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第1部 本
地質・地理・気象・地球環境
3D地図と写真で「なぜ」と「今」がわかる 日本の地形図鑑(高橋典嗣)
『3D地図と写真で「なぜ」と「今」がわかる 日本の地形図鑑』2024/11/19
高橋 典嗣 (監修)
(感想)
ユーラシア大陸の東端、4つのプレートがせめぎあう位置にある日本は、個性豊かな地形と自然に富んだ島国。そんな日本全国のユニークな71の地形を、オリジナルの3D地図と写真で紹介。カルデラやリアス海岸などダイナミックな絶景から、平野や盆地など身近な地形まで、その成り立ちと人々の暮らしに与えた影響を詳しく解説してくれるフルカラーの本で、主な内容は次の通りです。
第1章 北海道の地形図鑑
第2章 東北地方の地形図鑑
第3章 関東地方の地形図鑑
第4章 中部地方の地形図鑑
第5章 北陸・近畿地方の地形図鑑
第6章 中国・四国地方の地形図鑑
第7章 九州地方の地形図鑑
第8章 プレートテクトニクスと列島誕生
一つの地形につき見開きページで、写真と3D地図とともに解説してくれます。
例えば「利尻島」の場合は……
「利尻島は、島全体が火山でできている火山島だ。利尻火山は、複数回の噴火でできた成層火山で、溶岩ドーム、マール、スコリア丘、湿原などさまざまな火山由来の地形を見ることができる。」
……という冒頭の短い概説の後に、詳しい説明が続きます。あの美しい利尻山は……
「利尻火山は(中略)すでに寿命を迎えた火山だと考えられている。その間、利尻山は浸食が進み、山頂から放射状にいくつもの谷ができている。」
……へえー、それなら安心して登山できそうですね。ここでは利尻の地質図も紹介されていました。
またカンラン岩が地表に現れていることで有名な「アポイ岳」については……
「(前略)日高山脈がある北海道中南部は、かつて西側のユーラシアプレートと、東側の北アメリカプレートの境界にあった。
約4000万年前、2枚のプレートは衝突。西へ移動してきた北アメリカプレートはさらに動き続け、約1300万年前、先端がユーラシアプレートにめくれるように乗り上げたことで、現在の日高山脈ができた。このときの衝撃により、いっしょに地表に引き上げられたプレート(地殻)の下にあった岩石が、アポイ岳を構成するカンラン岩の岩体なのだ。」
……うわー、日高山脈って、そんな凄い場所だったんだ……。
さらに茨城県の「棚倉構造線」では……
「茨城県北部の常陸太田市から北北西方向に延びる、約60kmの大断層が棚倉構造線だ。知名度はないかもしれないが、日本列島誕生のしくみを解くカギになるような、新発見をもたらしている。」
「(前略)地磁気の測定結果から、棚倉構造線の横ずれ運動によって、構造線沿いに発達する堆積盆が急速に沈降するとともに、回転を生じていたことが判明。大断層の運動が、堆積盆の形成・沈降・回転を同時に引き起こしたことをつきとめたのだ。そしてこれは、日本海拡大時に動いたほかの断層でも、回転が起きていた可能性を示唆している。」
……棚倉構造線から日本列島誕生の謎に迫れるとは、驚きです。
そして「糸魚川のヒスイ峡」で見られるヒスイは……
「ヒスイ輝石は、海洋プレートが大陸プレートに沈み込む地中深くでできる広域変成岩で、低温高圧という特殊な環境でのみ生成される。
糸魚川のヒスイは約5億年前、のちに糸魚川をなす地下に海洋プレートが沈み込んでつくられた。そして、青海川、姫川、小滝川などのヒスイ山地には、蛇紋岩という岩石が必ず分布している。マントルのカンラン岩が変質した蛇紋岩は比重が小さいため、ヒスイを取り込みながら浮力で地中を上昇する。ここへプレート運動の力が加わり、約2億~1億年前、ヒスイは地表付近に運ばれたのだ。」
……そうだったんだ。
また「鳥取砂丘と潟湖」では……
「砂丘とは、海や川などの砂が風で運ばれてできた丘状の地形をいう。鳥取砂丘の場合、千代川によって運ばれた中国山地の花崗岩が風化した砂が材料になった。」
「鳥取砂丘は、更新世の古砂丘と完新世の新砂丘からなる複合砂丘である。そして新旧の砂丘は火山灰が境界になっている。たとえば、約65km西にある大山の噴火がもたらしたものだ。(中略)
火山灰でコーティングされた古砂丘は、風や水で容易に動くことができず、第3砂丘列はなかば固定された。(後略)」)
……鳥取砂丘は、風化した花崗岩が主な材料だったんですね……。
こんな感じの興味津々な記事が満載。
「おわりに」によると……
「本書では、日本各地の名所名跡の景観を想像する手助けになるよう、国土地理院の詳細な標高データを元に衛星写真も参照し、透視投影法により3D 化した鳥瞰図を作成した。」
……とのことで、確かにどの地域にもとても美しい3D鳥瞰図がついていて、ここって、こんな地形をしていたんだ、ということが良く分かって楽しくなります。
さらに最後の「第8章 プレートテクトニクスと列島誕生」では、大陸移動とか日本列島誕生などの地学的基礎知識についても詳しい解説があって、勉強になりました。
巻末には「地球に分布するおもなプレート地図」、「日本の地質全図」、「地質年代表」もあり、まさにタイトル通り、図鑑として役に立つ『3D地図と写真で「なぜ」と「今」がわかる 日本の地形図鑑』。眺めているだけでもわくわくしてくるので、地学好きの方はもちろん、旅行が好きな方もぜひ読んでみてください☆
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『3D地図と写真で「なぜ」と「今」がわかる 日本の地形図鑑』