた自らの経験をもとに、ジャーナリズムが遵守すべき規則を一〇〇のテーマで語ってくれる本で、その最初の一〇は次の通りです。
ニュース
グレゴリー事件
通信社
報道機関への経済的援助
分析
アングル
アナウンス?それとも情報?
スポンサー
ジョン・F・ケネディの暗殺
プレス担当   など。
   *
 そして最後には「付録 最後の言葉」として、次のジャーナリストの10の心覚えが書いてありました。
1)事実は意見ではない。意見は事実ではない。
2)市民よ。既製の意見ではなく、事実から自分の意見を作りなさい。
3)客観的なジャーナリストは、事実を確認することで事実を尊重する。
4)中立的なジャーナリストは、意見を突き合わせることで意見を尊重する。
5)事実を扱うジャーナリスト(司会者、記者など)は、意見を扱うジャーナリスト(論説委員、コメンテーターなど)ではない。
6)情報は宣伝ではない。宣伝は情報ではない。もしあなたが宣伝することで報酬を受けているなら、あなたはジャーナリストではない。
7)ロビイストとアクティビスト(たとえ最も擁護できる大義を擁護していても)はジャーナリストではない。
8)専門家は(しばしば複雑な)事実を扱うが、事実にこだわるジャーナリストではない。
9)ジャーナリストは事実を守るため、フェイクニュース(意図的な嘘、プロパガンダ)を糾弾する。
10)市民よ、誰があなたに情報を与えているかを自問せよ!
   *
 これがデュフールさんの主な主張で、特に「事実と意見は明確に区別すべき」と言っています。
 他に参考になった(心に残った)文章を以下に紹介すると、次のような感じ。
・「あまりに多くのジャーナリストがよく考えずに条件法(ここでは不確実な事例を推測・伝聞として表す使用法を指す)を使用し、真偽が未確認のニュースを伝えている。(中略)
 多くのメディアがこの条件法を用いている。というのも、ほかのどのメディアよりも早くニュースを出したいからだ。だが彼らは速報性よりも正確性のほうが大事だというジャーナリズムのルールの一つを忘れている。」
・(注:ジャーナリズムを専攻する学生が学ぶべきことは、)「要するに、ジャーナリズムにおいては、正しいメッセージを伝えること、したがって、読者の立場に身を置き、彼らの代わりに、そして彼らのために好奇心を働かせること、発信よりもむしろ受信について考えることが伝達者として特に重要である。ほかに学ぶべきことは、技術面(ページ組み、音声や動画の編集など)だけである。」
・「(前略)最終的に、形式においては、テクストが理解可能なだけでは不十分だ。読みやすく、聞きやすく、見やすくなければならない。」
・「(前略)ニュース(英語ではnews)を事実確認した後にそれを伝えるのがジャーナリストの仕事である。(中略)
 どのように事実確認したらよいのか? 近親者、友人、医者など、信頼できる情報源に話を聞く。より望ましいのは、情報源を二つにすること。もっと望ましいのは、情報源を三つにすることだ。(中略)」
・「厳密な意味でのジャーナリストは中立である。中立であるとは、敵にも味方にも回らないことを意味する。中立であるとは、相反する二つの意見のどちらかを選ばないことである。」
・「客観的であることは、事実を重んじることを意味する。」
   *
『ジャーナリズムの100語』……ジャーナリストの定義や労働協約、ジャーナリズム学校など職業にかかわるテーマ、客観性や中立、プライバシー、剽窃など職業倫理にかかわるテーマのほか、フランスで毎年実施されているメディアに対する信用度調査、どのメディアよりも早くニュースを発信するために用いられる「~らしい」という表現、切り取りフレーズ、脱落のある引用、宣伝か情報か、事実か意見か、世論調査など、ジャーナリズムにまつわる幅広い問題を掘り下げている本で、とても参考になりました。
 フランスで毎年実施されているメディアに対する信用度調査(カウンター・パブリック・ワンポイント社の調査2023)によると……
「フランス人の五四%が「重大な時事テーマに関してメディアが言っていることは大抵疑わなければならない」と考えているのに対し、三七%は逆に、全般的にメディアを信用できると考えている。」
 ……フランス人の五四%もがメディアに疑いを抱いているという調査結果には驚きましたが……どんな情報にも「疑いを持って自ら確認」してみるという態度が、混迷する現代には求められているのかもしれません(フランス人は賢いのですね……)。
 みなさんも、ぜひ読んでみてください。ジャーナリストになりたい方や、メディアに関心がある方には特にお勧めします。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『ジャーナリズムの100語』