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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

不思議3D地形図鑑(今尾恵介)

『不思議3D地形図鑑』2025/1/20
今尾 恵介 (著)


(感想)
 最新鋭の観測衛星から取得した超高解像度の衛星画像を、3次元生成アルゴリズムで再構築。フルカラーの「3Dで俯瞰する“地形名所”巡り」の本で、主な内容は次の通りです。
【第1章】海の地形──波と土砂の造形 
エビのシッポ型に延びた砂嘴──北海道・野付半島 
細長く延びた自然の防波堤──由良・淡路の橋立 
海岸に連なるラグーン──十勝・湧洞沼ほか 
休みなく波が削った断崖──銚子・屏風ヶ浦 
海沿いに連なる崖と台地──室戸の海成段丘 
複雑に入り組んだ海岸──?れ谷・対馬 
無数の島々が点在する多島海──フィンランド 
魚の骨のように細く長く──愛媛・由良半島 
まんじゅう型の島──隆起珊瑚礁の沖縄・多良間島 
【第2章】川の地形──流れが作る百態 
アラベスク文様で蛇行する──佐賀・六角川 
究極の蛇行とその旧河道──千葉・小櫃川 
自由に蛇行させたらどうなる?──ロシア・ハバロフスク付近 
山を穿って大胆に曲流──大井川上流 
信濃川沿いに広がる段テラス──新潟・十日町の河岸段丘 
天竜川とその支流が刻む造形──信州・伊那谷 
北海道の山奥で繰り広げられた戦い──恵岱別川vs信砂川の河川争奪 
スケルトンのように堆積──ミシシッピ河口の三角州 
鳥のアシ型の三角州──琵琶湖・安曇川河口 
川の下を列車がくぐる──京都府南部の天井川 
川が山を断ち切った理由──米アパラチア山脈とサスケハナ川 
地球寒冷化の置き土産──スイスのアレッチ氷河 
【第3章】火山と地盤──地球の熱は今も 
カルデラ中央の火山造形──阿蘇 
崩壊したカルデラと明瞭な噴火口──浅間山 
外輪山に囲まれた箱庭──箱根カルデラ 
電車がほっと一息つく緩傾斜地──箱根・大平台 
「国後富士」にも立派なカルデラ──爺爺岳
なぜか文字通り丸い水田地帯──鹿児島・米丸 
ぽっかり空いた2つの大穴──三宅島のマール 
溶岩台地の高原に生まれたてのスコリア丘──伊豆・大室山 
上から見たら大穴──ハワイ・ダイヤモンドヘッド 
西日本をどこまでも貫くライン──中央構造線 
絵に描いたサカナの形──トカラの火山島・横当島 
弘法大師が建てた橋脚はマグマ貫入の痕──橋杭岩 
【第4章】農業景観──先祖が耕した作品群 
宇宙からも見える格子縞──道東の防風林 
干満の差が大きい筑後平野のクリーク──大木・柳川 
耕して天に至る──丸山千枚田 
棚田を転用した錦鯉の池──旧山古志村 
まるでエッシャーの騙し絵?──児島湾の干拓地 
台地を侵食する細長い谷──千葉・下総台地 
屋敷森のある家屋が点在──富山・砺波平野の散居村 
火砕流台地に広がるパッチワーク──北海道・美瑛 
【第5章】人工改変地──幾何学模様に理由あり 
八稜郭の中に整然たる街区──仏アルザス・ヌフブリザック 
信州にもあった五稜郭──佐久・龍岡城 
住宅の中に多くの古墳が点在する町──藤井寺・羽曳野 
古代のグリッドが今に残る──奈良・大和盆地 
澪筋あるラグーンの砂上都市──イタリア・ヴェネツィア 
人造湖中では世界最大──カナダ・ルネルヴァスール島 
溜池の中に日本列島がある理由──伊丹・昆陽池 
地図上に表れた円形──横浜・米軍通信所跡 
山の跡に敷き詰められたソーラーパネル──千葉・富津 
山をごっそり削った土は関西空港へ──和歌山・加太 

 この本はなんと言っても「衛星写真をもとに3Dモデリングした画像」がとても見応えがあります☆
 最初の絶景は、「エビのシッポ型に延びた砂嘴──北海道・野付半島」。
「海岸から細長く延びた砂の岬は長さ20km以上に及ぶ。沖合に進むにつれて少しずつ曲がり始めて、どういうわけかエビのシッポ型に湾曲。壮大な「芸術作品」の原料は知床あたりで削られた土砂で、これが海岸線に沿う沿岸流に運ばれて堆積した。」
 ……というもので、原料が「知床半島の岸辺を荒波が削ったもの」のため、知床半島の岸辺の方は、断崖絶壁が続く海食崖になっているそうです。
 また表紙の写真は、「海沿いに連なる崖と台地──室戸の海成段丘」。
「地上から見れば崖が連なっているようにしか見えないが、俯瞰するとその上に広がる平坦地。テラス状のこの平らな部分、実ははるか昔の海底だ。高知県のこの一帯は隆起が著しく、かつての海底が巨人の階段のように見事なテラス地形を成す。」
 ……というもので、ここは隆起してきただけでなく、地震で沈降もしてきたようでした。
 そして「信濃川沿いに広がる段テラス──新潟・十日町の河岸段丘」では……
「一般に河岸段丘は海面の高さの変動によって形成されることが多い。これまで地球はおおむね10万年前後の間隔で氷期(氷河期)と間氷期を繰り返して現在に至るが、その間の海面の変動は大きい。(中略)
 ただしその変化は一様ではない。温暖化が急速に進むのに対して、寒冷化はジグザグを繰り返しながら少しずつ寒くなるため、海面変動も上昇と下降を繰り返す。」
 ……へえー、河岸段丘って、氷期と間氷期の繰り返しによる海面高さの変動で形成されることが多かったんだ……。
 この他にも、「カルデラ中央の火山造形──阿蘇」とか、「西日本をどこまでも貫くライン──中央構造線」とか、印象的な絶景がぞくぞく登場。空高くから見ると、こんな形をしているんだーと感動しながら眺めることが出来ました。
 また「【第4章】農業景観──先祖が耕した作品群」では、「宇宙からも見える格子縞──道東の防風林」とか、「火砕流台地に広がるパッチワーク──北海道・美瑛」とかに興味津々。あの美しい田園地帯の美瑛って、火砕流台地だったんだ……。
 さらに「【第5章】人工改変地──幾何学模様に理由あり」では、「信州にもあった五稜郭──佐久・龍岡城」とか、「住宅の中に多くの古墳が点在する町──藤井寺・羽曳野」とか、なんと「古代の条里制の区画が現在まで残る」奈良・大和盆地とか、大規模な人工地形をたくさん堪能できます。
 面白かったのが「溜池の中に日本列島がある理由──伊丹・昆陽池」。これは「地形のランドマークに」と伊丹市職員の発案で、日本列島の形の「野鳥の島」を造成したものだそうです。伊丹空港を離陸したばかりの航空機から間近に眺められるそうですが、とても可愛い日本列島ですね☆
『不思議3D地形図鑑』……海や川、火山や人間が生み出した「変な絶景」をじっくり眺められる上に、その成り立ちについても学べる素敵な本でした。みなさんも、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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『不思議3D地形図鑑』